Act.0011:日本に決まっているじゃないか
「小僧が……あの
ヴァルクが消えて
「うん。そうだけど?」
四角顔が特徴的な三〇代の柳生は、いちずが用意した薄く光る金属のような魔法の拘束具で、腕ごと胴体を縛られていた。
なんでも魔法に頼るのはどうかと思ったが、確かに便利なことはまちがいない。
しかも、夢にまで見たヴァルクを具現化してくれたのも魔法なのだ。
そう考えたら、魔法でも何でも許すしかない。
そもそも、別に科学にこだわっていたわけでもない。
どうせ元の世界の科学が巨大ロボットの時代に行くのは、まだまだ先の話だった。
巨大ロボットが目の前にある。
彼にとって、それがすべてだ。
「なんでオレを殺さなかった? いや。オレの部下も見逃したな? 先の2人も助けたのか? 情けでもかけたのか?」
そんな
「あのねえ……。ボクは、個人的におじさんたちを殺すほどの怨みなんてないよ。ただ、別に知らないおじさんが死んでも気にしないと思うけどね」
「なら、なんだ? 手軽にコックピットを潰さず、
自棄になっているのか、それとも元々なのか、柳生は饒舌に質問をしまくっていた。
その様子を鬱陶しく感じ、
「そりゃ、まあね。人殺しなんてしたくはないよ。でもさ、たぶんロボット……
「……なんだそりゃ。わかんねーやつだな。なら、やっぱりコックピット狙った方が早いじゃねぇーか」
「ああ。それは単に、コックピットを狙いたくなかっただけ」
「……あん?」
「だから、コックピットを壊したくなかったの。コックピットって乗り込み型ロボット……
「…………」
「…………」
柳生だけではなく、横で聞いていたいちずまでもが、唖然とした顔で
「おい。いちず嬢ちゃん。……こいつ、どこで拾ってきたんだ? ってかなんなんだよ、こいつ。若いのに、頭おかしくないか?」
「正直、何者か知らない。ここで遇ったばかりだからな。ただ――」
そう言って、いちずは手に持った
「――お前を倒した
「なっ!? なんだとぉ!? あの精密な
「ああ。悔しいが、父よりも遙かに優れた
「うっ……うそだろ、おい……」
柳生が目を見開いて
だが、なんでそんな目で見られているのか、
確かに、あのノート……
だが、まだまだ甘いところはあるし、書き足りない部分もある。
それほど驚愕されるものではないはずだ。
(……だけど、あいつらが乗っていた
そこまで大したものではないと思うが、
「ところで、
「……どこ?」
「ああ。どこかに行く途中とかではなかったのか?」
そう言えばと、
彼はこの世界にいきなり飛ばされてきて、天涯孤独の身になっていたのだ。
さっきまでヴァルクがあったので、たとえ天涯孤独でもあとは飯と風呂ぐらい入れれば、どうでも良く感じていた。
だが、ヴァルクを返却しなければならない今、この世界で生きる希望のほとんどを奪われたに等しい。
彼の手にある
この愛を手放す……そう考えると、
それに、腹が非常に減っているのも、彼の不安を後押しした。
思わず彼は、低く呻ってしまう。
「私は警務隊を呼んだので、この男を引き渡したら自宅に帰るつもりだ。もし、特に当てがないなら、私の家によってもらえぬか。助けてもらったお礼もしたいし、相談したいこともある」
「……はあ。別にかまいませんけど。飯はだしてもらえますか?」
「無論。そのぐらいの礼はさせてもらうし、泊まる場所も提供しよう」
「それでしたら。……あ、でも、その前にちょっと聞きたいことが」
「なんだ?」
「……ここ日本じゃないですよね?」
「はあ? なにを言っている。日本に決まっているじゃないか」
「日本……なんだ……。じゃあ、今年は何年ですか?」
「ん? なんだ、
「……ああ、なるほど。把握しました。そういうパターンですか……」
怪訝な顔を見せる黒髪のいちずを前に、
(たぶんここ、
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