第14話 家族会議

4人でベッドに座り、改めて話し合いを行う。



「まずは俺からいこうかな。まぁ見ての通り家を作った。あと、土魔法と風魔法を取得したな。これで光魔法を除いて全部使えるかな」


「相変わらずマスターは凄まじいのう」


「俺の今日の成果はそんなもんかな」


「では次は私とヴリトラの報告を」


「そうじゃな」


「私達は、アクセサリーを売ってお金を得た後、馬車を買って、武器と防具を売りました。そのあとに家具なんかを買って終了ですね」


「そうそう、武器屋で一つ買い取ってくれなかった物があったのじゃ。エレア、あれは何処に置いたかのう」


「馬車からおろして空き部屋に入れてたかと」


「わかった。取って来るのじゃ」



そういうとヴリトラは部屋を出て、物を持ってすぐに戻ってきた。



「これじゃ!」


「ああ、それか。売れると思ったんだがやっぱり無理だったか」



蛇の文様が付いた真っ黒な鎌である。



「やっぱりとは?」


「この鎌はだな、俺が暇潰しの為に作った一つで一応はアーティファクト…になるのかな」


「作ったんですの!?」


「何と言うかまぁ、うん。作った」


「なんでそんなものがわらわの住処に有ったのじゃ?」


「話せば長くなるんだが…そうだな簡潔に話すとするなら、この世界に落として人に使わせてみた。結果、使った人は悉く死んだ。

ただそれだけの話だ。ちなみにその武器があれば並大抵のドラゴンなら狩れるぞ」


「わらわも危なかったのか……」


「それはないな。ヴリトラを殺せるほどには強く作ってないから」


「それは良かったのじゃ」


「まぁ曰く付きの一品と思う程度で良いぞ。なんなら草刈り兼武器として使うと良い。そうだな、エレアなら上手く使えるんじゃないか?」


「私ですか?」


「体に仕舞っといて、必要になれば取り出せば良いし。肉弾戦よりは楽だろ?」


「確かにそうですね。有り難く戴きます」


「わらわ達の報告は以上かの」


「ですね」


「二人ともお疲れさま」



ちゃんと出来たのだから頭を撫でてやる事を忘れない。エレアは凄く嬉しそうに顔をほころばせて、ヴリトラは顔を赤くして照れつつも満更では無いようだ。

その様子を見たルナも撫でて欲しそうにしながら話始める。



「次は私ですわね!」



俺、エレア達と報告が終わり、最後にルナの番になった。



「私は、エレアから資金を受け取ったあと、情報収集に行きましたわ!少々トラブルがあったりはしましたが、ある程度の情報は得ました。

トラブルの方は問題ないので割愛します。そして、モッフルと言うお店でベテランの冒険者達と仲良くなりまして、色々なお話を聞けましたの」


「ふむ」


「冒険者達の話によりますと、最近は魔物の動きが活性化しているようで、冒険者たちも黒魔法を使うガーゴイルに苦戦していたようです。

そういった強い魔物が出て来た裏には、どうやら邪教集団が絡んでいるみたいですわ。邪教集団の詳しい内容は残念ながらわかりませんでしたし、

その集団の名前も通称みたいで正式にはまだわかっていないようでした。と、以上が私が集めた主な情報ですわ。他にも色々ありましたが冒険者たちの愚痴とかですので気にする必要ありませんわね」


「そうか、ルナも情報収集ご苦労様」



ルナもちゃんと仕事を出来たのでよしよしと頭を撫でる。ルナは凄く嬉しそうに微笑んでいた。



「ルナは情報収集とか言いながらお酒を沢山飲んでたみたいですけどね」


「な!あれはコミュニケーションで仕方なく…」


「その割には呂律がまわらないほどでしたが?」


「仕方ないじゃありませんの!お酒があんなに効くものだとは思ってませんでしたし……美味しくてつい(ボソ」


「ん?」


「な、なんでもありませんわ!そんなことよりほらあのー…そうだ!お酒も買ってあることですし皆で飲みましょうよ!そうすればエレアも酔うに違いありません!」


「そうですね、今のうちにお酒の耐性をあげておいても問題ありませんね」


「家族会議はまだ途中なんだが、まあ時間はたっぷりあるしお酒飲みながらのんびりするのも良いか」


「では持ってくるとするかのう。エレア、一緒に取りに行くのじゃ」


「はい」



そう言ってエレアとヴリトラは寝室を出て行って、残されたのは俺とルナの二人。



「ルナ」


「なんでしょうマスター」


「お酒に酔ったと言う話だが…」


「あ、あれは仕方なくで…その…」


「ああ、怒るとかそんなんじゃないから気にするな」


「それは良かったですわ」


「そんなあからさまにホッとするなよ、まあいいけど。で、スライムってお酒に酔うんだなと思ってさ」


「それは確かにそうですわね。私もまさか酔うとは思ってなかったですもの」


「ふむ。そんなに美味しかったか?」


「それはもう!色々なお酒がありまして、フルーツ系のさっぱりした物からビールの様な発泡酒やワインまで幅広く取り揃えていて、お店の名物のモッフルと凄く合いまして…あっ」


