第31話 託児所殺人事件 エピローグ

 後日談。

 というかネタばらしである。


 流石にポンコツ刑事もジーンズが凶器であったことに気が付き、その場で検証を始めた。

 というか始めようとした。

 脱がせようとした。

 その場で。

 その段階で、お兄さんは降参して自白をした。


 殺害目的は痴情のもつれだった。

 被害者とお兄さんは付き合っていたらしい。

 でも被害者が唐突に別れを切り出したために、頭に血が上って殺害をしてしまったということだ。まあよくある動機だ。


 お兄さんは即逮捕され、事件は解決した。



 ……因みに。

 あんまり補足したくないのだが、矛盾していると思われたくないので、仕方なく補足する。

 中には疑問に思う人もいるだろう。

 怒りのあまり、咄嗟にジーンズで首を絞めて殺害する。

 おかしいと思わないか?

 そこらへんにシーツとか、何より自分の手とかあったのに、どうしてジーンズなのか?

 ジーンズを使用しようとするのであれば、頭に血が上った状態で脱いで絞めるしかないが、脱いでいる間に流石に頭も冷えるだろう。

 ならば、結論は一つしかない。


 彼はのだ。


 だから手近にあった道具で殺害せしめた、ということである。

 それならば突発的にジーンズを使ったことにも納得できる。

 最近のジーンズは丈夫だね。昔のジーンズがどうだったか知らないけれど。


 ……逃げるのは止めよう。

 さっさと結論を述べよう。


 何故ジーンズを脱いでいたのか。

 その疑問への回答は簡単だ。

 脱ぐための行為をしていたからに他ならない。

 逆だ。

 、という方が正しい。

 要するに彼らは、託児所で「駄目っ……赤ちゃんが見てるっ……」をしていたのだ。

 快楽を貪っていたのだ。

 業務中に。

 利用する客が少ないとはいえ、よくやるよ。

 その危うさに興奮を覚えていたのだろうか。

 変態め。

 あと、女性の衣服に乱れが少なかったことについては、きっと女性は服だけずらして……って、そこまで述べる必要はないだろう。生々しい描写は避けたい。

 まだ赤ん坊だし。

 本当はそんな知識ないはずだし。

 ……あったから、目のやり場に困ったのだけれど。


 ということで。

 事件は解決した。



 ついでに余談だが。

 託児所はアルバイトが一気に二人減ったこと、利用客の少なかったこと、という状況から、事件をきっかけに閉鎖されることとなった。

 本当にニーズが無かったのだろう。

 母親は「えー。便利になると思っていたのにー」と嘆いていた。

 ……いや、あんな事件遭ったんだから誰も預けないだろうさ、大切な子どもを。だから経営陣の対策はひどくスピーディで正しいと私は思っている。ナイス偉い人。エロい人は被害者と加害者だったけど。エロい人とは違って、いい判断をしたよ偉い人。私は少なくともそう思っている。

 もっとも、私個人の意見がどうなるとは思えないが。

 赤ちゃんだし。


 そんなこともあり、私は事件の所為でモールに行かないこととなった。

 というか、行けなくなった。

 まあ、家で待機している方が、近いし、いいのであろう。

 今回の件を受けて、母親はまたきちんと学習したということだ。

 よいことだ。

 あのポンコツ刑事も少しは学習してほしいものだが。

 何故かまた遭いそうな嫌な予感がするから、少しだけ願いをこめておく。

 期待はしていないが。



 さて。

 そんなこんなで、私は家に残されることが以前より増えた。

 それ故に――



 私に、とある試練が訪れることとなる。

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