Act.0024:どうして、アソコなのよ!!

「あれ? お客さん?」


 ダイニングに入ってきた世代は、上半身裸だった。

 腰にはタオルを巻き、もちろんその下は何も履いていないだろう。


(――きゃああああ!)


 心の中で悲鳴をあげて、双葉は顔を両手で覆う。

 だが、そうしながらも、チラチラと世代の様子を見てしまう。

 筋肉ムキムキの作られた体……ではなかったが、ぶよぶよというわけでもない。


(普通……ま、まあ合格かな……)


 双葉は、ついつい品定めをしてしまう。

 恥ずかしくてしっかりとは見られないが、内心でラッキーとガッツポーズをする。

 実際、彼女は才能から一目ぼれしたものの、世代セダイのことをよく知らない。


世代セダイ、またそんなカッコで……」


(……また!?)


 だが、そんなラッキー気分の双葉は、いちずの言葉で化学反応を起こし始める。


「いや、着替えがなくてさ……」


「あ、すまん。持っていくの忘れてた。下着も乾いているのでとってくる」


(下着!?)


 そう言いながら、そそくさといちずが元父親の寝室に消えていく。

 その背中を見ながら、ミカがボソッと言葉をもらす。


「ふむ。まるで夫婦のようであるな……」


(ふーふー!?)


 それがトドメで、双葉の気持ちが爆発を起こす。


「ちょちょちょっ、ちょっと! 裸でうろちょろしちゃダメでしょ、ご主人様!」


「……ご主人様?」


 双葉はノシノシと歩いて世代セダイの前に行くと、くるりと背後を向く。

 そして、ミカから隠すようにして、背中で彼を押しやっていく。


「いいから、隠して! 脱衣所に戻って!」


「いや、でも、今、いちずさんが着替えを……うおっ!」


 タオルを巻いて歩きにくかったのか、世代セダイが背後に倒れかける。

 それに引っかかり、やはり共倒れとなる双葉。


「――きゃっ!」


 危ないと、とっさにふりむき、手をつこうとする。

 ついつかんでしまうタオル。

 蹈鞴たたらを踏み、尻もちをつく世代セダイ


「いてっ……」


「……!?」


 唇に触れる、肌の感触。

 はだけているタオル。

 埋もれる顔は、世代の股間。


 慌てて顔を上げる。

 目の前には、どこかで見たような物体X。

 そう。それを見たのは、子供の頃に父親とはいった風呂場。


「――いっ!?」


 バネでもついているのかというような勢いで双葉は立ちあがる。

 そして、その場できれいにまわれ右。


「い……いやああああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」


 彼女はそのまま猛ダッシュで、いちずの家を飛び出していく。


(なんで!? どうして?! こういう場合、お約束は唇にキスでしょ! よりによってファーストキスが……どうして、アソコなのよ!!)


 その悲痛な叫びは、彼女の心の中だけでこだましていた。


   ◆


「……こういうさ」


 世代セダイはタオルを巻きなおしながら、目の前にいた知らない金髪女性に話しかける。


「サービスシーンは、男性じゃなく女性がやる方が需要があるのではないだろうか?」


「そんなこと、拙子に言われても困るのだが……」


 まったくその通りだった。

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