「ほうほう。それはそれは……さぞ楽しかったんだろうな?」


「……はい」


「素直でよろしい。ま、怒る気はないから気にするな。今度同じものを食べさせてくれ、そのモッフルだったか?気になるし」


「そういうと思いまして、モッフルは買ってきてます…エレアが(ボソ」


「それはいいな!『エレア、追加でモッフルも持ってきてくれないか?』」


『かしこまりました』


「これでよし。…そういえば、俺が街に入れない理由は分かったか?」


「あ、それでしたら簡単な話みたいですの。どうやらマスターの服装が駄目だったようで、侵略者か何かだと間違われたみたいですわね。噂が広まっておりました」


「侵略者って……」


「この世界には無い服装ですので仕方ないと思いますわ。ですのでこの世界にあった服もエレア達が買ってますので街に行くときはそれを着てください」


「まさか服が駄目だったとは……」


「お待たせ致しました」


「待たせたの!」



そう言って戻ってきた二人はお酒を何本かと、グラスを幾つか持ってきてテーブルに置いていく。



「結構種類があるな」


「ええ。今回は試飲会にしようかと」



二人が持ってきたお酒は、フルーツ酒が三つ、ワインが白と赤で二つずつの計四つ、ビールが二つ、あとはモッフルが人数分だ。



「色んなお酒を少しずつ楽しめるわけじゃな!ドラゴンでは飲めなかったから楽しみじゃ!」


「くれぐれも飲み過ぎないようにしないといけませんわね」


「ん?ルナはもう沢山飲んだのでいらないですよね?」


「…え?」


「確かにの、ルナは既に飲んだんじゃから見てるだけで良いのではないか?」


「そ、そんな、確かに沢山飲みましたけど…」


「もう既に飲んでるわけですし、やっぱり公平にしませんと」


「でも見てるだけなんて…」


「そうじゃな。ルナは見てるだけでよいのじゃ」


「そ、そんなの嫌ですわ!私も飲みたいですマスター!」


「はいはい。二人ともルナをからかうのはそこまでな。お酒は皆で楽しく飲むもんだぞ。反応が楽しいからってあんまり苛めてやるなよ?

