249話 『宴』の終わりに

 小癪な……いや、小粋なサプライズを仕掛けられ、なんだか調子を狂わされた俺なわけだが、なんというか、こういう敗北感はちょっと悪くない。

 久しぶりに食べたゴリの唐揚げは、女将さんの手料理を思い起こさせるような懐かしい味だった。


 俺にこれを食わせるために、ここにいる連中がグルになって準備してたってわけか。

 これで、ちゃんちゃん焼きの急な大人気にも納得がいった。


「お前らが準備する時間を稼ぐために、デリアはわざと遊びに出て、一人残された妹を誰もフォローしなかったんだな」

「あの、いえ……それが……」


 ジネットが困ったような顔で微笑む。

 ん? 違うのか?


「本来なら、もう少し後になってから始める予定だったんだよ」


 困り笑顔のジネットに代わり、淡いライムイエローのドレスを身に纏ったエステラが説明を始める。

 ……お前、異様に似合うな。お嬢様みたいだぞ。

 あ、お嬢様なのか。


「マーシャとメドラさんの着替えには時間がかかると踏んでいたから先に準備してもらっていてね――」


 まぁ、水中とあの筋肉だもんな。ドレスを着るのは難しいだろう。


「それで、それが済んで、こっちもいろいろ一区切りつけてから頃合いを見計らって――って作戦だったんだけど……」


 嘆息と共に、エステラの視線がデリアへと向かう。

 それにつられるように、他の者たちの視線もデリアへ。


「違うんだよ、みんな! あの子がな、他のみんなは上手に竹とんぼ飛ばしてるのに一人だけ全然飛ばなくてさ。なんか泣きそうでな、こう……見てらんなくてさぁ」


 懸命に言い訳をするデリア。

 つまり、デリアが飛び出したのは予定外の行動……というか、デリアなりの正義感からの行動だったわけだ。

 店より泣いている子供、か。まぁ、デリアらしいけどさ。


「そうしたら、店に一人残された彼女が困り果てて……助けを求めたのが君だったってわけさ」


 と、妹を指しながら言うエステラ。


 ちゃんちゃん焼きの屋台で泣きべそをかき、現在はビワのタルトの売り子をしている妹は、照れくさそうに頭を搔いていた。


「もう。あんたもあんたで、困ったらあたしを呼ぶですよ」


 長女であるロレッタが苦言を呈する。


「まぁ、困った時に真っ先に浮かんだのが『頼れるお兄ちゃん』の顔だったんだろうねぇ」

「なんか含むところがある言い方だな、エステラ」

「とんでもない。称賛と羨望だけだよ、今の発言に込められていたのは」


 どうだか。


「……生憎、マグダもロレッタも、その時は他の屋台にいて手が離せなかった」


 エステラの言葉を補足するように、マグダがその時の状況を語る。

 じゃあ、あの状況は予想外のことだったと。

 けれど、こいつらのサプライズ作戦は動き出してしまった。それはなぜか。


「実は、ヤシロさんがちゃんちゃん焼きかたこ焼き、お好み焼きの屋台に入ったらみなさんでブロックしていただくことになっていまして」


 ジネットがちらりと男どもを見やる。


「なるほど。それで、お前らの準備がまったく整っていないにもかかわらず、男どもが早とちりして作戦が動き出しちまったわけだな」

「ち、違うんだよ! ヤシロが一人で屋台に入ったらって言われてたから、俺はよぉ!」

「モーマットさんが動いたので、私も仕方なく」

「オォイ、アッスント!? 俺のせいだってのかよ!?」

「いやまぁ……モーマットさんは往々にしてそういう一面がありますので、おかしいなとは思っていたのですが」

「じゃあ、止めろよ!」

「いえいえ。下手なことをして作戦がバレては元も子もないと思いましてね」


 責任を押しつけ合うモーマットとアッスント。

 それが伝播して周りでも「俺じゃない」「お前が」「いや、お前が!」と、醜い責任転嫁が始まる。


「要するに、バカばっかなんだな、四十二区は」

「身も蓋もねぇな、ヤシロ!?」

「ま、四十区から来たパーシーもアホ全開で乗っかってたけどな」

「ちょっ!? 名指しやめろし、あんちゃん! 違うんですよ、ネフェリーさん! 俺は、『あれ、早くね?』って思ってたんスよ、マジで!」

「うん……でも実際、ちょっと早かったよね」

「おかげで、こっちはてんやわんやだったわよ」

「……これだからパーシーは」

「おっちょこちょいタヌキです!」

「ちょっ!? なんで俺のせいになってんだって!? マジありえないんだけど!?」


 ネフェリーに加え、パウラやマグダ、ロレッタに非難されるパーシー。

 そして、これ幸いと便乗する四十二区の男ども。


「「「「やれやれ、まったくパーシーは……」」」」

「てめぇーらふざけんなし、マジで!」


 仲いいよなぁ、四十二区の住民って。


「ったく。そのせいでこっちにまで迷惑がかかったんだぞ、オオバ」


 腕を組んで、リカルドが口をへの字に曲げている。

 恩着せがましく、これ見よがしに、おのれの身の苦労と功績をひけらかす。


「領主の相手をしていたエステラが急に持ち場を離れたから、俺が代わりに相手をしてやってたんだぞ。ま、俺も『BU』とは知らねぇ仲じゃねぇからなんとかなったが、本来なら、招待した領主を蔑ろにするなんてのは非礼を通り越して外交関係がそれで壊れてもおかしくないほどのことなんだぞ。今回だけは、俺のおかげで事なきを得たけどな」

