《児童絵本》森の学校① みんなともだち!
はるです。
まちにまった
はるがやってきました。
ゆきはすっかりとけ、
おがわの
ながれるおとがきこえます。
さわやかな
あたたかいかぜに
ゆれています。
ちょびたくんは
むねいっぱいに
はるのくうきを
すいこみました。
うれしくってドキドキで
ワクワクしてたまりません。
だってきょうから
もりのがっこうが
はじまるのです。
さっそく
ちょびたくんがやってきた
もりのがっこうひろばには
まだだれも
きていないみたいでした。
たおれた
『まるた』のまわりを
かこむように、
きの『きりかぶ』が
いくつもいくつも
ならんでいます。
きっと
みんなのすわる
『せき』にちがいありません。
「やぁ、おはよう。はやいね
きみが『いちばんのり』かな?」
ふいに
うしろから
ひくくてふといこえが
きこえました。
ふりかえり、
ちょびたくんは
おもわずとびあがりました。
おおきなおおきなからだの
くまがたっていたからです。
「おどろかせてしまったかい?
わたしが
この もりのがっこうの せんせいだよ」
そういうと
くまはたのしそうに
ガハハとわらいました。
「『いちばんのり』は そのこじゃないわ」
こんどは
たかくて
きれいなこえが
きこえてきました。
「おや? そこにいるのは……」と
くませんせいは
ふりかえりました。
まるたのむこうの
きのえだに
とまっていました。
「わたしは ことりの リノン。
『いちばんのり』のこはねぇ、
この きのかげに
ずぅっと かくれているわ」
リノンちゃんは
うたうように
いいました。
リノンちゃんにいわれて
ちょびたくんは
くませんせいといっしょに
きのかげを
のぞきこんでみました。
「なんでバラすんだよ!」
そのこは
ふてくされたように
リノンちゃんに
もんくをいいました。
ちいさなからだと
おなじくらい
おおきなしっぽを
しています。
「きみは
……シマリスのチルルくんだね?」
くませんせいは
もっていた
『いちねんせいのリスト』を
かくにんしながら
いいました。
リノンちゃんは
くませんせいの
かたのところでとびながら
「たくさんいるのね。
きょう みんなにあえる?」と
リストをのぞいて
たのしそうに
つづけました。
ちょびたくんは
じがよめません。
ほんとうは
いっしょにリストを
のぞきたかったけれど
かいてあるなまえは
ひとつもわかりませんでした。
「リストにはのっていない
そんなおともだちも
いつか くるかもしれないよ」
くませんせいは
いいました。
ちょびたくんは
リノンちゃんにも
チルルくんにも
ドキドキして
はなしかけることが
できません。
くませんせいのいう
『おともだち』になれるか
しんぱいでした。
「あれぇ?」
そういいながら
つぎにやってきたのは
のうさぎでした。
「おそいぞウーノ!」
シマリスのチルルくんが
いいました。
どうやらふたりは
おともだちどうしみたいです。
(いいなぁ。
もうおともだちがいるんだな)
ことりのリノンちゃんは
くませんせいと
むちゅうでおしゃべり、
ちょびたくんは
ますます
だれともはなせません。
それからも
どんどんと
いろんなこたちが
やってきたけれど、
ちょびたくんは
だまったまんまでした。
「じゃあ そろそろ
みんな せきについておくれ」
くませんせいが
いいました。
そのとき
とおくのほうから
ポックリポックリという
ふしぎなおとが
きこえてきました。
ポックリ
ポックリ
ポックリコ……
やがて
すがたをあらわしたのは
きれいなうまでした。
みんな
おもわず
「うわぁ~」と
きのぬけたこえを
もらしました。
「すてき! あなた とってもきれいね」
リノンちゃんは
うまにいいます。
するとうまは
はずかしそうに
まえあしをモジモジさせて
ちいさなこえで
なにかいいました。
「え? なあに?」
ききとれなかった
リノンちゃんが
ききかえしました。
「わたし
……ちこくしちゃった……?」
やっときこえた
うまのこえに
くませんせいは
やさしくわらっていいました。
「まだ だいじょうぶだよ」
そして
つづけていいました。
「みんな、
こうまのポリィちゃんは
とおくから かよってくるんだよ。
もりのそとに すんでるんだ」
「えー、すごいなぁ。
ぼくなんか
もりのそとに でたこともないよ」
ちょびたくんの
すくそばで
しましまもようの
ヘビくんが
ニョロニョロとうごきます。
くませんせいは
みんなをみまわして
はなしをつづけました。
「だからときどきは
