わたしは雨女
いつも遠出すると雨が降る。
母にはそう笑われた。
好きなバンドのライブの為に東京まで遠出して、やっと渋谷の駅に降りたその場から雨が降りだした時には「ああ、またか」と思ったものだ。
今は梅雨だけど別に梅雨でなくても通り雨に降られてやっとこさ500円の傘を買って難を逃れたと思ったところで、300円で売っている傘を見かけた時のなんとも言えない損した気分たるや。
それですぐに晴れて、その後傘はいらない事の方が多い。
どこかに置いていけばいいじゃん、と友達に言われるけどそれはそれで嫌だし、盗まれるのはもっと腹が立つしで結局ライブが終わって家に持って帰っていく。
家には既に何度も買ったナイロン傘が何本も傘立てに突き刺さっている。
まあ盗まれた時とかに予備があるから便利だよね、ってやっぱり友達には言われるけど私は地元を回る時は車を使うから基本的に傘は要らないんだっての。
これ以上傘があっても仕方がない、というか買って持ち帰ってもぶち込むスペースが足りない。
じゃあそれなら折り畳み傘だよね!
これなら持ち歩いてもコンパクトでスペース取らないし、いつでもバッグの中に備えておけば一安心。
そう思って最近はバッグに忍ばせているんだけど、そうすると今度は全く雨に遭遇しない。遠出なんて一年に三回か四回かくらいしかしないってのに、全くバッグのスペースの無駄だっての。
どうして私の時に限って雨ばかり降るのか。
思えば私の雨女っぷりは子どもの頃からの筋金入りで、ピクニックやハイキングに行くたびににわか雨に降られてびしょびしょになってしまったりした。
傘を持ち歩いたらカンカンに晴れて傘はただのお荷物で邪魔くさくて。
全く腹が立って仕方がない。
自分は晴れ男・晴れ女と自称する人と一緒に旅行に行った事もあるけど、全然晴れなかった上に土砂降りに遭って散々だった。
「あめあめふれふれ母さんが~」
じゃのめでお迎え嬉しいなって言う歌詞だけどじゃのめってなんだろうね?
と思って調べてみたら蛇の目傘って言う奴のことらしい。
「どういう傘なんだろ」
画像もついでに調べてみたら、京都の舞妓さんが差してそうな柄の美しい傘だった。これなら私も欲しいけど、値段が結構する上に洋服に似合うのかを考えるとちょっと手が出ないな。
和服をいつも着てるなら似合いそうでいいんだけどねえ。
はーっとため息を吐いて、窓の外を眺める。
今日もどんよりとした空模様で、間もなく雨が降るだろうっていう天気予報がテレビから流れてきていた。
まあ今の時期は梅雨だからなんだけど。
部屋の中もじめじめして、除湿器もすぐに水が溜まって大変だしカビが革製品に生えたりして大惨事だったりして、まあなんというか早く梅雨の時期も終わってほしさしかない。
そういえば今日はお見合いの日だという事をすっかり忘れていた。
気づいたのはアラームがセットしてあったからで、あと2時間で待ち合わせの場所に向かわなければならない。傘の画像とか調べてる場合じゃなかった。
急いで化粧して、身支度整えて、親と相手とその親が待ち構えているお店に行かなくては。
お見合いなんてめんどくさい、と思ったけどいい加減私も年ごろから過ぎてしまい、このままではずっと独り身なのではと心配した親の暗躍によっていつの間にか決まってしまった。相手の顔写真も見ていないと言うのにどれだけ強引なんだろう。
気が進まないなぁ、なんて思いながら仕度を終えて外に出ると、今にも降りそうだった空はいつの間にか雲が流れて青空が顔を覗かせていた。
おや、珍しい事もあるものだ。
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