中国の英国租界風の舞台設定が好みで読み始めましたが、情景描写の美しさに、まず引き込まれました。
地の文章がとても丁寧な言葉で書かれているので、慣れるまで、少し時間がかかりましたが、ヒロインの目線で書かれているこの物語は、その丁寧過ぎる文章こそが、彼女の純粋さと巧みにリンクしているんだな、と気づいて、ああ成る程と思いました。上手い。
そして、そんな夢のような世界の住人だった彼女に、大好きな『お兄さま』の結婚という事件が突き付けられ、現実世界へ出ていくことを余儀なくされる。読み進めていくと美しいばかりの物語でないことがわかります。
かつて、少女小説に胸をときめかせたことのある方に、ぜひオススメしたい一冊です。
中近世の中華風……というか香港・上海風のお話。
タイトルからとてつもなく甘い香りが漂っているわけですが、一話目を開くと予想通り、リリー・メイとエドワードお兄さまの甘いやりとりが繰り広げられていて、読んでいる方はとてもニヤニヤしてしまいます。
しかし、話が進むにつれて明かされる舞台背景や真実は、気が遠くなるほどの悲しいもの。次第に登場人物の関係はままならなくなっていきます。
それでも葛藤し、心から望む幸せに手を伸ばそうとする彼らの姿に、気が付いたら読者の心は掴まれているのではないかと思います。
実は別サイトで全て読んでしまっているのですが、もしやこの展開は「恋は苦い味がするとか」のタイトルを意識しているのかなと、このレビューを書いていて思いました。
キャッチコピーも最初は違うものにしてたのですが、書いている途中で変更しました(笑)
とにかくこのお話からは感じさせられることがすごく多く、またあらゆる面において学ばされます。
オススメの一作です。