愛は普遍のものだから、この物語は誰にも突き刺さる。【★★】

 ある愛の形を、砂絵のような、あるいは黒板アートのような優しい輪郭で描き出した佳編。大事に持っておきたい物語である。

 ミステリでもある。愛を伝える常套句とは真逆のことを言った、妻となるべき女性。彼女の意図は「謎」の形をもって読者に示される。
 この謎があるからこそ、短い分量とはいえ、本作は優れた求心力で読者を引きつける。
 「謎」として秘められた真意が明かされる過程は、まるで謎解きを聞かされているかのよう。一つの美しささえ感じられる。
 
 

その他のおすすめレビュー

久保田弥代さんの他のおすすめレビュー139