このタイミングで
ドアを開けると病室の中には何回か顔を合わせた記憶のある――だが初対面に他ならない――医者と看護師がいた。
彼らは自分達がカーテンかスツールの仲間だとでもいうように存在感を消してベッドの側に立っている。
いつだったかクローゼットの中に隠れていた猫らしきもののしれっとした顔を思い出した。
2人とも顔がよく見えない。
林田は「人の顔を見るのが嫌だ」と言ってほとんど引きこもりみたいな生活を送っていたけど、その言葉がどういう意味なのか、今になってやっとわかった。
林田のお母さんが眠っている林田にしがみついて泣いている。彼女の声が病室中に響いていた。小さな泣き声ではないのに林田は眠り続けている。
看護師が俺の側まで歩いてきて、何かを言った。俺は聞き返す。
看護師は俺の手を取り、壁際に並んでいるスツールに座らせた。
戸惑いながら彼を見上げると、低いがよく通る声が降ってきた。
「つい先ほど、眠るようにお亡くなりに」
「なんです?」
はっきり聞こえていたが、俺は聞き返した。
「苦しまずに旅立たれました」
看護師の言葉を引き継いで医者が言った。
「あっという間で」林田のお母さんが声を上げた。
俺に言っているのか、独り言なのかわからない。
「コップの水が溢れてしまったみたいに。急に。苦しそうな様子なんて全然」
「いやいや」
いやいやいやいやいや。
俺は顔を横に振る。自然と半笑いになった。
「ないですよ。そんな。死ぬとか。だって林田ですよ。神様みたいなもんなんだから」
誰も何も応えない。俺はベッドに歩み寄って、林田の肩を掴む。
「ほら、温かいじゃないですか。死ぬとかないですよ。こいつ、なんだって出来るんです、こいつ。脳腫瘍なんかちょちょいのちょいなんじゃないですか。1人ブラックジャックですよ。いや、ブラックジャックは1人ですけど。おい、林田、起きろ」
林田のお母さんの泣き声が高くなった。
「お母様も大変動揺されていますし」
「死ぬわけないじゃないですか! こんな時に死ぬとかバカのすることですよ!」
俺は林田の肩を揺する。
「起きろって! お前! みんな、心配しちゃうだろ!」
「落ち着いてください、こちらにおかけください」
医者と看護師に両腕を引っ張られ、またスツールに戻される。
彼女が林檎の乗った紙皿を手に病室に入ってきた。彼女は俺と林田のお母さんを交互に見てから、紙皿を放り投げてベッドに駆け寄り、林田のお母さんの隣で泣き始めた。
頭が痛い。気持ちが悪い。吐き気がする。左手の傷がいっつい。
「大丈夫ですか? 気分が悪いのなら吐いてください」
看護師が銀色の容器を俺に持たせ、背中をさする。
俺は容器を抱えて吐く。飲んだ覚えのないオレンジジュースが容器に広がって、食べた覚えのない米粒を浮かせている。溶けかけている海苔もあった。
今の過去でこのオレンジジュースなり米なり飲み食いしてた俺は何をしていたんだ?
ずっと病室にいたわけがない。見舞いに行ったはずだ。林田に会ってるはずだ。行かないわけない。俺なんだから。
今の過去を思い出そうとすると、無数の記憶が頭の中に次々と生まれてくる。脳の中でバブがしゅわしゅわしてる。泡だらけで記憶が見えない。
「やめてくれ」
背中をさすっていた看護師が勘違いして手を止める。
記憶が無数の泡のように次々出現する。バリエーション違いの過去。思い出がポップアップ広告みたいに頭の中を埋め尽くす。
俺は食べてないけど食べたことになってるものを吐く。
気持ち悪い。長風呂の後、急に立ち上がった時みたいだ。
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いつかみたドミノピザのサイトが脳裏に現れる。混乱する頭がみせるグロテスクなイメージ映像。
冗談じゃない。少しは真面目に動け。俺の頭。現実逃避してる場合じゃないだろ。
――してなくても存在できますが、今登録するとお得な過去クーポンが使えます――。
林田が死んじまった。ついさっきっていつだよ? 脳腫瘍? ふざけんなよ。こんなのありかよ。ほとんど神様なんじゃねぇのかよ!