「そうか。ルシア、手間をかけたな」

「なに、気にするな。四十二区を相手にする時はこれくらいのことは想定している」

「ぅおい! 俺を無視すんじゃねぇよ!」

「あれ、いたのかリカルド?」

「いたわ! 三十五区よりも『BU』よりも、なんなら四十区よりも先にいたからな!?」

「え…………暇なの?」

「忙しい中、わざわざ時間を作って来てやったんだよ!」

「……メドラのドレス姿を見にか?」

「誰が見たいか、あんなもん! って、あぁ違う、違うぞ、メドラ! 言葉の綾だからそんなおっかない顔をするな!」


 暇でぼっちなリカルドは、誰よりも早く会場に来て、誰にも相手にされなかったから、これ幸いとトラブルに乗じて存在感アピールを試みたらしい。

 けどまぁ、ルシアがいればなんとかなったろうし、そんないうほど必要なかったんだろうけどな。


 まぁ、そうやってメドラとじゃれ合っててくれると、俺の負担が減って助かるよ。ありがとうなリカルド。来てくれて嬉しいぜ☆

 じゃ、メドラのことよろしくな。


「まぁ、しかしだ」


 怪物に襲われるリカルドを微笑ましそうに見つめながらルシアが言う。


「『BU』の七領主も、それにマーゥルも、今回の作戦は聞き及んでいたので問題はなかったぞ」

「知ってたのか?」

「うむ。エステラが、『オオバヤシロを騙して半泣きにさせてやりたい』と持ちかけたところ、皆ノリノリで賛同していたぞ」

「……ほんっと、貴族っていい性格してるよな」


 誰が半泣きになんぞなるか。


「くっくっくっ……オオバヤシロよ」


 すっげぇ腫れた右手を庇いつつ、左手でキザったらしく髪をかき上げて、ゲラーシーが嬉しそうな顔で近付いてくる。

 ……惜しいなぁ。昔、あそこに落とし穴あったのに。埋めなきゃよかった。


「随分と驚いていたようだな。くくくっ……涙目であったではないか」

「えっと……どこかでお会いしたことありましたっけ?」

「さんざんやり合っただろうが、私の館で!」

「あぁ……ヤシロの中ではリカルド枠なんだね、ミスター・エーリンは」


 怒鳴るゲラーシーを見て、エステラがどこか達観した様子で乾いた笑いを漏らしている。


「ゲラーシー様。あの男の話を真に受けるのはおやめください。不毛であると思われます」

「……言われずとも分かっている」

「はい。差し出がましい真似をいたしました。ご容赦を」


 癇癪を起こすゲラーシーを、銀髪Eカップのイネスが窘める。

 なんかトゲがあるんだよな、あいつの言葉も。


「そう邪険にするなよ、Eカップ」

「カップ数で呼ばないでください!」

「イカプ」

「イネスだと、何遍言えば分かるのですか!?」

「あと十回」

「イネスイネスイネスイネスイネスイネスイネスイネスイネスイネス!」

「マーシャが入っているのは?」

「生け簀です!」

「残念、水槽だ」

「ぅぉおおお、騙されましたっ!」

「ヤシロ……何回か言ってるけどさ、他所様の給仕長で遊ばないように」


 銀髪を掻き毟り天を仰ぎ見るイネスと、渋ぅ~いお茶を飲み干した直後のような顔つきでよく分からないことを言うエステラ。

 給仕長って、領主のところの一番面白いヤツがなる役職だろ? いじってナンボじゃねぇか。


「ちなみに、二十三区の……Dボラだっけ?」

「デボラです…………こちらは、何度言えば分かっていただけるのでしょうか?」

「おっぱいを『むぎゅっ!』ってしながらだったら、一回で覚えられる」

「(むぎゅっ!)デボラです」

「デボラ……君はすでに騙されているんだよ。気付こうね」


 折角の『むぎゅっ!』を隠すようにデボラの正面に立ち、デボラを説得するように語りかけるエステラ。余計なことを。

 こうやって純真な心って失われていくんだろうなぁ、すれた大人たちの手によって。


「(むぎゅっ!)ギルベルタいう、私は」

「(ぶるんっ!)ナタリアです」

「もう君たちはわざわざ止めないよ!? 各自、自重するように!」


 ほらな?

