Act.0048.5:俺にないもの……
(絶対に勝ってやる!)
いちずの家からの帰り道。
夕闇の中で、ひとり熱く和真は燃えていた。
なにしろ、
しかし、こちらは実戦経験も豊富で、この辺りなら警務隊に行った兄や、隊長クラスを除けば、ほぼ負け知らずだ。
(しかし……なぜ、あいつなんだ?)
やはり気になるのは、それだった。
ふと、いちずの言葉を思いだす。
――和真は、頼りがいがあって、社交的で、パイロットとしても優秀で、何でも1人でできてしっかり者だ。それでいて、正義感もあるし、常識的だし、優しいし、面倒見もいい。
(あいつ……褒めちぎりすぎだろう……)
思わず、にやけてしまう。
(まあ、俺はあいつに似合う男になるため、がんばってきたしな。……でも……それでも足らないのか)
ふと足をとめて、星空を眺める。
(……あの世代という男にあって、俺にないもの……)
あのむかつく男の顔を思いだす。
「――あっ! そうか!」
そして、気がついた。
(俺にないもの……それは変態性か!)
彼は悩む。
まじめな彼には、ほど遠い属性なのだ。
(そうか……いちずは、変態が好きなんだな! ならば俺も変態になれば、望みがある!)
変態になっても望みはないのだが、今の彼は気がつけない。
(変態……変態か。どうすればいいのだ……。女性物のパンツでも頭にかぶればいいのだろうか!?)
ふと、そんな自分を頭の中で想像してみる。
が、すぐに無理だと気がつく。
(そんな恥ずかしい真似できるか! 親も泣く!)
深夜、彼は道の真ん中で、膝から崩れ落ち、四つん這いになって苦悩した。
「くっ……。なんて、覚悟が必要で奥深いのだ、変態道……」
家に帰ってから落ちついて考えたら、「そんなわけあるか」と思うのだが、それまでは、まじめに悩んでいた和真だった。
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