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思い出そうとやっきになるたびに、思い出はメタルスライム並みに増え続けて、そのくせ捕まえようとするとダッシュで逃げる。うっっぜぇな、クソがっ!
不安が濡れた布になって体にかぶさってくる。どこからどこまでが本当かわからない。
しっかりしろ。パニックになってる場合じゃない。新しい過去を思い出すんだ。
林田がこんな風になった過去が知りたいだけなんだ。もしかしたらなんとか出来るかもしれないじゃないか。何かがあるかもしれないじゃないか。一発逆転のホームラン的な何かがあるかもしれないじゃないか。
無数の記憶のピザが頭の中を飛び回る。無数のバリエーション。
シンプルな過去をくれ。タートルズが画面に投げてくるピザみたいな。
「今の過去はどれなんだよ」
まだ痛む掌で額を抑えながら呻いた。
途端、額が指を第2関節のあたりまで飲み込んだ。
驚きのあまり反射的に立ち上がると、吐いたばかりの汚物が容器ごと床に散らばった。看護師は嫌な顔一つしないで掃除を始める。
俺は額を指で確かめる。硬い。皮膚の下に肉、肉の下に骨がある、いつもの額。
でも、さっき、確かにへこんだんだ。砂に指を突っ込んだみたいに。
――ご注文ありがとうございます。現在につながる答えとしてあらかじめ用意された今の新しい過去をアンチョビ抜きでお届けいたします――。
また俺の知らない過去が脳裏に浮かぶ。林田のお見舞いに行った時の記憶。
「階段から落ちちゃってさー」と俺は言った。
記憶の中の林田はベッドに横たわったまま俺を見ていた。顔は虚ろで、生気はなかった。
俺に戻る前の俺は明るく振舞おうとした。林田に病気なんてないかのように。ほんの数ヶ月入院すれば元通りの生活に戻れるのだとでもいうように。それはもう無理なんだと、わかりきっているのにもかかわらず。
「お前に俺の世界に戻って欲しいって願ったんだ」
「はは。じゃぁ願いが叶ったな。当分お前とおんなじ入院患者だぜ」
林田の声の震えと光のない目を、俺は忍び寄る死のせいだと考えた。俺に出来る一番いいことは明るく振舞って、林田から死を忘れさせることだと俺は考えた。
新しくやってきた看護師がまた別の容器を俺に持たせる。最初からここにいた看護師は黙々と床に散らばった嘔吐物を拭いている。いつ食べたんだ。まだほとんど消化されてない。
「お前は消えてしまった」
「俺はここにいるじゃんよ。林田」
俺はスツールをベッドの側に持ってきて座り、血管の浮き出した林田の手を握った。
「俺の知ってるお前の記憶を、お前は持ってない。生きてきた過去が違う。お前は本当のお前じゃないお前なんだ。お前は『バック・トゥー・ザ・フューチャー4』のお前だ」
俺はやれやれと思った。林田の妄想はひどくなるばかりじゃないかと。
林田のやせ細った手の感触を俺は思い出す。今出来上がってゆく過去は生々しくて、色鮮やかで、自分がどこにいるのかわからなくなりそうだ。
「背中を」と俺はいう。看護師が背中をまたさすり始める。
その手の感触を碇にする。俺の今はここだと忘れないように。
思い出の中で林田がいう。
「お前は小さな猿だったんだ。どんどん大きくなって、いつの間にか2本足でしか歩かなくなって、顔も人間っぽくなってきた。俺、怖くなって、お前のこと雑木林の沼に置き去りにしたんだ。木のところにお前を置いてさ。『すぐ戻るから』って。酷いよな」
無数の記憶の中にその記憶があった。
あの沼。あの湿った臭い。あの背の高い雑草。その向こうに金髪の子供の背中が見える。
この時、俺は遠ざかってゆく林田の背中を見つめながら、お母さんがいなくなった日のことを考えていた。お母さんというのは――南さんのことだ。
あの日。お母さんは俺を沼の側まで連れてくると木の上に隠れていろと命じた。
お母さんは『あのお方』に助けを求めに行くのだと言っていた。
『あのお方』とは、お母さんや他の動物達が信じていた神のことだ。
現実世界の構築者として、現実の外側にいるハイルーラーに選ばれた存在。