おくれてしまうかもしれないけれど、
あわてて
ケガでもしたら たいへんだからね。
あんまり きにしちゃ いけないよ」
くませんせいに
ちいさくちいさく
うなずいたポリィちゃんに
「ポリィちゃん、おっきいなぁ~!」
「きっとあしもはやいんだろうね、
うらやましい!」
みんなは
くちぐちにいいました。
でも
ポリィちゃんは
よろこぶどころか、
いまにも
にげだしてしまいそうです。
「さぁみんな、はじめるとしよう。
ちゃんと せきについて」
くませんせいにいわれ
みんなは
どこにすわろうか
あたりを
みまわしました。
たおれた『まるた』は
くませんせいのせきです。
さぁみんな
どこかえらんで
『きりかぶ』のせきに
すわらなくてはなりません。
(えーと、えーと、
……どこにしようかな)
ちょびたくんが
まよっていると
ちびっこコンビの
チルルくんとウーノくんが
まっさきに
くませんせいの
まんまえのせきをとり
「となりどうしだな!」と
てを
パンっとあわせて
いいました。
ポリィちゃんは
いちばんうしろの
いちばんはしっこのせきを
えらんだようです。
そのまえのほうのせきに
ムスッとだまったままの
イノシシのおとこのこが
すわっていました。
ちょびたくんは
このおとこのこが
すこしおっかなかったので
となりのせきが
まだあいていましたが
チラッと
ほかのせきをさがしました。
ヘビくんが
ウーノくんの
むこうとなりへいきました。
あんまり
のんびりもしていられません。
(あそこにしよう)
ちょびたくんは
リノンちゃんと
カワウソのおんなのこの
あいだのせきへ
むかいました。
「あぁ!? ふまないでっ!!」
とつぜんのこえに
ちょびたくんは
びっくり。
なんと
ちょびたくんの
すわろうとしたそこには
ちいさなちいさな
あおむしくんのすがたが
あったのです。
ちょびたくんは
あわててあおむしくんを
てのひらにのせて
すまなさそうに
のぞきこみました。
「だいじょうぶだよ、
きづいてくれてありがとう。
ぼく ちいさいから いつもこうなんだ」
あおむしくんは
ニッコリわらって
ゆるしてくれました。
「でも あぶないわね。
そのうち だれかが ほんとに
ふんじゃうかもしれないわ」
となりのせきで
リノンちゃんが
そういいました。
「こまったなぁ。
ちいさくたって、
みんなといっしょに
ぼくも がっこうへいきたいよ」
しょんぼりとする
あおむしくんに
ちょびたくんは
どうしたものかと
かんがえました。
「こうしてずっと
てのうえに いるってわけには
いかないものね」
カワウソのおんなのこも
かわいそうにと
ためいきをつきました。
「ふまれないかわりに
ちょびたくんが てをつかえないわ」
リノンちゃんも
いいました。
そこで
ちょびたくんは
あおむしくんを
じぶんのかたのうえにのせ
ゆびで
チョンチョンと
あたまをなでました。
これで
ちょびたくんのては
つかえます。
「いいのかい?
ぼくがのっていたら
……めいわくじゃない?」
あおむしくんは
えんりょがちにいいました。
ちいさなあおむしくんが
かたにのっているくらいのこと
ちょびたくんには
なんのめいわくでもありません。
「ちょびたくんて やさしいのね。
あたしはヤンヤン」
カワウソのおんなのこが
にっこりとわらってくれました。
「ぼくはカプリだよ、
よろしくね ちょびたくん」と
あおむしくんも
ヤンヤンちゃんを
みならって
じこしょうかいを
してくれました。
きゅうに
おともだちができたようで
ちょびたくんは
とても
うれしいきもちになりました。
「みんな せきについたようだね。
じゃあ ひとりずつ
せんせいが なまえをよぶから
よばれたひとは
へんじをしてください」
くませんせいは
みんなにきこえるように
おおきなこえで
いいました。
「じゃあ さいしょに、ウーノくん」
なまえをよばれて
ウーノくんが
ちょっぴりとびあがって
「はいっ!」
「ははは、なかなか げんきだね。
つぎは カプリくん」
「は……はい!」
ちいさなカプリくんは
ちょびたくんのかたのうえで
せいいっぱいがんばって
へんじをしました。
「おや? そこにいたんだね、
すっかり なかよしだ」
ニッコリという
くませんせいのことばに
ちょびたくんも
カプリくんも
うれしくなって
おもわず
かおがにやけてしまいます。
「そしてサンクくん」
「はーい」
そういって
からだをくねらせたのは
ウーノくんの
となりのせきの
しましまヘビくんでした。
(サンクくんっていうんだな。
ぼくはいつ よばれるかな?)