 面白人間の宝庫だろう、給仕長って。


「くすくすくす……」


 小さな声に視線を向けると、ジネットが声を殺して笑っていた。

 口元を押さえて、小刻みに肩を震わせている。

 我慢しているせいか、目尻に涙が溜まっている。


「エステラのツッコミがそんなに面白かったのか?」

「へ? あ、いえ…………ふふ、すみません……そうじゃなくて……」


 必死に笑いを噛み殺し、何度か大きく息を吸い込んで、目尻の涙を拭ってから、ジネットは少し苦しそうに言う。


「あの、可愛いな……と、思いまして」


 可愛い?

 今の一連を見ての感想が、可愛い?

『むぎゅっ!』とか『ぶるんっ!』が?


「どのおっぱいがだ?」

「いえ、ヤシロさんが、です」

「俺のおっぱいが!?」

「おっぱいではなくて! …………もぅ、なんてことを言わせるんですか。こんな大勢の前で…………」


 頬をぷくっと膨らませて、俺を睨むジネット。

 いや、俺のせいじゃないだろう、今のは。

 俺の何が可愛いってんだよ。訳分かんねぇぞ。


 そんなふくれっ面も数秒しか持続しないようで、五秒と持たずにまたくすくすと笑い出した。


「私も、可愛いと思いましたよ」


 背後からベルティーナの声がする。

 見れば、ジネットと同じような顔で笑っている。


「だって、ヤシロさんは……ふふ、いつもそうですから」

「いつも? ……何がだよ」

「褒められたり、嬉しいことをされた後はいつも……照れ隠しを」

「はぁっ!?」

「自覚はないんですか?」


 からかうような目で、俺の顔を覗き込んでくるジネット。


 いや、っていうか、照れ隠しってなんだよ。

 別に、ちょっと美味いゴリを食わせてもらっただけで、なんで俺が照れたり…………あぁああ、もう! その目をやめろ!


「また一つ。ヤシロさんの新しい顔を見つけました」


 そんなことを言って、胸の中心を手のひらでそっと押さえつける。

 まるで、そこが記憶の収納場所になっているかのような手つきで。記憶を大切にしまい込むように。


 まったく。

 いつもと違う格好で――ドレス姿でそういうことをするな。


 うっかり、ときめいちゃうだろうが。


「すげぇ収納力だよな」とか、「そこの間を探れば古い記憶がよみがえるのか?」とか、「今度ド忘れした時は、俺が記憶を探してやるよ!」とか、そういう冗談を言いそびれたじゃないか。


「なんでドレスだったんだ?」

「へ?」


 冗談を言いそびれたので、素朴な疑問をぶつけて――話題を変える。この話題は、俺に不利だ。不許可だ、こんな話題。さっさと変えるに限る。


「ゴリのから揚げとドレスじゃ、なんの関係もないだろう?」


 肉まんとチャイナドレスなら、なんとなくしっくりくるんだが、ゴリとドレスだ。

 統一感がまるでない。

 なぜわざわざドレスを選んだのか。

 油跳ねしたら大変だろうに。


「それはですね……これは言ってしまっていいのか分からないんですが……」


 そう言った後で、女子たちの顔をくるっと見渡す。

 特に誰からも反論は出てこない。

 それを確認した後で、ジネットはゆっくりと真相を語った。


「『ヤシロさんが喜ぶものは何か』という話し合いをした時、一番支持を集めた意見が……その…………アレ……でして」

「アレ?」

「で、ですから……その、ヤシロさんが大好きな…………ここでは言いにくい……ア、アレです」

「…………『世界平和』か?」

「どうしたのヤシロ? 病気?」


 黙れエステラ。

 俺と言えば、世界平和の象徴だろうが。


「ですから…………」


 エステラに向かって「んべぇ~」と舌を出していると、不意にジネットが近付いてきて、あっと驚く暇もないうちに耳元に温かい息がかかった。


「……おっぱい、です」


 く……っ。

 ジネットの声で、耳元で、囁くように、しかも少し恥ずかしそうに、そんなことを言われると…………


「ジネット……おかわり!」

「懺悔してください!」


 くっそ。声フェチに目覚めそうになったわ。

 なんだよ、小声。

 結構いいな、囁きヴォイス。

 録音して目覚まし時計に設定してぇわ。


「で、ですが。さすがにそれは……お見せ出来ませんので」

「なんで?」

「せっ、説明が必要ですか!?」

「いいよ、ジネットちゃん。気にしないで続けて。黙らせておくから」


 あれれぇ~? おかしいなぁ。

 サプライズしてまでお礼を言われた直後だってのに、首筋にナイフをあてがわれているぞぉ?

 なんでだろぅ?