『あのお方』が認識したままに、世界は作り変えられるという話だった。
これがどこから出来上がった話で、どうやって動物達に広まっていたのかはわからない。ヨウムは大昔に巨大な猫の姿をした不思議な生き物が広めていったのだと言っていた。
『あのお方』は一度だけ動物園にやってきて、ピアニカを鳴らす子供達を止めようとしてくれたのだとお母さんは言っていた。
お母さんは一目で『あのお方』だとわかったと言っていた。金色の髪が『あのお方』のお印だと。予言の通りだと。そして『あのお方』はまだ自身が何者かをわかっておらず、自身に何が出来るのかもわかっていないのだとも――。
今なら、お母さんが『あのお方』だと思っていたのが林田のことだとわかる。お母さんは林田を『あのお方』だと思い込み、『あのお方』に会い、慈悲を乞うために俺を連れて檻から逃げ出したのだ。あのまま檻にいたら、いずれお母さんも俺も殺されてしまうから。
お母さんはお母さんが知る全ての言葉で『あのお方』に頼んでくると言った。『あのお方』がただ『この母子が幸せになればいい』と願ってくれさえすれば、お母さんも俺も救われるのだと言っていた。
お母さんはすぐに戻ってくると約束した。
そして、約束は果たされなかった。
俺はまた置いていかれるのだと思い、林田を追いかけた。孤独は嫌だった。何よりも。
林田の側にいると自分が組み替えられてしまうのだと俺は知っていた。自分が大きくなっていることも、2本足で歩いていることも、言葉を発することも、おかしなことだとわかっていた。
自分が自分ではないものに変えられていくのを怖く感じない奴なんていない。俺は怖かった。でも頭の中に徐々に出来上がってゆく人間としての記憶が、恐怖を薄めていた。
人間としての記憶には家族がいて、友達がいた。林田がいた。俺は必要とされていた。猿としての記憶は苦痛に満ちていて、俺は邪悪な小学生達に痛めつけられる玩具の付属パーツとしてしか必要とされていなかった。人間の記憶が、どれ程光り輝いていたことか。
去っていく林田の背中を目にした俺は、孤独という恐怖に飲み込まれた。
『いいよ!』と俺は思った。『俺を変えていいよ! お前の望むものになるよ! だからお願いだから、置いていかないでくれよ!』と。
俺は草をかき分けて走った。風に触れる俺の表面が砂のように崩れていくのを感じた。俺を構成している粒子が溢れ、崩れ、そして形を変えていくのを感じた。
今ならわかる。猿だった俺はこの時に死んだ。死を選んだ。
そして俺が生まれたんだ。
「動物園に続く道に出た時、そこでクラスの連中と鉢合わせしたんだ。俺はやり過ごそうとしたけど、うまく出来なかった。あいつらは俺を囲んで、俺を殴り始めた。最初はふざけてるみたいに軽く。それからどんどん強くなった。俺が倒れると、あいつらは笑って言ったんだ。『食わせようぜ』って。あの道に転がってた犬のフンをさ。俺は逃げようとしたんだ。でもすぐに捕まった。そしたらさ、そしたら、お前がきたんだよ。雑木林の茂みの中から、飛び出してきたんだ。そして見る見るうちに人間に変わったんだ」
覚えてる。不意打ちで3人を蹴り飛ばして、4人めの顔をぶん殴って、それから林田を引っ張って、あいつの家まで逃げた。
「俺は最初、お前が猿に見えたのは錯覚なんじゃないかって思おうとしたんだ。知らない子が助けてくれたのかなって。でも服は猿が着ていた服だし。それに顔がよく見えなくて。見えてるんだけど、見えていると感じるんだけど、記憶出来ないんだ。すごく怖かった。お化けなんじゃないかって思った。そしたら母さんが玄関から出てきてさ。お前のこと、前から知ってるみたいに話すんだ。お前も俺を前から知ってるみたいに。ずっと友達だっただろって。前から一緒にいたじゃないかって。俺、すごい怖くて。だから逃げたり、遠ざけたりして。喧嘩もして。俺、頭おかしいって言われて」
俺は林田の額に滲み出した汗をタオルで拭い、明るい声で言う。
「全部脳腫瘍のせいだったんだよな。全部病気のせいなんだ。なぁ、苦しいだろ? そんな妄想を考えるのやめようぜ。お前だって本当は、そんなことあるわけないってわかってるんだろ? ん?」
