Act.0029:そういうイメージなんです
街から離れた荒れ地で、初めて
「この
その意味がわからず、和真はかるく首をひねる。
だが、
視線の先にある遠い何か、それを嘲るように彼の口角は歪んでいた。
見方によっては、自嘲しているようにもうかがえた。
「ボクがもともといた世界には、魔法なんてなかったんです。……うーん。待てよ。もしかしたらあったのかもしれないけど……少なくともボクは見たことがなかった」
そこに入っているのは、
「だから、このヴァルクをデザインした時も、魔力なんていう要素を考えていなかった。まあ、きっとそれでも、『そもそも
和真としては、
しかし、それなりに根拠に関しては、いちずからも聞いている。
だからそのまま、「それで?」と話を促す。
「というわけで、ヴァルクは魔力をエネルギーとしてしか扱わない機体になったわけです。でも、2機目の【
「……どういうことだ?」
「言い換えるなら、魔法を魔法らしく使わなかったって感じかなぁ。たとえば、
「なるほど……。確かにあの銀の猫を思わす、双葉の
「そう、それなんですよ!」
くるっと振りむき、
ひ弱そうな体格からは、考えられない気迫がわきはじめる。
「双葉が『魔力コントロールが苦手』と言っていたことから、『魔力でどこまでコントロールできるんだろう?』という興味もでてきたんです。『脳波コントロールと同じぐらいできるのか?』とかね!」
「脳波? ……それはつまり、魔力とは関係なく、考えるだけで動くということか?」
「ですです! ボクたちの世界には、そういうのがあったんですよ。側頭部に機械を埋めこんだりして。まあ、ボクは生まれたときから
「……?」
何を言っているかわからず、和真が顔を顰めると、
「とにかく、魔力コントロールについて調べたくなったんです。そこで蛇腹・球体関節で、多くの自由度を設けて、コントロールの激烈難しそうな
「それは見たことないが、話には聞いている。蛇のような腕と、蛇のような尻尾をもったミカ殿が乗る、特異な姿の
「はい。ミカの能力も高かったおかげか、想像よりはるかに動いてくれて、結果的には大成功の機体でした。けど、
「……法術がきらいだったのか?」
和真の問いに、
「う~ん……嫌い……というより、『なんか違う』って感覚なんですけどね。ただ同時に、勉強してたら『ああ、法術って便利だな』とも思ったんです。そうしたら、今度はとことん法術で戦う
「それが、あれか……」
荒れ地の数百メートル向こうに陣取っている
長い錫杖を片手に持ち、か細い純白のボディに、同じく真っ白な羽を広げている。
それはまるで、伝説の天使のような姿をしていた。
「はい。【
ついさきほどまで、
普通、魔術師数人でおこなうような魔術を、たった1機でおこなってしまうのだからバケモノじみている能力だ。
もちろん、乗っているパイロット――フォーという銀髪の少女――の能力の高さがあってこその力かもしれない。
「
そう言って、楽しそうに
普段の気だるそうな所もなく、本当に
「そして次に作ったのは、魔法と科学のバランスをとった機体です。まあ、これはご存じですよね」
「ああ。嫌なほどな。いちずの
眉を顰める和真に対して、肯定の意味で
「ゴーレム召喚の古代魔法を使いながらも、ビーム兵器やミサイルも装備できるバランス型。たぶん作った中では最も汎用性に優れていると思います。……で、何が言いたいかというと、ボクにとってヴァルク以外は、テーマごとの実験機でもあったわけです。そして、
「ロボット……
たまに
「うーん。まあ、そう思っていてくれていいです。でも、この際ですから『スーパーロボット』というひとつの単語で覚えてください。スーパーロボットは、『正義を信じる心でいくらでも強くなっちゃうロボット』です」
「……な、なんだ、それは?」
あまりに突飛な説明で、思わず和真は目を丸くする。
だが、
「そうイメージして描いてみましたってことです。まあ、本当にそんな風に働くのかどうかは知りません」
「おい……。なんか無責任だな」
「もちろん、その根拠になるように、駆動系、出力系、修復系、防御系のすべてに、魔力による増幅装置を組み込んでいます」
「つまり、魔力をこめればいろいろと強化される……ということか?」
「端的に言うと。……ただ、いろいろと調べて、試してわかりましたが、
「俺のイメージ……どんなのなんだ?」
「前にも言いましたよね。あなたは、『スーパーロボット物にでてくる主人公のような人』って。あなたは自分の正義を信じられる、とんでもなく真っ直ぐな人……そういうイメージなんです」
「…………」
「だから、あなたが
「ご都合主義って……」
「ああ。それから、
「――おいっ!! 怖いなっ!!」
◆
「……とは言え……」
目の前で次々に
「今回は出し惜しみなしでがんばってもらわないといけなさそうだな……
まるでその言葉に応じるように、
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