全ての存在を許せ
父の運転するスバル・インプレッサ
冬の青空の下、道は
「
車内に充満していた沈黙を、父のため息混じりの声が破る。
助手席に座
薄過ぎて殆ど見えない眉を斜めにして、ジョーナスは父を睨む。幅の広い口は固く引き結
「
「
「
「
「14だ!
「でも、
「
「
「
「
父が唇を
「……だからって
「
「
「
「
「
「
「……」
「
「……
『お前のせいで状況は悪くなってる』
『お前は自分が死んだってニュースをもう聞いたか? 誰もお前を褒めちゃいなかったぜ』
『これは私の一部。何があろうとお前には奪えない』
『さぁ続いてはラジオネーム『ハイルーラー』さんからのお悩み相談。えー、『最近、とても面倒な人にしつこくつきまとわれて困っています。どうすればいいでしょうか?』なるほどねー、しつこい人って嫌われるぞぉー』
『こう言ってやりなよ、『うるせぇ! 引っ込んでろ! お前の出る幕じゃないんだ!』ってな!」
「
「ボーイスカ
「
「
「
「
「
「
「
ジョーナスはマコノヒー警
「で、でも、お
林田丈一郎はもはや覚えていないが、
最初から存在しないということに
存在しなければ全ては無意味なのだろうか?
誰にも認識されていないものは無意味なのだろうか?
勿論、そうではない。
存在にも惰性がある。
林田という存在が
その惰性が
望むのであれば
全ての矛盾を飲み込んで、俺が林田の元に出現する。
俺の孕む矛盾は、矛盾ではなくなる。
猿の俺が死んだなら、俺はいないはずだが
俺は存在することになる。
俺はあらゆる不可能を、あらゆる非存在を世界に持ち込む。
あらゆる物語を、世界に持ち込む。
林田が俺の名前を呼ぶと
俺は林田の世界に組み込まれ、そして全てを忘れる。
だがかつて存在した全てのものが失われることはない。
全てが存在し、そこにある。ただスポットライトが当たっていないだけの話だ。
林田の惰性がそれを望みさえすれば。
俺たちは同時に全てを思い出し、そしてともに忘れていけるだろう。
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