俺の大バカ野郎。妄想じゃなかったんだ。なんでそんなこと言ったんだ。
苦しんでるのが見えなかったのか。そいつは間違ってなんかなかったんだ。
俺は吐く。もうオレンジジュースも米粒も出てこなくて、出てきたのは泡立った胃液だけだった。看護師が背中をさする。
「物凄く変なことが、物凄く普通に起きちゃったら、それが例えどんなにおかしなことでも、受け止めるしかないんだ。どんなに『こんなこと起きるわけがない。間違いだ』って叫んだって、起きちゃったらどうしょうもないんだ。『あれは夢だ』『あれは記憶違いなんだ』、そうやって現実を受け入れるしかないんだ。さもなきゃ、現実に噛みちぎられるはめになるんだ──もしも俺が現実を噛み返して、現実の方がおかしいって言い続けたら、現実が消えて、お前も消えちゃうかもしれない。俺、俺が頭おかしいってことでいいから、お前を受け入れようって、そう思って。そうしたんだ。毎日毎日自分に言うんだ。俺の頭はおかしい。俺の頭はおかしい。俺の頭はおかしい。だってそっちの方がずっといいじゃないか。1人ぼっちでいるより。お前の持ってきた過去の方がずっといいじゃないか。俺は俺の世界を全部捨てて、お前がいる世界の方を選んだんだ。お前を選んだんだよ」
俺は喉を抑える。看護師が背中をさすり、大丈夫ですかと声をかける。
喉がストローにでもなったみたいだ。同じなんだ。俺も林田も。同じ選択をしたんだ。
過去の俺は林田の前で長いため息を吐いた。半笑いで言う。
「あのな、林田。お前の見ている世界はお前だけの世界で、俺や他の人たちにとっては荒唐無稽な妄想でしかないんだってば。客観的になって、お前の世界と俺の世界、どっちが現実的かを比べてみろよ」
林田の顔が紙を握りつぶしたようにぐしゃぐしゃになった。
「お前は最初からいなかったんだなぁ。俺がいてほしいと思っていただけで」
「薬を飲んで寝ろ。脳の炎症が引いて、妄想で苦しまなくて済むって医者が言ってただろ」
俺はサイドテーブルに置きっ放しになっていたオレンジジュースとコンビニのおにぎりに手を伸ばす。見舞客が置いていったものだろうと俺は思っていた。
「食わないならもらってくわ。病院食薄味でさ」
俺は立ち上がった。
「一眠りしたらまたくるよ。その時には薬も効いてると思うし。あ、そうだ。今日、お前の彼女さんが俺のお見舞いにもくるって言ってたんだった。じゃあ後で2人でくるから」
俺はニコニコと笑いながら、陽気に手を振って病室を後にした。
俺は吐瀉物の入った容器を見る。オレンジジュース。米粒。溶けた海苔。
なんだよ。これ。ほんのちょっと前の過去じゃないか。ほんのちょっと前じゃないかよ。
ドアを閉める間際に林田が言った。記憶の中にある、最後の林田の言葉。
「名前くらい、ちゃんとつけてやればよかったな」
俺はスツールからずり落ちる。看護師が何か言っている。
膝をついて体を丸める。額を床に擦り付ける。自分の名前を叫ぶ。でも口から出てきたのはただの悲鳴だった。
俺は自分の名前を叫び続ける。でも俺の名前が俺には聞こえない。俺にだけじゃない。誰にも聞こえてない。俺には名前なんて最初からないからだ。
「なんで今死ぬんだよ! なんでだよ! お前が正しかったってわかったんだぞ! どんだけタイミング悪いんだよ! 間抜けっ!」
廊下からバタバタと足音が聞こえてきて、マッチョな看護師が俺を抱え、車椅子に乗せた。そのまま車椅子は病室からでて、廊下を走る。
「離せよ! ふざけんな! 離せよ!」
精神的錯乱。一時的な混乱。ショックによるパニック状態――色々な単語が頭の上を飛んでいく。車椅子は俺の病室に戻り、俺はベッドに寝かされ、布団をかぶせられ、押さえつけられ、何かを注射される。意識を失う。
目が覚めた後。俺の脳の精密検査が行われ、腫瘍が見つかった。
テニスボール大の腫瘍。ほぼ末期。数ヶ月前から静かに進行していたというそれが、ほんの数分前に出現したものだと、俺は知っている。
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