Act.0012:変態か、君は!?
――2538年。
人類は、
しかし、その戦争は地球人の戦力を分散させ、自滅を計ろうとする異星人の謀略だったのだ。
その陰謀は暴露されたものの、疲弊した地球に異星人たちが今度は軍事力で攻めてくる。
地球人たちは一致団結し、人型戦闘用ロボット【レムロイド】で迎え撃つのだった。
それが、一般的に知られている【
このゲームは、リアルな映像、本格的なコックピット筐体、そして「
無論、一番の売りは「シミュレーターシステム」自体であり、ゲーム名称にもその色が非常に濃くでている。
逆に言えば、ストーリーモードなどは、おまけに過ぎない。
だから、そのストーリーがどんなに陳腐でも、メディアミックス展開された時のアニメのできが話題にあがったぐらいで、ゲーム的には何の影響もなかったのである。
しかし、この設定は、開発後期になってからわざわざ変更された新しいものだった。
初期の設定は、もっとファンタジー設定だったのだ。
我々の住む世界とは違う、魔法が存在するパラレルワールドが舞台。
そこは、別の歴史を歩んだ地球。
魔法で生みだされた疑似生命体【ゴーレム】を活用し、資材の運搬や建物建設、そして戦闘まで行っていた。
しかし、そのうち戦闘に特化したゴーレムが作られるようになった。
人間と同じ形で、同じように動く。
しかし意志はなく、ゴーレムに乗りこんだ人間が魔力で自由に操作できる。
それが
詳しくは
ちなみに、
この初期設定は、とある小説家により行われたらしく、もっと多くの細かい設定や、複雑なストーリーラインも存在し、メディアミックス展開を視野に入れたものだったようだ。
ところが、ハッキリとした理由は不明だが、この小説家がなにか問題を起こしたとか、もしくは今時ファンタジーは受けないとか、開発陣が総入れ替えになったとかの理由で、このファンタジー設定はお流れになってしまったのだ。
そして、今のSF風になったわけである。
ただし、【
(魔生機甲なんて漢字を見ても思い出せなかったが……たしかそのはずだよなぁ)
(しかし、どうしてボクが飛ばされたのが、初期設定の異世界? 普通、こういうのは、やっているゲーム世界に飛ばされるか、クリア後の未来でまた冒険させられるとかが定番だよね?)
もちろん、「定番」などと言っても、それは大昔に流行ったよくあるライトノベル系の話であり、今となっては「定番」などというのもはばかれる。
しかし、それにしても「不自然だ」と
(もちろん、都市伝説だと思っていた【トラン・トラン】現象が発生すること自体、十分に不自然だけど……)
「紅茶だが、よかったか?」
横から聞こえたいちずの声で、
木製の簡素なテーブルの上に置かれたのは、銀色の質素なスプーンが添えられた、白地に花柄のかわいらしいティーセットだった。
中には、吊るされたランプの
彼の鼻腔にまで、柑橘系のハーブティーのような香りが漂う。
非常に落ちつくいい香りだった。
苦みより、やはり柑橘系の爽やかさがある。
ほんの少しだけなのに、それが体にじんわりと広がっていくようだ。
夜になって、少し冷えてきた体が温まる。
それに空腹の時には、冷たいよりもありがたかった。
「ちょっと着替えてから食事を用意する。しばらく休んでいてくれ」
「はい。ありがとうございます」
ここは、【東埜 いちず】の家だった。
場所は、山間にある街【
舗装されていない道もあるが、結構広い石畳の道なども見える。
全体を見て回ったわけではないので、
だが、いちずの話では、人口1万人以上はいる、この周辺では大きめの街らしい。
いちずの家は、その街外れにあった。
建物は木造平屋建てで、意外に大きく見える。
しかも、この街では珍しいというロッジ風の建物だった
これは、街外れながら工房をやっているために目立つようにということらしく、確かに入り口には【あずまや工房】という看板が吊るされていた。
中は、あちらこちらに本棚が並んでいる。
そこには、「
いちずに「散らかっていて、すまない」と言われたが、
全体的に非常にきれいに片づけてあるし、本棚を見ても埃一つないぐらいだ。
これで散らかっているなどといったら、
「読みたい本があれば、そこのは見てもかまわないぞ」
本棚の前に立ち、並ぶ本のタイトルを興味深く見ていた
すると、いちずは確かに着替えていた。
ただ、その服装が予想外でなかなか過激だった。
上半身は黒のタンクトップで、深々と胸の谷間が覗き、その膨らみの形がタイトに現れ、その横は隠れていないようだった。
下半身はやはり黒の短パンで、スラリと立派な生足が覗いている。
見るからに、「女」を強調しすぎる姿だった。
だが、
今夜は、少し冷える。
よく見ると、腕に少し鳥肌が立っているようにも見えるのに、寒くないのだろうかと考える。
「……その服装は?」
そんな思いで
だが、その質問の意味を勘違いしたのか、いちずが勝ち誇ったようにニヤリとした笑顔を見せた。
「な~に。お礼と、お願いごとを聞いてもらいやすくするためのサービスだ。ふるまいは別にして、私もプロポーションには自信があるのでね。友人に『頼み事をするなら有効に使え』とアドバイスを受けていたのだ」
そして、テーブルに両手をついて、胸元を強調してみせた。
膨らみが中央により、タンクトップの上から谷間がまるで深淵が続く穴のように見えてしまう。
普通に考えれば、彼女の色香は誘っているようにしか見えない。
若い男性ならば、抗えないぐらいの魅力がある。
「どうだ? 目の保養になるだろう?」
だが残念ながら、
「ごめんなさい。正直、あまり興味はありません」
「……え?」
「ぶっちゃけますと、ボクは女性の裸体より、ロボットのコックピットの方が興奮します!」
「…………」
「…………」
「……へっ、変態か、君は!?」
「わりと……」
「…………」
そのあたりは、しっかりと自覚している
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