第19話 託児所殺人事件 02

 ガシャン

 バリン

 ドカドカ




 ……嫌な目覚ましだ。

 不快な目覚めだ。

 ここまで壊滅的な目ざましは母親が鍋を焦がした時くらいだろう。あれは匂いもやばかった。

 しかしどうしたものか。

 目を見開いてみたものの、電気がまぶしくてよく見えない。

 なのでゆっくりと時間を掛けて目を鳴らしたのだが、生憎、不快な音を奏でていた存在はいなかった。

 逃げた後だった。


 ……ふむ。


 改めて周囲を見回す。

 窓は割れており、棚は滅茶苦茶。唯一、私のいるベビーベッドに何も異変がないことが幸いだ。流石に寝ている時に襲われたらひとたまりもない。他のベビーベッドも荒らされていないことが不思議だ。


 そして目立つのがただ一つ。


 入口付近。

 無人の、別のベビーベッドの近く。



 そこにいる――いや、と言った方が正しいだろう。



 紫色に腫れ上がった顔の女性。

 私が寝る前までは溌剌で、むしろ白い肌の元気だった彼女。

 今はピクリともしていない。

 乱れていなくてきれいなエプロン付きの衣服は、動く様子すら見せていない。

 加えて、白目を剥いて泡を吹いている。

 心なしか、数か月前の私のように首がすわっていないようにも見える。

 要するに、だ。



 

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