第14話「終焉」

熾烈な戦いだった。


閻魔の率いる死神たちは、どいつもこいつも強力で、地獄の番人達も苦戦していた。



「くそ、数が多いうえに個々の力が強すぎる!」


俺は力を奪われており、戦いに参加しても足を引っ張るだけなので、戦況を把握しつつ番人達に指示を出す。


そのとき、俺たちの倒すべき相手が颯爽とその姿を現した。



「カツヨシとやら、キサマ死神の名に泥を塗るにとどまらず、この我輩に楯突くというのか!」


「ハッ! 俺の仕事を正当に評価しないテメエのせいだろうが!」


この戦いで命を落としたものは皆、永遠の虚無へと飲み込まれる。冥界において死したものが、地獄や天国にいけるはずがないのだ。


「閻魔の首を掻き切って、この世界を我らの手で掴むのだ!」



番人達は俺の激励を受けて、力を最大まで解放させる。死神を相手にする必要はない。閻魔の首さえ落とせば、死神の力はすべて失われるのだ。






そして。





「カツヨシ殿、ささ、こちらへ」


俺は番人の一人の後に着き、捕えられた閻魔の元へ寄る。




「キサマ……こんなことをして、タダで済まされると――」


「黙れ」


俺は閻魔の頭を小突き、無理やり黙らせた。



「これからこいつの首を落とす。今思えば、こいつはむちゃくちゃな奴だった。人を勝手に死神にしたと思えば、その仕事の仕方が気に食わないという理由だけで俺を貶めた」


俺は閻魔の顔を睨みつけ、さらに続ける。



「そして、こうして閻魔の台帳や死神の証言もあって、俺が冥界に送られた原因がこいつにあることも分かった。本来は違う人間を冥界に送るはずだったのに、こいつの手違いで俺をここへ送ってしまった。だが、こいつは自分のミスを認めるのを拒み、その事実を隠して俺を死神にして利用した」


うなだれる閻魔の首へ、俺は番人から預かった鎌を据える。


「何か言うことはないか?」


「……」



無言のままでいる閻魔。俺はもういいだろうと、鎌を振りかぶった。






だが、その鎌が振り下ろされることはなかった。



なぜなら、俺の両腕は切り落とされ、更に首に鎌を突き付けられていたからだ。








「――ヒメ、お前、自分が何をしているのかわかってるのか?」


「それは私のセリフだよ――っ!」


これまで聞いたこともなかった、ヒメの怒声。


「私の知ってるカツヨシは、こんなめちゃくちゃなことしないよ!」


「ヒメ、鎌を下ろせ」


ヒメは言うことを聞かない。


「大丈夫。カツヨシを殺したら、私もすぐ逝くから」


「おい、やめろっ。ここで死んだら二度と――」


「さようなら」






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死神を堕としたらチート級の死神になったので異世界転生者のお命頂戴します 茶器 @angelabalzac

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