寿命の問題

海洋機構……ギルドマスタールーム。

「そうか、あの爺さんはもう死んだのか……。」

ミチタカはしんみりした顔でその報告を聞いた。

「………ええ、それで1つ個人的な報告が。」

「『ミチタカ殿、最後に孫に会わせていただきまことにありがとうございます。』との事でした。」

「……わかった。ありがとう。」

そういって、ミチタカはしんみりとする。


円卓会議の議題として問題と提起されたのが、重要NPCの消滅だ。

アキバ周辺並びに念話を駆使してイースタル・ウェストランデ・ナインテイル・エッゾの4ヵ所で情報を集めて、重要人物の生死を確認していく。


「……クエストで死ぬ系のNPCは全員死んでいるのか。」

「ええ、確認できた範囲内では。」

クエストの途中で人が死ぬことがある。しかしながら、また別の人物がクエストを始めると『蘇る』のだ。

しかしながら、今現在においてその手の人間の蘇生は確認されていない。

「……何件かアイテムが手に入らなくなるな。」

たかやがそう言って困った表情をする。

「人が死んだのに、意見はそれだけ?」

「いやその人が重要アイテムを持ってると問題あるけど、人が死ねば感動するかと言う問題があって、周回プレイヤーからツッコミが入ったりして結局普通に渡すことになるんだけどな。」

そう言いながらたかやは幾つかの重要クエストを思い出す。

「もう少し……人の心の機微を考えなさいよ……。」

その言葉に他のメンバーがツッコミを入れる。


人間には寿命が存在する。しかしコンテンツは永遠に続く。

この矛盾はどうしても避けられない物だ。

ゲーム時代で20年。こちらの世界で240年。相当長く生きていないと設定の矛盾が大きくなりかねない事態だ。


「……という訳でそっちの情報教えてくれ。」

とミナミの冒険者から連絡が入ってくる。

「……報酬はいつもの通り●イ●銀行に……。」

「銀行は全世界共通だよ!」


歴史としてはミナミよりもアキバの方が古い。

これは<エルダー・テイル>の最初の拠点がアキバを中心に作られたからだ。

その為、名物キャラもアキバの方が多く、ミナミの方が少なく設定されている。

その為、アキバの方がいち早く情報を集めることができたのだ。


「……しかし、ある程度の存在は同じ名前の人間が名前を受けついていくってのは驚いたな。

 ていう事はそれほどクエストが左右される可能性は低いって事だな。」

「……只な。」

そう言ってその男は大きくため息をつく。

「どうしたんだ?」

「……中国大陸には4000年生きた仙人がいるらしいんだ。」

「それで?」

「昔の事を聞こうとしたら、ゲームで出てくる前の記憶が一切無いらしいな。

 つまり、自分が作られた前の世界を一切知らないらしい。」

「……結局はどっかでゲームの事情が引っかかるって訳か。せちからいよな。」

その男はそう言って大きくため息をついた。

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