神社で佇む私とカラス
何気なしに神社に行った。
日々を職場と家の往復で過ごし、休日はどこにもいかずにゴロゴロとしている。
それではいけないと一念発起して電車でガタゴトゆられ、行く先は終点の地方都市。
それなりに人口はいる物の地方都市の悲しさかな、やや衰退気味なのは駅前の街並みを見ていてもわかってしまう。
第三セクタ運営の電車はやっとこさ二両編成が良い所で、通勤時間帯でもなければガラガラに空いていて好きな所に座れる。
それが好きなんだけども。
たまに首都圏に足を運ぶことがあるが、それにしたってあそこの電車は殺人的に人が込みすぎていて乗っていて嫌になる。通勤時間帯のラッシュにでもぶち当たった日にはもう最悪だ。
ラッシュをどうにか避けて、地方都市に辿り着いた私。
ぶらぶらと歩いている。
日差しはまだ暑い。もうすでに九月に足を踏み入れているというのに、日差しは未だにきつくて本当に夏が終わったんだろうかと思ってしまう。
最近の天気は暦とはあっていないように思えるので、暦の方も変えるべきなのではないか。
なんとなしに散歩し続けて、ふと神社が目に入った。
街の中に神社。
建物が立ち並ぶ中ぽっかりと空間が開けているので、思わず目が惹かれる。
長い事神社に行った事なかったなあと思い、なんとなく神社に私は足を踏み入れた。
神社はもちろん誰も居ない。
特に催事が行われているわけでもない神社には普段から人は居ない。
当たり前だ。
特に昼間の暑い時間ともなれば誰も。
こんな中に散歩している私がおかしいという事になるが、実際私はおかしいと思う。我ながら。
あれだけ鳴いていたセミも今はいない。
夏の一瞬を騒々しく喚きたて、うるさいなと思っていたけど居なくなるとそれはそれでさみしさを覚えるのはなんでだろう。
作法はともかくとして、私はお参りをした。
何を願うか?
何を願おうか。
そんな事は何も考えていなかったが、とりあえず自分がこれから行う事が成功する事を願いつつ、お賽銭を入れてガラガラなるアレを鳴らした。
そして手を合わせて拝み、目を開けたところでおみくじがあるのに気づいた。
運を試してみるのもいいだろう。
おみくじ百円を支払い、紙を開く。
「末吉か~~~」
よくも悪くもないという何とも微妙な結果に。
とりあえず私は財布に仕舞い、神社を散策する。
本堂の横に、小さな社がある事に気づいたのでそちらにも行って見る。
古ぼけた社にも賽銭箱があったのでそれにもお賽銭を入れた。
ふと見上げると、神社の境内に植えてある木の枝にカラスが休んでいるのが見えた。まだ若いカラスなのか体が小さめだ。
うつらうつらしている。
眠いのだろうか。
きっと眠いのだろう。
時計を見ると、既に三時を過ぎている。
「帰るか」
小腹も空いたし、腕を蚊に食われて痒いしでさっさと神社を後にする。
途中、パン屋を見つけた。家族経営のこじんまりとしたお店で、素朴な品揃えで私はピーナッツパンとくるみとあんこのパンを買った。
帰ったら牛乳で飲みながら食べるんだ。
そういうささやかな楽しみを噛み締めながら、私は帰りの電車に乗った。
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