Act.0014:そっちのがお得?
食事は、豚肉とタマネギを甘辛く焼いたものがだされた。
主食は、フランスパンのような硬いパンが炙られたもの。
それに挟んで食べた。
「あり合わせですまんが……」
いちずがそのようなことを言っていたが、味付けは
空腹だった彼は、それをありがたくいただいた。
「料理上手ですね」
「そ、そうか。まあ、父の食事をずっと世話していたからな……」
2人が食事中にした会話は、そのぐらいだった。
どうやら
そう気がついて、
「ところで、
実は
なんとしても、彼は
そしてできたら、たくさん欲しい。
彼はヴァルクの他にも書きたいロボットがたくさんあるのだ。
「まあ、1冊で500万円ぐらいが相場だ」
「500……。不躾なことを聞いていいですか?」
「なんだ?」
「この街の一般的な月収って?」
「ん? そうだなぁ……20万円ぐらいではないだろうか。パイロットなら賞金額によるし、
「なるほど」
ノートが1冊500万円と考えれば、異常に高く感じる。
しかし、巨大ロボットの値段として考えれば激安である。
「そう考えると、5冊で2,500万円って……本当に大金ですね」
「ああ。本当は父が
「すごい賞金……。スポンサーはそんな賞金だして平気なんですか?」
「それはデザインの買取代でもあるからな。今回の大会で優勝すれば、警務隊の正式採用
「同じものが、コピーで作れるんだ」
「いや、あくまで模写だな。警務隊専任の
「量産機……ということは、やはりもとのより劣化するんですか?」
この辺の仕組みは、彼にとって非常に気になるところだ。
もちろん、量産機で我慢するという選択肢はないが、好きなだけ
そうなれば、量産機販売なども考えなければならない。
「まあ、劣る……とは限らない。結局は、
説明をしながらも、いちずはまた紅茶を入れてくれた。
今度は、少しほろ苦い風味。
わざわざ味を変えてくれていることに、
そんな彼女に感謝しながら、話の続きに耳を傾ける。
「とにかく1億円あれば、
「素材費?」
「ああ。
「……ああ!」
しばらく悩み、あの悲劇の瞬間を思いだす。
プロト・ヴァルクが
だが、プロト・ヴァルクが血肉となり、新生ヴァルクが生まれたと考えれば感慨深い。
感慨深い……のだが、そうなれば目の前にあるヴァルクの描かれた
「そういえば、あの素材はどこで手に入れたのだ?」
「ああ、あれですか。……ボクがこの世界に来た時に乗っていた、元の世界のレムロイド……と言っていいのかなぁ? それが半分事故で吸いこまれてしまったというか……」
「別世界の
「うん……」
「…………」
「…………」
「……そうか……」
「……絶対、信じていませんよね?」
「いいや。信じられないが、否定もしきれないのだ。さっきこれを見たせいでな」
苦笑する
そして、開くとこちらにあるページを見せた。
それは、
いちずは、そのリストを指さす。
「たとえば、ここにある【レムリック合金】という素材だ。こんな金属、私は聞いたことがない」
「ああ。それ、一応は使える素材で最高品質素材のはずなんだけど……」
「そうなのか。しかし、それほどの素材なら知らないはずもないのだが……。まあ、そういうわけで、
「噂……ですか?」
「ああ。まあ、それは置いといてだ。話を戻させてくれ」
「あ。すいません。……えーっと、つまり試合に賭けてみようというわけですね」
噂というのも気になったが、飯までごちそうになった身として、
それに他にも自分と同じように、この世界に来ているものがいたとしても、自分には大して関係ないことである。
自分はここでロボットと暮らせればいい。
育ててくれた両親には悪いが、自分が幸せならきっと両親も喜んでくれるだろう。
「でも、ボクのロボットだからって勝てるとは限らないのでは?」
「いや。ヴァルクを見て乗って実感した。
「なるほど」
確かにそうかもしれないと、
敵の
ヴァルクの半分の強さだとしても、きっと余裕で勝てたであろう。
つまり、自分には強い
ならば、これを利用するしかない。
「それは別にかまわないんですけど……」
「けど?」
「いちずさんが勝ったら、成功報酬ください」
「ん? 金か?」
「あ、お金はいいです」
「お金ではない成功報酬? ……ま、まさか!?」
いちずは身をひいて、自分を抱くように今さら胸元を隠す。
その顔が、少し紅潮する。
「み、見るだけじゃ飽き足らず……わ、私の体が欲しいとか?」
「いや、そんなものより……」
「そ、そんなものっ!?」
「ヴァルクの
「私より
「ええ、もちろん」
「もちろん!? 自分で言うのもなんだが、これでも街で一、二位を争う美女と名高いのだぞ!」
「ごめんなさい。ヴァルクのフォルムのが好みなんです」
「謝られた!? ……この身と添いとげたいと引く手あまたなのだぞ!」
「ヴァルクと添いとげられるなら本望」
「添いとげられるか! いいのか、こんな美女を前にして!」
いちずは、十分に豊満な胸に手を当てて、自分をアピールする。
もちろん、彼女とて身を差し出したいわけではないのだろう。
しかし、その怒りの表情は、「
「私と結婚できるなら、貴族の地位を捨ててもよいという男や、
「えっ!
「…………」
「……そっちのがお得?」
「私を
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