六月第三週 木曜日 決戦の後で
あの後、教室に戻った俺たちを迎えてくれたのは、本西さんだった。緑さんのカバンを持って、教室の前で待っていてくれたのだ。その時、本西さんも『エル』を辞めたことを聞いた。あの騒動の後、そのままサークルに残りたいと思える人のほうが少ないだろう。
俺はこれから、緑さんと渡部さんに会うことになっている。
『Noisy myna』の協力者の顔合わせをするように、俺がセッティングしたのだ。
この会合は、二人のためでもある。
緑さんはサークルを辞めて、一気に交友関係が減ったはずだ。
本西さんや同じ学部学科の知り合いもいるにはいるだろうが、サークルなどをやっていなければ別の学部の知り合いも中々増えない。それでは、せっかくの大学生活がつまらないだろう。
これは渡部さんにも言えることで、授業中は相変わらず、俺以外だと先生か金田先輩としか口を利いていない。
コミュロスは相変わらず健在だ。緑さんという知り合いを通して、もう少し他人と話してもらいたかった。プログラミングに興味のある緑さんとなら少しは話も合うだろうし、女の子の知り合いを増やすべきだ。
……そしてゆくゆく俺は、二人に女の子を紹介してもらうのだ!
俺は『エル』を辞めたからといって、女の子から告白してもらうことを諦めたわけではない。
逆に、今はその思いがより一層強くなっている。
俺は、やっぱり『告白』できなかった。
昨日、俺が緑さんに惚れていたと言えたのは、もうその恋が終わっていると俺自身が強く認識していたからだろう。緑さんの手を握り、教室から連れ出したときも、まったく何も感じなかった。
『惚れていた』と自分でも過去形で話していたし、失くした想いなら、出し切った気持ちなら、口にできるまでに、俺の病も治ってはきているらしい。
だが、だからといって俺が何もしなくていいとは思わない。俺は俺で、女の子に告白されるために準備すべきだ。
たとえ自己満足だと言われたとしても、あのとき抱いた俺の緑さんへの想いは、本物だったはずだから。
だから次は、女の子から告白してもらって、彼女を作って想いを遂げるのだ!
そして、彼女を作るために、最も必要なものは『出会い』だ!
この考えは、俺が大学に入学したときから変わっていない!
あと一ヶ月もすれば単位取得のための試験があり、試験が過ぎれば夏休み! 夏といえば、そう! 出会いの季節っ!
俺は大学生活に賭けたのだ! サークルはダメだったが、絶対に俺は、大学生のうちに女の子から告白されるぞっ!
そのためにはまず、緑さんと渡部さんに仲良くなってもらわないといけない。そして女の子を紹介してもらって、『出会い』を増やさなくてはいけない。
既に大学生活の八分の一が終わってしまいそうだが、だからといってここで引き下がるわけにはいかないのだ!
夏休みは、海に行くのがいいのだろうか? 山に行くのがいいのだろうか?
そうだ。バイトという手もあるじゃないか! 別に『出会い』の場を大学内に限定する必要はない。
もっとアグレッシブに、全世界中の肉食系女子の捕食対象を、俺は目指すべきだ!
告白できないのに、何を言っているんだと思われるだろう。
それどころか、また緑さんのように好きになって、告白できず嘔吐することになるんじゃないかと思う人もいるだろう。
俺なんかが『出会い』を求めて、本当に意味なんてあるのかといわれるかもしれない。
確かに俺は、自分から告白することができない。
告白なんて、できっこない。
でも、だからといって俺は『恋愛』することを諦めたわけではないのだ。
愛はいい。恋はいい。
俺は二次元にはいけなかった。俺は三次元でも失敗した。
傷つき、嘔吐し、泣き喚いた。鼻水だって流した。
それでも俺は、生きているのだ。
ひょっとしたら、俺はまた別の誰かを好きになるかもしれない。
その度に、また傷ついて、嘔吐して、泣くのかもしれない。
でも、それでもいいのだ。俺はもう、覚悟した。
傷つけられても。裏切られても。それでいいと。
俺の想いは理不尽で、不条理で、身勝手で、誰かを傷つけてしまうかもしれないから。
俺の想いは、自分の想いをぶつけることしかできないから。
だから、自分が傷つくのを覚悟している。
それでも、傷つけられれば、きっと俺は泣くだろう。
それでも、裏切られれば、きっと俺は泣くだろう。
それでも俺は、恋をする。
告白なんて、できっこない!? ~それでも俺は、恋をする~ メグリくくる @megurikukuru
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