「それで、間を取って、ドレスなどを着てみてはどうかという意見に落ち着きまして」


 どこの間を取ればそうなるんだよ。

 おっぱいと何の間にドレスがいるんだよ。

 考えられるとすれば全身鎧くらいだぞ。


 お、そうだ。


「じゃあ、次はビキニアーマーで頼む」

「これはわざわざ言う必要がないことだとは思うけれど、念のために言っておくね。『お断りだよ』」


 隣のナイフ領主が可能性を全否定してくる。

 ビキニアーマーが生み出す利益もあったかもしれないというのに。

 っていうか、ビキニアーマーカフェとかあったら超通うのに。


「でも、あの……ちょっと、統一感は、なかったです、ね?」


 その点は、自分たちでも理解していたようで、ドレス姿の女子たちはみんなしてはにかんでいた。

 結構勢いで押し切った部分があるんだろうな。

 まぁ、突発で何かやろうったって、実現させるのは相当難しい。

 実行出来ただけ、こいつらはたいしたもんだよ。素直に称賛出来る。


「ヤシロさんみたいに、上手くはいきませんね」


 ちろっと、可愛らしく舌を覗かせて、ジネットが肩をすくめる。



 ……そんなこと、ねぇけどな。



 成功したんじゃねぇの。

 まんまと、嬉しかったし。まんまと、な。


「けど、今回の課題は次回に活かせばいいと思うんです」

「まだやる気かよ……もう十分だろう」


 なんだよ、次回って。

 俺はそんなに善行を積む予定はねぇぞ。

 そうそう人に礼を言われるような人生は歩んじゃいないんだよ。


「何か、ご要望があれば言ってくださいね」


 要望って……

 俺が「次はアレしてほしー」って言うのか?

 言うかよ、ガキじゃあるまいし。


 けどまぁ、あえて何かを挙げるとすれば……


「じゃあ、一つだけ」

「はい。なんですか?」

「さっきの給仕長の流れで、ネネだけ『むぎゅっ!』ってやってないんだよな」

「私はやりませんよ、オオバヤシロ様!? 出来るほどもございませんし!」


 俺の要望、聞き入れてもらえないんじゃん。

 やっぱ他区じゃダメかぁ。


 つか、俺のための会じゃないんだっつの。

 もうドレスとかいいだろう。


「よぉし、じゃあみんな! 折角のドレスを汚さないように着替えてきてくれ。『宴』を再開するぞ!」


 一瞬、残念そうな空気が流れる。

 だが、考えてもみろよ。

 さすがに、ドレスで屋台には立てないだろ?

 料理がいらないってんなら話は別だが、『宴』で飯無しは盛り上がらない。


『宴』の空気を再び流れさせるために、ドレス姿ではない者たちに動き出してもらう。


「ソフィー。こっちで用意した甘酒があるんだ。それを配ってくれないか」

「はい。任せてください」

「リベカも、少しの間だけでいいからソフィーを手伝ってやってくれ」

「うむ! 麹のことならわしにお任せなのじゃ。お姉ちゃんと一緒なら、なんだって出来るのじゃ!」


 仲のよい姉妹が並んで甘酒の屋台へと向かう。


「ウーマロにベッコにアッスント、ちょっと屋台を頼む」

「はいッス」

「少しの間であれば、拙者にも務まるかと存じるでござる」

「んふふ。交渉はお手の物ですよ」


 いやアッスント……ぼったくるなよ?


「それから、フィルマン」

「はい」

「……爆ぜろ」

「なんでですか!?」

「セロンと一緒に爆ぜろ」

「僕もですか、英雄様!?」


 ウェンディのドレス姿は、ホント悔しいくらいに綺麗だったし、リベカはリベカで、俺を見ても「我が騎士~!」って飛びかかってこなくなったし。もう、悔しいやら、口惜しいやら。


「じゃあ、多数決をとりま~す! 美人妻、美少女婚約者を持ったセロンとフィルマンは爆ぜた方がいいと思う人~!」

「「「「「「はいっ!」」」」」

「「圧倒的、賛成多数!?」」


 その場にいた、ほぼすべての男たちが手を上げていた。

 どうだ、フィルマン。これが、多数決の恐ろしさだ。正当性なんかどこにもない。

 作為的に、恣意的に、「羨ましいならお前らも相手探せばいいだろう!」なんて正論はひねり潰される、そういうものなんだよ、多数決ってのは!


「……多数決とは、かくも恐ろしいものなのですね」


 思わぬ場面で、フィルマン(次期二十四区領主)が現実を学んだ。

 よかったじゃないか。こいつの世代で『BU』は様変わりするかもしれんぞ。


「ダーリン! アタシはドレスのままでいるよ! 折角オシャレしたんだ……その、予行練習とか、したいし……きゃっ!」


 えっと……魔獣に精神攻撃を加える練習か?

