『ミツコさん』
この話は自己責任でお願いします。
呪われたくない人は絶対に読まないで下さい。
俺が生まれたのは辺鄙な場所で、田舎オブザ田舎って感じのとこだった。
子どもの頃は「これが普通なんだな」って思ってたんだけど、テレビで見る東京の景色とか見てる内に、それが同じ日本のことなんだなって気付きだして田舎がイヤになったんよ。
そんで猛勉強して、通販とかで参考書とかも買って、なんとか都心の大学に行けることになったんだわ。
もちろん田舎から出ることになるから、まぁ送迎会みたいなのは大変だった。
この村きっての快挙だとかなんとか、隣の家(って言ってもかなり遠い)の婆ちゃんが涙流しながら喜んでくれたりね。
飲めない酒も無理矢理飲まされたりしてもうドンチャン騒ぎ。
そのときに何となく「なんだかんだで、いい場所だなぁ」とか思ったりしてw
でもやっぱり都会への憧れが強かったし今更進学取り消すなんてアホだし、まぁ普通に引っ越した。
都会に出て色々驚いたことを書いていきたいけど、それは別の場所でやれって怒られそうだからやめとく。
なんか田舎民かわいいみたいなよくわからん理屈でモテたけど、それも飛ばすw
大学はギリギリでついて行ってる感じだった。
何個か単位も落としたけど留年は避けたって程度。
やっぱり見知らぬ都会の生活って楽しいことばっかりだったし、新しくできた友達もみんないい奴だったしね。
ついつい遊び過ぎちゃって・・・まぁ、それはいいや。
ともかく何とかやってって、三年の春休みになった。
さすがにオールで遊ぼうぜみたいな奴も減ってきたし、みんなゼミとか就活で忙しくなってきたし、遊びに誘うのもなぁってなって。
俺も進路とかどうすればいいか見当もつかなかったから、たまには田舎に帰ってみるかって思ったわけ。
お土産も渡したいし、久しぶりにみんなの顔も見たかったし。
そうと決まればやることもないし、さっさと帰ろうってことになった。
で、高速バスと電車と歩きで最寄り駅まで着いて、父ちゃんの車に乗せてもらって一時間くらい。
久しぶりの故郷の風景に、ちょっと涙が出てきた。
風景とか空気とか綺麗で、無性に嬉しくなっちゃった。
都会も田舎も、一長一短だなぁってガラにもなくしみじみw
そんで帰宅。母ちゃんの手料理がくそ美味かった。
ここでもちょっと涙w
それから数日、お土産話とか進路の話とか、いろいろあった。
特に進路は、農業命って感じの頑固な父ちゃんが「無理に継がなくていいぞ」とか言ってくれた。
いっそ「稼業を継げ!」とかいつもの感じでいってくれたらよかったんだけど、逆に困っちゃったよね。
じゃあ、ってことで、俺は「農薬の研究したい」って言った。
ほんと思い付きだったんだけど、なんかいいなって。
今の大学は生物関係の研究が盛んだから、そういうとこにも顔が利くって話だし。
なにより父ちゃんの手伝いにもなるしね。
そんな話をしたら、父ちゃん泣いてくれたよw
んで、話すことも尽きたある日、そういえば送迎会のお礼してないなぁって近所の人たちのとこ回ろうと思った。
隣の婆ちゃんから色々、知ってる家には全部行った。
後はもう、ともかく全部。みんないい人だった。
よく田舎の人は優しくて、とか言うけどさ、あれってホントだよ。
で、まぁ。
色々見て回って、小山の入口を見つけたのがマズかった。
そういえば子どもの頃、ここは入っちゃダメだよ、とか言いつけられてたの。
そうだよ、入った。
明らかに人が歩く感じじゃない道だったから、それ見て逆に「子どもには危ないから近づけないようにしてたんだな」とか変に納得してさ。
大人になったんだから大丈夫とか、ほんとバカだった。
道中は見たことないような草とか木とかいっぱいあって、まさに獣道だった。
でも、かすかに見えるんだよ。迷わないように、ぽつぽつ看板があってさ。
誰かは来てたんだろうね。きっと今でも。
結局三十分くらい歩いて、看板の場所についた。
たぶんミツヌマって読むのかな。身津沼って書いてあった。
でも沼なんてなかったよ。
ただ開けた場所って感じで、ぬかるんだ泥がたまってるだけだった。
途中から気付いてたんだけど、明らかに何か腐った臭いしてた。
その時点でやめとけばよかったんだけど。
友達に土産話でも持ってかないとなぁ、て考えててさ。
それで、何もないじゃんって歩いてたら、何か爪先にぶつかったんだ。
石だったんだけど、明らかに人工物なんだわ。
何となく、墓石とか石碑とか、そういうののてっぺんだけ泥から出てるのかなって思った。
で、無性に気になって、シャベルも何もないのに掘ってみようって。
いま思うと、あの時点でおかしかったのかな。
泥だらけの指先が痛くなって、はじめて血が出てるって気付いたもん。
で、それだけ。
なにやってんだろ俺って急に冷静になって、普通に帰ったわ。
んで、それから何事もなく帰省も終わって、また関東に戻った。
それから、すぐだったな。
例の身津沼の臭いが、あちこちでするんだ。
最初は呑気に構えてたよ。下水が臭いなんて時々あることだし。
でもなぁ。
なんか、腐った女みたいなのがいるんだよ。
俺もう、ダメかもしれない。
幻覚なんてもんじゃないよ、あれ。
父ちゃん母ちゃんに身津沼の話聞いても知らないっていうし。
どうしたらいいんだよ、ほんと。
父ちゃん、ごめん。
農薬の研究とか難しいかもしんない。
ソイツさ、今もいるんだよ。
さっきコンビニ行こうとしたら、玄関からあの臭いがするんだよ。
たぶん外にいる。出られない。
警官呼んでも誰もいないとかさ、何なんだよ。
なぁ、俺どうしたらいい?
あ、やばい。
なんか、この部屋まで来てるんだけど。
腐った水の臭いが。
やb
――以上が、彼から送られてきた最後のメールです。
ここで出てきた「友達に土産話」というのは私のことです。
地元であった変な話ということで、彼からこの話を聞きました。
純粋に、興味深いことだと思って聞いていました。
そして彼が亡くなる一日前、このメールが届きました。
いったいなんなんだろうって思ってましたけど、困ったことになって。
数日前から、腐った臭いを感じるようになってしまったんです。
彼は死の直前に、父親へ電話したそうです。
ミツコさんが来る、とかなんとか。
そして、部屋の中で水死体で死んでいたそうです。
彼のように死にたくない。
だから、この場に転載させていただきました。
今も汚水の臭いがするけれど、もしかしたら、これを読んだあなたの方に行くかも知れません。
できれば、これを拡散してください。
そうすればミツコさんもどこに行けばいいか分からなくなるかもしれませんから。
昔にみた映画の真似ですが、効果があるなら何でもいいんです。
それではみなさん、失礼しました。
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