第3話実力試験

「まずは採用試験を受けてもらうわよ」


「えっ、アンタから誘ってきたのに試験あんの?」


「面接は免除してあげるから我慢して頂戴。てか試験って言っても、アナタの実力を見させてもらうだけよ。使えるか否かをね」


「マジかよ……」


てっきり無条件で即採用だと思っていたのに、面倒くさくなってしまった。


「試験は簡単よ。ウチの特訓プログラムのレベル1をクリアできたら合格よ」


「レベル1ねぇ、なら楽に済みそうでよかったわ」


「何言ってるのよ、アナタの実力を見るって言ってるじゃない。レベル5くらいまではやってもらうから」


「それはすごく嫌だな」


「文句言ってないで行くわよ、トレーニングルーム」


「はーいはい、行きますよー……はぁ」


☆★☆★☆


「おぉ、ひろー。これがトレーニングルームかー」


俺が案内されたトレーニングルームは、かなり広かった。


ちなみにエレベーターを下ったから多分地下だと思う。


トレーニングルームの中には1辺が10メートルずつくらいの個室がたくさん用意されている。


また、部屋はガラス張りなので中がよく見える。


「あれ、みんな部屋の中で1人で動いてるけど、何してんのアレ?」


「みんな架空の相手と闘ってるのよ」


「みんなアタマが残念ってことでいいのか?」


「いいわけないでしょ……。みんな映像と闘ってるのよ。部屋の中に入れば見えるわよ」


ふーん、意外とすごいことしてるな。それなら怪我とかもないだろうし。


「ちなみにあの人はレベル1と闘ってるわね。ウチの新人よ」


「レベル1か、相手はどのくらいの強さなんだ?」


ちなみにその新人くんは、すごく単純に殴ったり蹴ったりの動作をしている。すごい弱そう。


「レベル1はその辺のチンピラくらいの強さよ」


「チンピラァ?」


「それで、レベル3で相手が超能力を使い始めるわ。レベル5をクリアしたら初めて実戦投入ね」


超能力ってなんだよ……それ……。


「いやまて、てことは、レベル5がクリアできなければ働かなくていいのか⁉︎」


「そうね、その代わり給料は2割よ。しかもレベル5がクリアできるまで、ひたすら訓練漬けになるし。休む暇なんてないわよ」


「なんというブラック企業だ……」


「だからレベル5までは早い内にクリアして欲しいのよ。ま、何も最初から勝てなんて言わないけどね」


「まぁ、じゃあ早くやろうぜ?レベル5」


「……話聞いてた?いきなりレベル5とか普通無理よ?レベル5はその内クリアしてくれればいいから」


「でもレベル5を倒せば、仕事減るんだろ?だったらさっさとやった方が得だし」


後が楽になるし、多少面倒でもやっといた方がいいだろうしな。


「知らないわよ?レベル3ですらみんな苦労するんだから……」


「構わん構わん。きっと大丈夫だろ」


俺はそう言いながら、1つの空き部屋に入った。


「じゃあ、始めるわよ。……本当にレベル5でいいのね?」


「うん、それでいいわ」


「じゃあ、3秒間目をつぶって頂戴」


俺は目を閉じた。3、2、1……


「おぉう⁉︎なんかいる!」


目を開けた俺の前には、人間の形をした黒い影が立っていた。これが相手かな?


『レベル5、スタートです』


機械的な声が部屋の中に響く。


そして、それと同時に影がこちらに近づいてくる。ゆっくりと、一歩ずつ。


「あれ?アイツの手、なんか燃えてね?」


影は手に炎を宿している。触れたら火傷じゃ済まなそうなくらいに燃えている。


「うわー、意味わかんねー。早く終わらそ」


俺はコッチから一気に影に近づき、足払いをした。


影がそのまま地面に倒れたので、頭に思いっきりカカト落としをお見舞いする。


すると影の頭がグチャッと嫌な音を立て、影が消えた。


『レベル5クリアです。おめでとうございます』


あれ?これで終わり……?


……弱っ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カニバリズム パンのみみ @pannomimi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