 たぶんもう十分だと思うぞ。


「そ、それに、まだ……似合うって言ってもらってないし……もじもじ」


 ごめん。

 この街『精霊の審判』っていう魔法が存在するんだよね。

 似合うかどうかは、個人の考え方次第なんで嘘にはならないのかもしれんが……


 いや、まぁ……でも、そうか。


「あ~……ごほん。言い忘れてたが……」


 これくらいはきちんと伝えておくべきだろう。

 サプライズを仕掛けられた者として。

 驚きをもらった者として。


「みんな、とっても似合ってるぞ」


 一人一人に言及するのは無理だ。

 俺の背骨がサバ缶のサバの骨並みにボロボロになっちまう。

 今でさえむずむずしっぱなしだってのに。


 みんな一緒に、というふわりとした称賛ではあったが、ドレスを纏った女子たちはくすぐったそうにそばにいる者と笑い合っていた。

 もういいから、ドレス脱げよ。

 こっちもくすぐったくてしょうがねぇんだっつの。


「うふふ。いいじゃないの、ヤシぴっぴ」


 小ジワの目立つ顔を緩ませて、マーゥルが目を細める。


「みんな、あんなに素敵なんだもの。今日くらいはこのまま、ね?」

「いやでも、『宴』にドレスって……」

「あら。ヤシぴっぴは、そんな形式にこだわるような頭の硬い人だったかしら?」


 形式にこだわるっつうか、ドレスが汚れたらどうすんだっつぅか…………なんかいろいろ目のやり場に困るんだよ。どいつもこいつも目が合えば「どうかな、このドレス?」みたいな顔しやがるからよ。

 ……とにかく、こう、落ち着かねぇんだよ。このままじゃ。


「ドレスは女の子の夢ですもの。今日くらいいいじゃない。ね?」

「…………」


 マーゥルの言葉を聞いて辺りを見渡すと、どいつもこいつも名残惜しそうな顔をしている。


 まったく……

 目に見えるようだぜ。お好み焼きのソースをべったり付けて「はぁあああ!?」って叫んでるロレッタの顔が。

 他のヤツらだって、動き回ればスカートの裾は泥だらけになるし、シワになるし、汗だって吸い込んでシミになるだろうし……


「腕のいい洗濯屋がいるなら、今のうちに予約しとけよ」

「はい。では、わたしが懇意にしている素晴らしい洗濯屋さんをご紹介しますね」


 そんな会話で「わっ」と歓声が上がる。

 あ~ぁ、ったく。『宴』で、屋外で、ドレスの美女が屋台で麻婆豆腐を作る。日本じゃお目にかかれない光景だよな。


 四十二区らしいっちゃ、らしいけども。


「じゃあ、綺麗なお姉さん方。お仕事お願いします」

「「「「はーい!」」」」


 冗談めかして言うと、ドレス姿の美女たちが持ち場へと散っていく。

 優雅に翻るドレスのスカートとは対照的に、働く女子たちの動きは機敏で、そこにある光景は非日常的なものだった。


 こんな感じだったのかなぁ。

 こいつらが見ていた景色って。


 当たり前にそこにあったものが様変わりして、常識だと思っていたものとはかけ離れた現象が起こって……それがなんだか、面白い。


 くそ。

 だから、俺のための会じゃないんだっての。


「うふふ。羨ましいわね」


 ドレス姿で仕事をする女子たちを見て、マーゥルが静かに囁く。


「若さがか?」

「まぁ、失礼ね。私だって、まだまだ捨てたものじゃないのよ?」


 骨董品が好きなヤツもいるもんな。

 どこかの領主の一本毛とか。


「そんなに羨ましいなら、結婚式でも挙げて、純白のドレスでも着たらどうだ」

「そうね。どこかに素敵なお相手がいれば、それも悪くないわね」

「ごほっ! ごっほごっほっ!」


 会場にゴリラが紛れ込んだらしい。

 とある一本毛がゴッホゴッホと鳴いている。


「うほほー!」


 いや、「うほほー」はおかしいだろ。

 なんでゴリラに寄せんだよ。大人しくむせてろよ。


「でも、そうじゃなくてね」


 マーゥルが俺の眼前に指を突きつける。


「羨ましいのは、あなたよ。ヤシぴっぴ」


 そして、いたずらを思いついた少女のような意地の悪い笑みを浮かべて。


「理由は、教えてあげないわ」


 そう言って去っていった。

 ……勝手なヤツだ。

 どうしてくれんだよ、俺のこの、行き場のない気恥ずかしさを。


 あぁ、もう!


