第2話人喰いの証拠
「失踪事件の解決が仕事って、どういうことだ?バイトって探偵かなんかか?」
「探偵じゃないわ。そもそもあれは失踪事件なんかじゃない。あれは……殺人よ」
「殺人?じゃあなんで死体がないんだ?見つかるものは血痕だけだって聞いたぞ?」
「食べて……いるのよ……」
「は……?」
食べる?人が、人を?
「流石にその冗談は面白くないぞ?」
「冗談なんかじゃない……。最近になっていろんな所に人喰いが出現するようになったの」
「人喰いって……まぁ、100歩ゆずってそうだとして、骨は?どこにもないんだろ?」
「肉だろうと骨だろうと内臓だろうと、ヤツらは食べるわよ?」
「そんなわけがないだろ?付き合いきれんし、もう帰っていいか?」
「待って。防犯カメラに映った映像を見れば真実がわかるわ。まずはその目で確かめて欲しいの」
「防犯カメラの映像なんて、どこで見るんだ?」
たかが女子高生にそんな物をどうこうできる権限なんてないはずだ。
「着いてきて。真実を知る勇気があるのなら」
普段なら面倒だし直帰するところなのだが、なんだか少し気になってしまったので、素直に着いていくことにした。
「……てかさ、アンタ誰?」
そう言えば今まで話していた相手の素性を全く知らないことに気がついた。向こうは俺のことを知っているようだが。
「アタシ?今更って感じね。まぁいいわ、アタシは隣のクラスの
「へー、そうですか」
「なによ、アンタから聞いといて。ほれ、そんなことよりとっとと行くわよ」
「あー、はいはいはいよっと」
☆★☆★☆
その後、俺はなんだか高そうな車に乗せられたと思ったら、ちょい小さめのビルに到着した。
「着いたわよ。じゃあ早速だけどモニター室に行くわよ」
「えー、もうここまで来るので疲れたし……」
「なに言ってるのよ、アナタ車の中でずっと寝てたじゃない」
「車なんて揺れ心地が丁度良すぎて、絶対寝るだろ。俺なら多分、運転席でも寝れるぞ?」
「それは事故で永眠できるわね。ホラ、もう行くわよ」
「はーい、ふぁー……」
羽成についていくと、ビルに入ってすぐ近くにある部屋に案内された。
大きい液晶がたくさんあるし、ここがモニター室なんだろう。近くてラッキーだ。
「じゃあ、これを見てもらうわ」
そう言いながら、羽成は片手に持っていたビデオをビデオデッキにセットした。
「随分アナログなんだな。結構ボロみたいだし、そのビデオデッキ」
「あんまりこんなとこにお金かけてらんないのよね。アタシだってホントはもっと最新の機材を導入したいのよ」
ビデオデッキはキュルキュルと弱々しい音を立てながら読み込み作業をしている。
たまにガコン、という音がするのがなんだか少し頼りない。
「ほら、そろそろよ。寝ないでしっかり見なさいよ?」
「善処するけど、ムリだったらそん時はすまんな」
ビデオデッキの努力の結果、遂にモニターに映像が映った。
モニターの中は夜で、人気のなさそうな細い道に高校生くらいの男女のカップルらしき人達が映っている。
『隼斗くん、アタシ……』
女子の方が顔を赤らめている……ように見える。
男子の方はというと、どことなくデレデレした様子が伺える。
『美紀ちゃん……』
2人は、その場でそっと抱き合った。
……なにこのラブコメ展開。ビデオ間違えてない?
そんなことを思っていたら、不意に映像の中の男子が倒れこんだ。
「ん?どうしたんだ、彼?てかあれ何?」
映像をよく見ると、女子は手に少し大きめな何かを持っていた。
「あれは、心臓よ。そこの男の子のね」
「いやいや、そんなわけがな……⁉︎」
映像に映る倒れこんだ男子の周りに、どす黒い血液がどんどん流れ出していく。
「おいおい、マジかよ……」
そして女子はというと……手に持っていた心臓に、かぶりついた。
『グチュ………ブチュ……ん……!』
「……っひ⁉︎」
心臓を食べ終え、その口を真っ赤に染め上げた女子は、自分の血液で沈む男子に近寄っていく。
そして男子の手を取り、自分の口元へと運ぶ。
『ブチィッ!……隼斗くん、おいしい……おいしいおいしいオイシイ!ヒッ…ヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』
俺はその映像を見て、戦慄した。人生で初めて、心臓がバクバクと大きな音を立てている。
「なんだよこれ……こんなの……人間じゃないだろ……」
「えぇ、彼女はもう人間とは別のナニカよ。」
女子の食事は止まらない。腕を食べ終えると次は足、その次は胴……。
本当に骨まで食べているらしい。ベキッとかゴリッとかいう硬そうな音もする。
そして、残ったアタマも平らげると、最後に地面に広がる血液まで啜り始めた。
「これで人喰いに関しては信用していただけたかしらね?ダメならまだこんな感じのビデオ、たくさんあるけれど」
「いや、もういいわ。これ以上は吐く、多分」
「あら、もういいの?男の子は18禁のビデオって大好物なんでしょ?」
「いや、グロ系の18禁は違うし。つか俺はそういうの大して興味ないから」
「あらそう。まぁでもしっかりしてよね?こいつらの駆除がアタシ達の仕事であり、これからのアナタの仕事になるんだから」
……なんだか、帰りたくなったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます