第18話 店内探索2

 事務所に戻った俺たちは捕らわれていた人たちに飲み物と食料を提供した。みんな喉が渇いていたみたいでゴクゴクと飲み干していた。疲労具合から見てもそんな長時間監禁されてはいなかったようだ。


 周りを見渡すと、ヤンキー二人は部屋の隅に縛られて転がされている。悪い事をした奴らとはいえなんだか可哀想に思えてくるな。


 みんなが落ち着いた頃合いで俺は改めて自己紹介をする。


 「改めまして、梶木耕太です。みなさん無事で良かったです」


 「さっきはありがとう、助かったよ。頭のケガも君から渡された薬を飲んだら一瞬で治ったよ。私は警官の幸田靖男、危ないところを助けられた婦警が神山明美だ」


 「神山明美です。さっきは危ないところをありがとうございました」


 警官が自己紹介してくれた。婦警さんも恥ずかしそうにしながらお礼を言ってくれた。


 「私は小野寺源蔵だ、隣は妻の冨美。悪漢を倒してくれてありがとう」


 70代くらいだろうか。少し厳つい感じの老人がそう挨拶する。


 「さっきはありがとうございました。私は矢島凛子です」


 さっき助けたビジネスウーマンが挨拶する。ジャケットは婦警さんが着ているからシャツだけになっている。なんというか……デカいな。目のやり場に困ってしまうぞ。だが紳士な俺はあまり見ないように気をつけている。多分……


 「お兄ちゃん、強いね。カナとお姉ちゃんを助けてくれてありがとう」


 ぺこりと香奈ちゃんがお辞儀をしてくれる。


 「梶木さん、本当にありがとうございました。みんなが無事なのは梶木さんのお陰です」


 姉の三沢さんもお礼を言ってくれる。改めて見てもかなりの美貌だ。大学生くらいだと思うが、彼氏がうらやましいぜ。あの部分は矢島さんと比べると負けてしまうが、一般よりは大きいしスタイルもいいな。


 「ケガとかもなさそうですね。ここにいるのはみなさんだけですか」


 俺は現状確認をする。


 「そうだ、ほかにも居たんだがそこに転がっている奴らに脅されて店から追い出されてしまったんだ。おそらく外の奴らに……」


 小野寺さんが答えてくれる。さっき可哀想と感じたっが撤回させてもらおう。


 「ところで、神山君から聞いたが君は銃か何かを持っているのか。太ったヤツの腕が吹っ飛んだと聞いたが……それに君がくれた薬は何だ。傷が一瞬で治るなんて聞いたことがない」


 幸田さんから質問が飛んできた。みんなを見ると知りたそうな顔をしている。そろそろこのフザケタ世界のことを伝えないとな。俺は知っている情報を含めて説明しようと思った。


 「では、俺が知っていることを伝えますね。そもそも外の死人、まあゾンビが発生した理由からですが……」




 説明が終わるとみんな唖然とした顔をしていた。そりゃこんな事を言われてもはいそうですかとは理解されないよな。ファンタジーなんてゲームやアニメ、小説とかの空想だと思われているんだからな。


 「まあ、俺はそのダンジョンというところで訓練して多少強くなったんですよ。魔法も使えるようになったから外のゾンビも簡単に倒せたんです」


 「か、梶山君が嘘を言っているようには見えないが、さすがに信じられないな」


 幸田さんがそう言ってくる。周りもそんな感じだな。


 「じゃあ、証拠として魔法を見せますね。ファイヤーボール」


 手に火球が現れた。さすがにこれを投げることは出来ないな。俺はもう片方に持っていたカラのペットボトルを誰もいない方向に放り投げる。


 「ファイヤーバレット」


 炎の弾丸がペットボトルに当たり消滅させる。


 みんな、口を大きく開けて驚いた顔をしている。


 「お兄ちゃんすごーい。つよーい」


 香奈ちゃんが純粋に褒めてくれる。照れるぜ。


 「す、すごいですね。梶木さん。それは私たちでも使えるようになるのですか」


 三沢さんがそう聞いてくる。どうなんだろう。多分ダンジョンでモンスター退治をすれば大丈夫だと思うけど……師匠に聞いてみよう。俺は師匠から貰った通話用の半欠けメダルを握り魔力を流しながら師匠に話しかけた。


 「師匠、聞こえますか。聞きたい事があるんだけど」


 「聞こえているわよ耕太。何か問題でもあったのかしら」


 「街を探索していて、食料品店で助けた人から聞かれたんだけど魔法って俺以外でも使えるようになるのか」


 「出来るわよ。ただ耕太みたいに何でもって訳でもないわ。適性がある魔法なら使えるわね。ただ、モンスターを倒して成長しないとダメよ」


 「そっか。分かった。じゃあ皆をうちに連れてこないとダンジョンに潜れないな」


 「そういうことね。転移は妾が居ないと使えないわ。そこは何とかしなさい」


 転移での移動はダメか。まあ車があるから大丈夫だろう。


 「分かった。何かあったらまた連絡するよ」


 俺はそう言って通信を切る。


 「師匠に聞いたら使えるよ。ただダンジョンに潜ってモンスターを倒して成長しないとダメだけど」


 俺がそう言うと皆思案した顔になる。


 「カナ、魔法使いたい。お兄ちゃん所行く」


 香奈ちゃんが無邪気にそう言って来る。連れて行きそうだ。ダメだ。犯罪になってしまう。


 「香奈ちゃんはダメだよ。危険だからね」


 「えー、カナも魔法使う、魔法少女になるの」


 香奈ちゃんはそういうとプーと頬を膨らませて拗ねだした。参ったな……俺が思案していると姉の三沢さんが声を掛けてきた。


 「梶木さん、出来れば香奈にも魔法を教えていただけませんか。危険なのは十分承知ですが、何の力もない香奈や私たちだとこれから先無事に生き残れる確証はないですし、あのゾンビに対抗できる力が欲しいです」


 三沢さんはそういうと決意を秘めた目で俺を見つめる。確かにこの狂った終末世界では力のない弱者は喰われるか、悪漢どものオモチャかしかないのかもしれない。


 「わかった。なるべく危険が無いようにするけれど、ケガや命のリスクがあるって分かって言っているなら修行出来るように師匠に頼むよ」


 そう言うと三沢さんと香奈ちゃんはほっとした顔をした。


 「取りあえず今日はこのままここで過ごして、希望する人は明日俺の家まで一緒に行こう。ここにはまだ食料もあるから街での拠点にして、残る人はここにいてもらうことにするよ。ゾンビやおかしな奴らがこれないように少し防衛力を上げるしね」


 時計を見れば夕方近くをさしていた。取りあえず皆緊張した日々を過ごしていただろうから今日はゆっくり休んでもらおう。


 俺は皆にそういうとこのスーパーの防衛を高めるために外に出ることにする。


 「じゃあ、俺はこれから外に出てくるよ。危険だから皆は外にでないでね」


 俺は皆が頷くのを確認すると一人部屋でる。後ろから、香奈ちゃんがお兄ちゃんがんばってと声を掛けてくれたので背中越しに手を挙げた。

 

 さあ、あともう少し頑張るかな。


 (続く)

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終末ダンジョン探索記 池原東一 @Moran1894

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