「よぉし、お前ら! 今日は領主の奢りだ! 盛大に飲め! そして食え! おまけに歌って踊れ!」

「「「「ぅぉおおおおおっ!」」」」

「ちょっと待って! 聞いてないよ、そんな話!」


 慌てるエステラ。

 そりゃ、これだけの人数に飲み食いされちゃ堪ったもんじゃないよな。

 けどな。


「大丈夫だエステラ。頼れる領主のリカルドさんがいるじゃないか!」

「そうか! さすが先輩領主のリカルドさんだね!」

「おぉい、テメェら! こんな時ばっかり調子のいいこと抜かしてんじゃねぇぞ、オオバ、エステラ!」

「え~っと……『何かあったら、四十一区も全力で力になる』だっけ?」

「てめぇ、いつの話をしてやがるんだ!?」


 手早く会話記録カンバセーション・レコードを呼び出して、リカルドが陽だまり亭に来た時の会話を呼び出す。

 確かこれは、トレーシーたちが陽だまり亭でアルバイトをしていた時の会話だな。


 会話記録カンバセーション・レコードには、こんな会話が記されている。



『お前らが、「BU」の連中に目を付けられたって聞いたからよ……まぁ、俺たち四十一区も原因とされているパレードに賛同した身だから、その…………何かあったら、四十一区も全力で力になる。それを伝えに来たんだよ……俺ら近隣三区は、同盟みたいなもん……だから、よ』

『リカルド。まだ開店前なんだ。用が済んだなら帰れ』



「改めて見ても酷ぇよな、お前は!?」

「俺は正論しか言っていない」

「こんな対応されて、何が同盟だ! 都合のいい時にばかり使いやがって!」


 なんと言おうが、会話記録カンバセーション・レコードに記録されているのは事実だ。

 何かあったら力になってもらおうじゃねぇか。


「ちなみに、『俺ら近隣三区は、同盟みたいなもん』らしいから、デミリーもよろしくな」

「わぁ、とばっちり! とばっちりだよ、リカルド! 君のせいで酷いとばっちりだよ、まったく!」


 デミリーがリカルドに詰め寄っていく。

 お前らの金なんか、誰かに奢るために存在しているようなもんだろうが。楽して儲けてるくせに。


「それに、偶然にもここにはまだまだ領主がいるからな」


 ちらりと視線を向けると、『BU』の七領主が分かりやすく後退しやがった。

 ……逃がすかよ。


「トレーシー。エステラのピンチを救えるのは、お前の――愛だ」

「お任せください! 湯水のように注ぎ込みますとも!」

「ドニス…………腕のいいドレス職人を知っているんだが」

「さぁ、折角の『宴』だ! 民たちよ、盛大に騒ぐがいい!」

「ゲラーシー」

「……なんだというのだ」

「払え」

「もうちょっと策を練ってはどうなのだ!?」


 残りの領主は、「今度泊まりに行ってもいい?」と質問したら、みんな快くお金を出してくれた。さすが貴族だ。金持ちはこうあるべきだよな。


 そんなわけで、他人の金と分かった瞬間、会場のボルテージは一気に上がり、酒も食い物も飛ぶように売れまくった。


「ゲラーシー、食ってるか?」

「無論だ! 自分たちの金なのだからな! 人一倍食ってくれるわ!」

「底意地の汚い……」

「なんとでも言え!」


 憎まれ口を叩いた後で、ふと、ゲラーシーが真剣な表情を見せた。


「今さらどうあがこうと、姉上のような人間にはなりようもない……」


 それは、諦めとも違う清々しさを含む声で。


「なので、私は私らしく生きていくことにしたのだ。周りの顔色を窺うこともなく、伝統に縛りつけられることもなく、今自分が思う最良の選択を躊躇いなく選んでいける――そんな領主に、私はなる」


 俺にまんまと一杯食わされた己の脇の甘さを悔い、それを克服してみせるという宣言に聞こえた。

 まぁ、要するにあれだ。


「俺に憧れて生き方を変えるってことだな?」

「バカも休み休み言え!」


 とは言いつつ、明確な否定はしなかった。

 もっとドニスやマーゥルと議論を重ねるといい。それだけで、お前は大きく変化するだろう。

 経験は、何物にも代えがたい宝だからな。


「だがまぁ……貴様と会う機会は増えるかもしれんな」


 そう言ったゲラーシーの目は、贔屓目を抜きにしてみても、俺の力を認め称賛しているように見えて…………ちょっと気持ち悪かった。


「いや、窓口はマーゥルだから」

「二十九区の領主は私だぞ!?」

「領主の話ならエステラにどうぞ」

「そんなあからさまに嫌そうな顔をするなっ!」


 もう……なんで懐かれてんだよ、俺。

 え、なに、こいつ、限界まで追い詰められたせいで何かに目覚めちゃったの?

