第2話ミーティング。そして

メールの送達はとても速かった。おそらく先週のうちに総務のスタッフが動いていただろう。これで密度のある内容ならばとても恐ろしい。


8時10分課長の朝の挨拶の後、メールの説明と活動予定が発表された。

「第一週は、個々の通勤途中に起きたヒヤリ体験を発表してもらいます。聞き手にまわった方にも、発表に対して意見を求めます。但し発言に対して非難することは禁止します。」

おお、人材育成まで練りこんでくるとはなかなかやるなと聞き入っていると、静かにそして穏やかに課長の話が続いた。

「第2週で、ヒヤリ体験1件につき1枚の報告書を作ります。報告書のフォーマットはメールに添付されたものに書き込んで頂きます。第3週でマップ上に危険な箇所をプロット・・・例えばここの交差点は近くの小学校の生徒がよく使い、飛び出してくる子供をよく見るとか、ここの一方通行の道路は違反する車が多いので特に気を付けているなど・・・ハザードマップを作成すると理解して下さい。」

最後に課長は目を輝かせながらこう付け加えた。

「各職場マップ作成後はそれを食堂に掲示することになります。で、ここからがとても重要なことですがKYK強化月間に各職場対象でコンテストが行われます。

報告書の枚数が勝負のカギを握るのか、マップのユニークさが評価されるのか詳しいことはメールには説明がありませんでしたが、いくつかの職場には社長よりサプライズのご褒美があるそうですので頑張ってください。」


朝礼の最後に第1週のスケジュールが発表された。


「Aさんは明日火曜日。Bさんは水曜日。ええと、木曜日は1日出張で参加できないので、Cさんは金曜日にお願いします。」

私は最終日か・・・

机に戻りノートパソコンを立ち上げると職場に配布された今回のメールに再度目を通す。そこで初めて課長が目を輝かした理由が理解できた。

黒の太字のフォントで3文字の「ご褒美」 これは目立つはずだ。


本当にうちの総務のスタッフはいい仕事をするよ。




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KYK・・・危険予知訓練 @kurodanuki

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