その内拗ねて口きいてくれなくなるぞ」


「これは失礼しました。ルナの反応が楽しくてつい…クスクス」


「すまんのう…フフ」


「酷いですわ二人ともー!」



ふんっと怒るルナを横目で見ながら、俺は皆のグラスにお酒を注いでいく。

ルナはなんだかんだで反応してくれるのでついついやってしまうんだよな…。俺も気を付けないと。



「さて!じゃあ飲むか!皆グラスを持ったな!では…乾杯!」


「「「乾杯!」」」



皆で一斉にグラスを煽る。



「これは美味しいですね」


「美味じゃな!」


「美味しいですわ」


「うむ。美味い!」



それぞれに感想を言い合いながら、次はどれにしようかと悩むのも楽しい。

そして俺は気になっていたモッフルを一口かじった。



「む?ピリッと痺れるこの舌触り…。おー、思ったより脂っこくなく、口に残らず喉の奥にすっと溶けていく…凄く優しい味だなこれ!お酒に合うのが凄くわかる」


「ですわよね!これとお酒の相性が凄く良くて、ついつい飲み過ぎてしまいましたの」


「悔しいですがルナの言う通りですね。お酒が進みます」


「わらわはもっと歯ごたえが欲しい所じゃな。でも十分美味しい」



モッフルの意外な美味しさに驚きつつも、お酒を次々に試していった。



しばらくお酒を飲み比べたりして雑談をしていたが、お酒がまわって来たのか皆酔って来たようだ。

お酒に耐性が出来たルナは酔ってはいないが、エレアとヴリトラは既に出来上がってしまっていた。



「マスター、わたしをもっとなでてください」


「よしよし」


「エヘヘー、マスターのなでごこちはさいこうですー」


「マスター…わらわは悪い子かのう。人を食べるし恐れられておるしわらわなんて居ない方が良いのかのう」


「よしよし。そんなことない、ヴリトラは優しい良い子だ。俺が保証してやる」


「マスターがマスターで良かったのじゃ。これからもよろしく頼むのじゃマスター」


「こっちこそよろしくなヴリトラ(ナデナデ」


「わたしもかまってくださいマスター」


「はいはい(ナデナデ」


「二人ともすっかり出来てしまってますわね…」



エレアはいつも以上に甘えてきて、ヴリトラは逆に卑屈になるようだ。

俺?俺は酔わないよ。『酒無効』が取れてしまったからな…アハハ。



「二人酔いつぶれたし、お酒もそろそろ尽きるな。そろそろ寝るとするか」


「そうですわね。お酒を片付けて来ますわ」


「頼む」



ルナにお酒の片づけを任せて、俺は二人をベッドへと運ぶ。二人一緒には無理なので、一人ずつお姫様抱っこで運ぶ。

ヴリトラはすんなり離れてくれたが、エレアが中々離してくれなかった。どんだけ甘えたいんだよと心の中で突っ込んでおく。

運び終わった所でルナが戻って来たので、みんな一緒に同じベッドで横になった。


俺の両脇にヴリトラとエレア、エレアの横にルナという並びだ。エレアとルナの位置は、どうやら日によって入れ替えるらしいが、今日は酔いつぶれたエレアが俺の横だ。



「二人とも既に寝てるな…」


「今日は色々ありましたもの。仕方ないですわ」


「それもそうだな」



二人の頭を優しく撫でる。心なしか表情が安らいだ気がした。



「ルナもお疲れ様。初めての街で不安だっただろうけど、無事に帰って来てくれて嬉しいよ」


「マスターこそお疲れ様でした。こんな立派な建物を創れるなんてやっぱりマスターは凄いです!」


「口調がお嬢様口調じゃなくなってるぞ?」


「失礼いたしましたわ」


「別に無理してお嬢様口調にしなくていいぞ?もう知識は完全に定着しただろ?

自分の好きな口調で良いぞ」


「そう…ですね。マスターに初めてあった時は、ですの口調と金髪だったおかげでお嬢様キャラと思われ、そのままお嬢様口調にしてましたし」


「そうだったのか、それはすまんな。まあキャラ付けと言う意味では金髪のお嬢様がしっかり来るんだよな…」


「確かにそうですね、ではこれからもお嬢様口調でいきますわ」


「だから無理しなくても良いぞ、ルナはルナなんだからどんな口調でも俺は構わないよ。正直言うとだな、お前らスライムはまだ生まれてそんなに経って無いだろ?それなのに俺の知識を詰め込まれてさ、中身だけ大人になったようなもんだ。だからさ…なんていうかもっと甘えて良いんだ。俺とヴリトラはこの世界では年長者と言うかもう既に存在が化石って言うか。経験が違う。

だからお前らはもっと甘えてくれ。無理に大人になろうとしなくて良いんだからさ」


「はい。ありがとうございますマスター」


「そうだ、一つ聞き忘れてたんだが…」


「なんでしょう?」


「この世界が何て呼ばれてるかって聞いたか?」


「はい。この世界の名前は…『アーリア』と言うみたいです」


「アーリアか。意味は何だったかな」


「この世界での意味は『豊穣』…豊かに実る世界と言う意味ですかね」


「豊穣か。なら俺は『アーリア神』って事になるのかな」


「ええ。世界が豊かになるよう見守ってきたマスターに合ってると思います」


「でもアーリアか…なんか女性っぽい名前だ」


「仕方ないです。神様の性別まではわからないんですから」


「まあ俺はどちらにでもなれるけどな」


「そうなんですか?」


「性別って言う概念が神にはないからな。ただ何かと便利なのが男の姿ってだけだ」


「そうなんですね」


「だからまあ、ずっとこの姿だったからもう男と言って良い。それに、ハーレムのままの方が良いだろ?」


「その発想はどうかと思いますが…マスターがそれでいいなら良いと思います」


「ま、今日はお疲れ様。大体の疑問は解決したし、いい気分で朝を迎えられそうだ」


「マスターもお疲れ様でした。ゆっくりとお休み下さい」


「うむ。いつも通り魔力を少しずつ流しておくから適度に吸収しとくんだぞ。……エレアみたいに」



既に夢の中だと思うが、俺が放出している魔力を体全体でしっかりと吸収している。



「そうですね、ありがたく頂きます」


「あ、あと…口調どうするか…決めろよ…な。それじゃ、お休み」



ふぁ~っとあくびをしながら言ったので途切れ途切れになってしまった。



「はい。お休みなさいマスター。良い夢を」



そしてそのまま俺の意識は遠ざかっていく。



「お休みなさい愛しのマスター」



完全に意識を手放す前にそんな呟きが聞こえたような気がした…。

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死を望む神様 テクラウス @tekuraus

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