日常と非日常の境界

 世界は確実に変わってしまった。

 誰もが無関心ではいられず、否応なく巻き込まれる事を余儀なくされている。

 私も、貴方も、無関係ではない。

 未曾有の危機、と呼ぶにはまだほど遠いかもしれないが、確かにゆっくりとそれは私たちを包囲しているかのように思えた。


 ウィルスが世界を席巻している。

 私たちがアポカリプスものの映画を見た時、病原菌で世界が滅ぼされると言う状況の時は大抵エボラ出血熱のように凄惨な状態になって死ぬ、しかも感染スピードは恐ろしく速いみたいなものだったりする。

 或いはゾンビ映画のように、人が狂暴になり人を襲ってなおかつ一噛みされでもすれば即座に感染してしまう、と言ったようにやはり恐ろしいと思わせる描写だったりした。


 今回のウィルス騒ぎは、そのようなものではない。

 あくまで地味に、風邪のような症状で、しかし劇症化するときは早くなるというものだ。

 しかも飛沫感染である為にそれなりに感染力もある。

 ゾンビ映画のようにわかりやすい危機が訪れているようでもない。

 しかし、真綿で絞めるようにじわじわと人々は追い詰められているような気がする。

 

 インドアな人間だと思っていた私も、結構しんどい。

 楽しみにしていたイベントを潰され、気分転換にどこかに出かける事もままならない。実は私もそれなりに外に出るという事をしていたのだなあと思い知らされる。


 果たしてこれは何時まで続くのだろう?

 流石に呑気な私もちょっとばかり嫌気が差してきている。

 そんな時でも我らが猫はいつも通り。

 今も窓際の光が当たる所に陣取ってひなたぼっこをしている。 

 彼らののんびりした姿だけは少しばかり私を救ってくれる。


 にゃーん。


 もう一匹の黒猫が、私の太腿に上がって座り込んできた。

 こうなると一時間はここから動けない。

 よっぽどの用事が無い限りは私も動くつもりはないけども。

 

 明日もまた、日常のような非日常は続く。

 

 

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