 やめてくれよ。それは俺の管轄外だ。


「まったく。つくづく不愉快な男だ」

「お互い様だろうが」

「ふん! ……ここで一番美味い物でも食べて、気分を変えてくるか」

「麻婆豆腐か?」

「綿菓子だ」

「子供か!?」

「リンゴ飴も美味いな」

「子供か!?」

「ドーナツの輪の中身はどこへ行ったのだ?」

「子供か!?」


 ドーナツの中身なんて、子供がよくする質問じゃねぇか。

 真ん中も食べたい、ってな。


 長髪をオールバックにして、目つきの悪さを強調するような厳めしい面がデフォルトのアラサー男が綿菓子片手にはしゃいでんじゃねぇっつの。

 ホント、変なヤツしかいないんだな、この街の領主は。


「これで、あの子も変われるかもしれないわね」


 囁きが聞こえて振り返ると、マーゥルの背中が見えた。

 わざわざ俺に聞こえるような場所で呟き、そのくせ「それ以上は聞かないでね」と背を向けて去っていく。わがままなオバサンだこと。

 けどまぁ、分からんではないか。

 どんな関係になっても姉は姉。不出来な弟のことを心配していたのだろう。


 ――と。そんなことを考えていられたのは昼過ぎくらいまでで、それ以降は本当に忙しかった。

 ドレスのせいで本来の動きが出来ていない陽だまり亭の面々のフォローに入り、日が傾くにつれどんどん増えていく酒の注文と酔っぱらいの数に振り回されて、次々なくなっていく食い物を作っては補充をして……気が付けば、空はもう暗くなっていた。


「ヤシロ。そろそろいいかな?」


 薄く頬を染めるエステラが、ドレスを翻して駆けてくる。


「飲んでるのか?」

「あはは。付き合い程度にね。でも、酔ってはいないよ」

「ほっぺたが赤いぞ」

「え、そうかい?」


 手の甲で自身の頬を押さえるエステラ。

 そんな仕草まで可愛く見えてしまうのは、闇を照らす光るレンガの幻想的な光と、『宴』の雰囲気のせいなのだろう。


「あれ? ヤシロも顔、赤くない?」

「ライトのせいだろう。レンガの」

「ふ~ん……そっか」


 特に追及することなく、エステラはからからと笑う。

 うん、酔ってるな、こいつ。笑い上戸だ。


「じゃあ、ハムっ子に準備をするように言ってくるよ。お前は発射の合図を頼むぞ」

「うん。任せておいて」


 夜になり、『宴』もそろそろ終了だ。

 大盛り上がりの『宴』を締めくくるのは、やはり、花火だ。


 この騒動のやり玉に挙げられた打ち上げ花火を、『BU』の七領主どもに見せつけてやる。

 お前らがやめさせようとしていた物は、こんなにすげぇもんなんだぞって。


 それを認めさせて、花火に感動でも抱かせてやりゃあ、こっちの完全勝利ってところだ。


 持ち場を離れ、ハムっ子たちに「光るレンガに布をかけるように」と言って回る。

 そしてその足で、会場から少し離れた場所に待機する引っ越しギルドのもとへと向かう。

 最近では花火師に憧れて入ってくる新人が増えているという引っ越しギルド。花火を打ち上げる機会をもっと増やしてやりたいもんだ。


「よう、久しぶりだなカール」

「おぅ、カタクチイワシ! 久しぶりダゾ!」


 シラハの護衛から、花火師への転身を果たしたアゲハチョウ人族のカール(見た目はイモムシ)。

 今回が初花火だそうで、気合い十分だ。


「ニッカはどうしてる?」

「今は訓練中で、船に乗って遠海に出ているダゾ」

「なんだよ……セットの『そっちじゃない方』しか来てねぇのかよ」

「誰が『そっちじゃない方』ダゾ!?」


 どうせなら、女子に来てほしかったんだがなぁ。

 しかし、そうか。

 ニッカも頑張ってるんだな。……海漁ギルドのギルド長はドレス着て浮かれまくってるのに。


「じゃあ、あと十分後から花火を頼む」

「任せておけダゾ!」


 カブトムシ人族のカブリエルたちにもよろしくと伝え、俺は会場へと戻る。

 結構な距離があるため普通に歩けば十分弱はかかってしまう。それでは遅い。

 走って戻ってエステラにスタンバイOKと伝える。


「皆さん! ご歓談中失礼します!」


 声を張り上げて、エステラが話し始める。

 このスピーチが終わると同時に花火が上がるのが理想的だ。

 あと五分。上手く調整しろよ。


「今回の騒動のもととなった花火を、これからご覧に入れます。因縁のある物――ではなく、ボクたちと『BU』の新しい関係を生み出してくれた物として、楽しんでいただけると思います。そして今後、より一層友好的な関係を築けることを確信しています。夜空を照らす美しい光は、ボクたちの未来を象徴していると言っても過言ではないでしょう。さぁ! 夜空に咲く大輪の花をご堪能ください!」


