第四章:フォー
Act.0027:本当は、私も……欲しい……
翌朝。
窓から陽射しは朝から暖かく、昼間は暑くなるかもしれない。
今日も良い天気になりそうで、洗濯物もよく乾きそうだ。
普段なら、やる気がでる非常に良い朝……のはずだった。
だが、いちずは疲れが取れきれず、気だるい朝となってしまった。
しかも、精神的な疲れで質が悪い。
世代による
彼曰く、【
同じく、【
当初は両方とも、いちずのために作られたはずなのに、いろいろとあり別の女性の手に渡った。
しかも、それを手に入れた女性二人が、そろってその
(奴隷というより、押しかけ女房のようだが……)
昨日の夕方、双葉は世代に合わないよう、こっそりとやってきて、この家に住まわせて欲しいと言ってきていた。
何が双葉にあったのかよくわからなかったが、「もう結婚してもらうしかない」と、断固とした意志を見せていた。
さらに今は自宅に戻ってはいるが、双葉の話を聞いていたミカまでも同居したい旨を言ってきていた。
ミカ曰く「自分の主と共に過ごすのは当然だろう」というのだ。
そのために家も何もかも売り払い、それらすべての財産を金に換えてくるつもりらしい。
だがしかしだ。
彼女たちを住まわす義理などありはしない。
世代はあくまで居候で有り、ここはいちずの家なのだ。
それに、客間は1つしかないのだ。
だから、いちずはそれはできないと断った。
しかし、2人は着替え以外の荷物も持ってこないので、2人で一部屋を使うという。
さらに収入はすべて世代に渡すので、家賃をそこからもらって欲しいというのだ。
つまり奴隷の面倒を見るのは、主人の役目と言うことなのだろう。
確かに収入が増えることは助かるが、やはり納得できない。
だから、やはり断る……はずだったのだが、双葉に
おかげで、今日から4人暮らしである。
(
とにかく、いちずは朝からモヤモヤだった。
「――おはようっす!」
そこに珍しく寝室で寝た世代が、ダイニングはいってくる。
キッチンで肉を焼いていたいちずも挨拶をし、椅子に座るように促した。
もう1週間ぐらいが過ぎようとしていたが、なんとなくいちずも、そしてたぶん世代も生活に慣れてきていた。
2人の何気ない朝の風景……この時間が、いちずは非常に気に入っていた。
つい先日まで、父親が急死してしまったあとの寂しい朝を味わっていたいちずには、本当にありがたいことだったのだ。
「昨日は、早く寝たんだな」
「うん。まあ、たまには寝ないと頭が回らないからね」
そう言いながら、いちずは世代の前に料理を並べる。
ある日。世代が、朝は米が食いたいと言った。
そこで、いちずはパン派ながらも、朝ご飯は米を用意するようにした。
世代があまりに喜ぶので、そこから毎朝、米とみそ汁は用意するようにした。
世代は、さらに喜んだ。
ふと、いちずは我が身をふりかえる。
確かに、早くに母を亡くしたため、父のためにも家事を進んでやっていた。
ただ、別に喜んでやっていたわけではなかった。
男勝りで、女戦士として生きている方が、自分らしいと思っていた。
それが不思議と、今は喜んで家事をしている。
仕事に打ちこむ、才能ある世代を甲斐甲斐しく世話をする自分が嫌ではなかった。
(……これではまるで……)
ミカに「夫婦のようだ」と言われたことを思いだす。
カーッと顔が熱くなる。
「……あ、そうだ。いちずさん」
そこに世代から声をかけられ、いちずは少しうわずって返事をしてしまう。
「な……なんだ?」
「いやさ、気がついたんだけど。もういちずさんの
「……え?」
一気に顔の赤味が引いてしまう。
「ど、どうしてだ!?」
「どうしてもなにも、もともと
「無論」
「でも、アダラが売れたから、今日にでもミカさんが5千万もってくるじゃない」
「……あ……」
「
「あ……ああ……そ、そうだな……」
確かにその通りだった。
世代の言っていることはまちがいない。
「で、もう一冊の
「え? あ、ああ……もちろんだとも……」
手伝ってもらうだけで、最終的には自分で稼ごうと思っていたのに、あっという間に世代が4倍の金額を稼いでくれたのだ。
そんな世代の希望を断れるわけもない。
(でも……本当は、私も……欲しい……)
心にわきあがる強い欲求。
それでもいちずは、それを秘めて言葉にはしなかった。
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