ちょびたくんは
ドキドキしてきました。
うまくおへんじ
できるでしょうか。
ちょびたくんが
ドキドキしてると
すぐにくませんせいは
ちょびたくんをよびました。
ちょびたくんは
びっくりして
「はい」というところを
おもわず「ワン!」と
いってしまったのです。
くませんせいは
めをまんまるにして
ちょびたくんを
みてました。
チルルくんが
ウーノくんと
ヒソヒソごえで
わらっています。
「ほんとに
『ワン』っていったぞ、ウーノ」と
チルルくんがわらっています。
「へんなオオカミだろ」と
ウーノくんもわらっています。
ヒソヒソと
こえをひそめているハズなのに
ふたりのこえは
しっかり
みんなにもきこえてました。
「あら、
でも『いちねんせいのリスト』には
ちょびたくんは
『イヌ』ってかいてあったわ!」
リノンちゃんの
たかいこえが
よくひびきました。
「ちょびたくんはオオカミなの?
わたしオオカミってみたことないの……」と
すこしおびえたように
ヤンヤンちゃんが
かたをすくめます。
「オオカミって ヘビもたべるのかな」
サンクくんがいいました。
みんなが オオカミをこわがって
ザワザワと
もりはさわぎます。
ちょびたくんは
ものごころついたころには
なかまのオオカミたちと
はぐれてしまっていたので
オオカミのことを
しりませんでした。
じぶんのことは
ずっと
イヌだとおもっていたのです。
みんなが
おびえたような
ふあんそうなめで
ちょびたくんを
みています。
そんなふうに
みんなが
どうして
こわがっているのかさえ、
ちょびたくんには
わからなかったのです。
ちょびたくんもまた
すごく
ふあんなきもちになりました。
「たしかに ちょびたくんは
イヌではなく オオカミのようだね」と
くませんせいは
いいました。
リノンちゃんは
いきをのみ
ポリィちゃんは
ブルブルルっと
ふるえます。
「でも……!」と
そのとき。
ちょびたくんのかたのうえで
ちいさなあおむし
カプリくんが
ハッキリとしたこえで
いいました。
「オオカミは
こわいどうぶつかもしれないけれど。
ちょびたくんは やさしい いいこです」
びっくりでした。
いちばんちいさなからだで
いちばんちょびたくんのそばで
カプリくんは
こんなにもハッキリと
ちょびたくんを
かばってくれたのです。
くませんせいは
うなずきました。
「そうだね。それに
ちょびたくんだけのことじゃないよ。
みんな いろんなどうぶつだ。
いろんなちがいがあるだろう?
おおきなこ・ちいさなこ
とべるこ・およげるこ……
できることも すきなことも
みんないろいろ ちがうんだ。
でも、この もりのがっこうに
あつまってきたきみたちは、
おなじがっこうの なかま なんだよ。
だから みんな ともだち だよ」
さっきまで
ざわめいていたもりは
シーンと
しずかになっていました。
ウーノくんは
ちょっとかんがえてから
ちょびたくんのところへ
ピョンピョンと
やってきました。
「このまえ あったときは、
オオカミがこわくて
にげたのごめんな。
でも きょうからは
ともだちだから もうにげないぞ」
またまたびっくりです。
ちょびたくんが
ふゆにであった
あのしろうさぎくんは
なんと
めのまえにいる
はいいろちゃいろの
ウーノくんだったのです。
でもそれよりなにより
ともだちだと
いってもらえたことが
ちょびたくんには
びっくりでした。
それに
さっきまで
あんなに
ふあんそうなかおをしていた
みんながいまは
わらっています。
あのイノシシくんでさえ
ニコッとえがおをみせました。
みんなをみて。
くませんせいをみて。
ウーノくんをみて。
カプリくんをみて。
そしてみんなを
もういちどみて。
ちょびたくんも
あんしんして
こころから
ニコッとわらったのでした。
みんなともだち
みんなトモダチ
おしゃべりなあのこも
おこりんぼのあのこも
おくびょうなあのこも
はずかしがりなあのこも
あのこもあのこも
みんなともだち。
きょうはあさから
いっぱい
ドキドキしていました。
どんなこたちに
あえるかな。
どんなおはなし
できるかな。
そしてともだち
なれるかな。
それぞれが
それぞれに
ドキドキドキドキ
しっぱなしだったのに
いまは
みんながニコニコしてます。
ウーノくんは
チルルくんのとなりにもどり
くませんせいも
つぎのこたちの
なまえをよびはじめました。
それは
あるはるのひ。
すてきながっこうの
はじまりでした。
~ おしまい ~
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