 エステラのスピーチが終わると同時に、拍手が起こり、そして数瞬後――大きな花火が夜空を明るく照らし出した。


 腹の底に響く爆音を轟かせ、次々に打ち上げられては花開き、散っていく花火。

 目まぐるしく咲いては散り、様々な色に夜空を染める花火に、その場にいる誰もが釘付けになっていた。


「素晴らしいな……これは」


 ドニスが呟く。

 距離的に、二十四区までは音も光も届いていない。

 こんなに大きな音であっても、隣町にまでは届かない。精々7~8キロがいいところだろう。きっと二十八区にすら届いていないはずだ。

『BU』で花火を知っているのは、マーゥルとゲラーシーくらいのもので、それ以外の者は皆、初めて見るその光景に圧倒されていた。


 歓声が上がるが、そんな声すらも破裂する花火の音にかき消されていく。


「ヤシロさん」


 空を見上げている俺のもとに、ジネットが駆け寄ってくる。


「屋台の食べ物、完売です」

「マジで?」

「はい」

「……こちらも同じく」

「すっからかんです!」


 マグダとロレッタも駆け寄ってきて、誇らしげにVサインを寄越してくる。

 完売か。

 相当用意したんだが……捌けたもんだなぁ。


「大成功、だね」


 トンッと、肩を小突かれる。

 エステラが満足そうな顔で親指を立てていた。


 そうかそうか。

 じゃあ、今日の仕事はもうおしまいか。


 一気に肩の荷が下りて、残った時間は花火を堪能してやろう――そんな気分になった。


 ジネットにエステラにマグダにロレッタ。

 そんな見知った連中と肩を並べて、咲いては散っていく花火を見上げる。


 花火が開く度に、ジネットたちの顔を赤や緑の光が淡く色付かせる。

 時間にすれば、わずか数分間の出来事なのだが、花火の余韻は長く長く心に刻まれる。

 最後の大玉が打ち上げられ、夜空いっぱいに光が溢れて――一瞬で消える。


 その瞬間割れんばかりの拍手が湧き起こり、『宴』は終了した。


「さぁ、皆さん! これにて『宴』は終了です! 本日はお忙しい中、本当にありがt……」


 エステラの締めの挨拶の途中に、「ぼとっ!」と、何かが落ちてきた。

 その異変に気付いたのは一人や二人ではなく、何人もの人が一斉に空を見上げる。

 手のひらを上に向けて、落ちてきたものの正体を確かめるように、夜空をじっと凝視する。


 そして、その『粒』は、徐々に落ちてくる数を増やして……


 ぼと……

 ぼとぼとぼと…………


 ドザァァア……!


 一気に土砂降りへと変わった。


「雨だっ!」

「みんな、洞窟へ避難しろ!」

「あ、あの、屋台は!?」

「んなもん、後でいいから!」

「うひゃー、ドレスが濡れるです!」

「……水も滴るいい女」

「マグダ、アホなこと言ってないで、さっさと避難するさよ!」


 ギャーギャーと、あっという間に出来上がった水たまりを踏みつけて、領主も給仕長も一般市民もベッコもパーシーも関係なく、全力疾走で洞窟を目指す。

 ニュータウンの住民は自宅へ戻ればいいのだが、混乱の渦に飲み込まれてなぜか全員洞窟へとなだれ込んでいった。


「……はぁ…………はぁ………………びっくりした」


 洞窟は広く、数百人という人間を収容してもなお、スペースに余裕があった。


「お子様連れの方が、早めに帰宅されていてよかったですね」


 濡れた髪を指で梳きながらジネットが言う。

『宴』だからな。夜になれば酔っぱらいが増えることは目に見えていた。

 なので、ガキどもとその親たちは夕方くらいには帰っていたのだ。

 花火なら、会場じゃなくても見えるしな。


「全員残っていたら、さすがにここには入りきらなかったよね」


 濡れた髪を掻き上げてエステラが言う。

 髪の扱いも千差万別だな。


 洞窟の中に、激しい雨音が響き、こだましている。

 先ほどの花火の音にも負けないくらいの大きさで、雨脚の強さを物語っている。


「精霊神のヤツ、降らし忘れた雨を、今さらまとめて降らしてんじゃないだろうな?」

「ふふ。それは、面白い考え方ですね」


 いやいや、ジネット。

 計画性のないヤツってのはどこにでもいてな。夏休みの宿題を最終日にまとめてやろうってガキはいつの時代にもいるもんなんだよ。

 精霊神もきっとその口だぜ。

 ちょいちょい「こいつバカなんじゃねぇの」って思うこともあるしよ。


「だとすれば――」


 暗い夜の闇を真っ白に染めるような激しい豪雨を見つめながら、ジネットはその場にそぐわないほど穏やかな表情を浮かべて言う。


「――これは、恵みの雨ですね」


 お恵みを、こんな叩きつけるように寄越してくる女神って、どうなのよ?



 それからしばらく、弱まる気配もない横殴りの豪雨を眺めながら、俺たちは洞窟の中で時間を過ごした。

 良くも悪くも、印象に残る『宴』になったな、なんてことを思いながら。






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