乳幼児編
第2話 雪人赤子を拾う
「・・・くちゅんっ」
腕の中の赤子がくしゃみをした。寒いのだろうか? そう思い、部屋の中の囲炉裏に薪をくべ、厚手の着物で赤子を包んでやることにした。
「にしても、人の子なんて」
腕の中の赤子を見ながら、訝しむ。
朝、太陽が上がったのを見て、私、凍子は外に出ようとして扉を開いた。
「いい天気ね」
朝日を浴びながら背伸びをする。背中が丸まっていたのが筋力で延ばされて心地いい。
こんっ
下駄に何かが当たった感じがして、下を見る。白い繭のような物体が足の先にあたったのだと知覚した。
実際には繭でなく、白い布で覆われた一匹の赤子だった。
「!?」
なんでこんなところに。頭に浮かんだのはまず、疑問。ついで 興味。
ぷにゅ。恐る恐る赤子のからだをつんっと触ってみると、なんとも柔らかな反応が指に伝わった。
しばらく嬉しくなって、抱き上げてつんつんしていた私だったが、ふと我にかえってしまう。
「どうしよう・・・」
考えた。どうしてここに赤子が。捨て子かな?
だとしても、なんでここに置いてくんだろう?長に相談するべき?
いろんな考えが浮かんでは消えたが---ひとまず私は、家の中へ赤子を避難させることにした。
そしていま。
囲炉裏の前で私は考え込んでいた。
たぶん捨て子なんだろうな・・・・そんなことを考える。親はどこに行ったんだろう。
なにせ、戦の多い治世だから孤児はいっぱいいるけれど、この国では人の子は珍しかった。 ここ雪花国は大陸の端にあって住んでいる種族は私みたいな雪人ばかり。雪人は地方によっては人と暮らすこともあるけれど、基本関わり合いは持たない。希少な人種だし、なによりあんまり温暖な気候だと疲れが激しいのだ。
「どう見ても雪人じゃない・・・よね」
ぴらっと白い布をめくってみる。雪人ならば「おへそ」が雪の結晶のような硬い鉱石を持って生まれてくるはずなのだ。
赤子のおへそは鉱石じゃなかった。やわらかいおへそでぷにぷに。
すべすべしていて気持ちがいい。
「くちゅ・・・」
赤子がくしゃみをしたのでまた布を巻いてあげる。
「人の子。それも男の子だ」
ささやかな、男の子の印もあった。
気が付いたら、女の人が目の前にいた。
抱き上げられて、家のなかに連れていかれて、おへそを触られて、ちんち○を見られた
恥ずかしい・・・
どうやら本当に謎の声が言った通り、転生をしたようだった。それも赤ちゃんでだ。
俺、澤北浩太----は転生の末、女の人に拾われているわけだが、どうにもこの人の手が冷たくて仕方ない。
通常ありえないような、手の冷たさなのだ。なので、「くちゅん」さっきからくしゃみが出っぱなしだったりする。抱きかかえてもらって、あやしてもらっているのだけれど、どうにもヒンヤリ感が布越しに伝わってくる。「くしゅん」鼻水もでているらしい。
「あらあら・・・」
そんなことをいいながら、女の人は布で鼻を拭いてくれた。
女の人が着ているのは、着物そっくりの衣服。胸元から首の位置までしか見えないけれど、袷とか襟とかが
よく見たことのあるものだった。
(・・・・着物?タイムスリップ系なのか?)
よくある中世ファンタジーにいくのかと思っていたのだが・・・
(?・・・おや、まてよ。なんで意識があるんだ?目も見えている。いくら赤ん坊だとしても、意識があるのが早すぎじゃないか?たしか、生後5か月くらいでいしきが出来るはずなんだけど・・・)
以前の意識をひっぱりだそうとして、「くしゅんっ」またくしゃみが出た。
「くしゅんっ」赤子が何度目かのくしゃみをした。
やっぱり私が雪人だからかな? 雪人は人族にくらべて体温が低い。綿入れで包んではいるけれど、寒そうな感じでさっきから何度もくしゃみが出ている。
薪を追加して火をつよめてはいるけど、まだあったかくなるまでしばらく時間はかかるだろう。
「そうだ。お布団にいれてあげれば温かいよね」
私はそう思って、一旦、赤子を置いて、囲炉裏のそばに布団を持ってくると、その中に赤子を入れてあげた
最初、多少むずがっていたが、落ち着いたのか、布団の中で赤子はおとなしくなった。
「ふふ。温かいね」
私も横になって布団の上からポンポンと拍子をとってあげる。
「お休み。心配ないよ・・・」
囁きかけながら、私はもう一度目を閉じた。
「お休み。心配ないよ・・・」
女の人はそう言いながらまた寝てしまった。
布団にくるまれながら、天井と周りを見回す。
木と萱と囲炉裏。窓らしきものはあるけれど、ガラスじゃない。むかしの木造住宅にそっくりだった。
白川郷とかそんなかんじだ。暖房もエアコンらしきものはないし、テレビや家電ぽいものもない。
(本当に転生したのか・・・)
いまだに信じられなかった。 夢と現実がくべつできていない可能性だってあるし。
いづれにしても、半信半疑の状態ではあったが。
俺は、見知らぬ家の中で再び夢の中へと旅立った
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