Act.0030:俺にとっての最強とは……
すでに10数機の敵
まるで殺意の鎖が、
(アラベラたちが離れてくれないと……)
そう思った矢先に、殺意が魔力を纏う。
「――チッ!」
咄嗟、獅子王も魔力を気合と共にこめる。
形を得て迫る殺意は、石の鏃、火の弾、そして氷の槍。
取り囲むよう一斉に
「――【
獅子王の號に従い、鬣がそそり立つ。
――放電。
そこから、黄金の機体の周りに煌々とした球体が現れる。
球面には、激動する
それは、範囲内に入った石の鏃、火の弾、氷の槍のすべてを捕らえると、それを一瞬で粉砕し、破壊し、消滅させていく。
魔力消費が激しいために一瞬しか使用できないが、
それは一般から見たら常識はずれな事である。
なにしろ魔術師でもないものが、火風水地の基本四属性ではなく、拡張十属性である雷を使った属性結界をここまで強力に発現させたのだ。
そのことに動転した気配が、周囲から伝わってくる。
それは敵に隙ができた好機で、窮地の獅子王が動くなら今しかなかった。
「あふっ……」
だが、獅子王はそれどころではない。
一気に放った魔力が、女体である獅子王にとてつもない刺激を走らせていた。
「――アアアアッ……ああんっ!」
喘ぐ声をだしてしまい、獅子王は慌てて自分の口を抑える。
しかし、体は正直な反応を否定できず、つま先から股間を走り、胸の先端、手先、脳の奥底まで痺れるような感覚に意識を奪われていく。
まるでそれは、外に放った雷が我が身に返ってきたかのようだった。
ピクンピクンと小さな痙攣に女体を震わせて、和真としては味わったことのない感覚に囚われる。
紅潮する頬。
朦朧としてくる意識。
そこに浮かびあがる1人のシルエット。
「せ……
獅子王は慌てて女体化を解除する。
激しく呼吸を乱しながら、独りしかいない
「違う! 絶対に違う!」
そして誰に言うでもなく言い訳をして、己の失態に和真は恥じる。
初めて女体で乗った時、獅子王は死にかけるほど大変なことになった。
そのありさまは、口が裂けても人様に言えるような状態ではなく、いまだ自分の胸の奥底に封印している。
もちろん、ミチヨにも話していない事だ。
その現象が信じられなかった和真は、それからもこっそりと1人で試したが、女体のままで乗ると必ずこうなってしまう。
だからいつもは、乗ったらすぐ男へ戻るように心がけていた。
だが、今日は慌てていたために、忘れてしまっていたのだ。
もちろん、和真は
むしろ、初恋の相手である【いちず】のことは今でも忘れられず、それを奪った
しかし、
その体の一部から来る刺激に、どうやったら逆らえるというのだろか。
いや、逆らえるわけがないのだ。
そして体の一部となった
「くっ……屈辱だ……」
ちなみに男として乗る場合、不思議とあの刺激は走らない。
代わりに、
それは不思議と不快ではなかった。
むしろ、心強さを感じさせてくれている。
あの【四阿の月食】を起こした
その一流の存在感は、たとえるなら
強さを保証する太鼓判のように感じられたのだ。
――パイロットの腕前を考えると、今のところこの付近では最強の
「ムカつく野郎だが……最強……ね。俺にとっての最強とは……」
今、周囲の敵は、10機以上。
それが茫然自失から回復して、またこちらに殺意を向ける。
隠れる物陰もなく、逃げる道もない。
普通なら絶体絶命のピンチだろう。
だが、
「最強とは、負けられない時に決して負けないことだ! ――【
魔力を込めて、
そして、
こぶしが、天を掴むように握りしめられる。
刹那、拳から四方八方に放射される数多の雷。
突然の出来事で狼狽える敵機をよそに、和真はあらかじめ設置していた
それは、この戦場の四隅に仕掛けた【
もともとは小さな種型をしている【
そこから細長い雄しべ6本と、1本の雌しべが水鏡に映る花火のような広がりを見せている。
それは、黄金色の
そして、他の3つの
それは電撃で区切られた巨大な四角いフィールド。
さらに電撃はフィールド上にマス目を描きだし、その範囲内にいる
「――ぐわあああぁ! くっ、そ……どーなってやがる!?」
術の名を告げてから、ここまで1秒足らず。
電撃の網に足を絡められた、10機ほどの敵
電撃は
さらに魔力防御していたとしても、パイロットにも痺れを与える。
このフィールドにいる
本来の【
しかし、効果範囲が狭く、持続時間も短い。
それに対して、ヒサコからもらった
おかげで森から荒野にかけての一帯を自分の狩場にすることができている。
「全部は捕らえられなかったか……まあ、いい」
電撃により森の木々が発火し始める。
瞬く間に炎が拡がっていく。
電撃の眩い光と、炎の紅蓮が絡み合う。
このままならば、この森まで死滅してしまうだろう。
「悪いが、手加減なしで早めに決着をつけさせてもらう」
黄金の肢体が少し沈みこみ、前屈みに構えられる。
両手には、しっかりと握られたトンファー。
その短い側の先端には、鋭利な突起がついている。
それが敵
「行くぜ……――【
次の瞬間、
否、別の場所にいた。
遅れて吹き荒れる突風が、土砂と一緒に周囲の炎を巻き上げて消す。
そして、元存在した場所との間にいた敵
その
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