109話 勝利の後の憂鬱
よく晴れた爽やかな朝。
エステラが、満面の笑みを浮かべて俺の前に座る。
「ヤシロ。いい知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」
ここは教会。
いつもの寄付、兼、俺たちの朝食の時間だ。
「いい知らせだけ聞かせろ」
「子供たちが『りょうしゅさま、いつもありがとう』って手紙をわざわざウチに届けてくれたんだよ。もう、ボク嬉しくて嬉しくて」
「それで、つい……か?」
「なんでボクが幼い子供を誘拐した風な話になってるのかな!?」
「可愛い幼女がいたら分けてくれ」
「分けないよ!」
「一人占めする気か!?」
「しないから! 誘拐してないから!」
バンバンと机を叩き、エステラが鼻息を「すぴー!」と鳴らす。
「それのどこがいい知らせだ? 俺はち~っとも幸せな気分にはなれないんだが?」
「ボクの機嫌がいいと、君も心が軽やかになるだろう?」
「すまんが、俺はお前と精神をリンクさせてはいないんでな。お前が嬉しかろうが悲しかろうが、一切影響されないんだ」
「そっか。うん、そうだよね」
明るい声で言った後、エステラの表情が一気に曇った。
「……じゃ、ちょうどいいや。ボクのダウナーな気持ちに引き摺られないように、悪い方の知らせも聞いておくれよ……」
「聞きたくないと言ってるんだ。朝飯くらい楽しく食わせろよ」
体を横向け、エステラの話を聞かないぞアピールをしてみる。
こいつの重い話は、本気で気分が滅入るから聞きたくないのだ。
「ハム摩呂~、ちょっとおいで~」
「はむまろ?」
エステラが手招きすると、ハム摩呂がとてとてとこちらへやって来る。
認識してないくせにやっては来るんだな、こいつ。
ちなみに、数日前よりロレッタも教会への寄付に参加するようになったため、その付き添いでハム摩呂をはじめとした弟たちも来ているのだ。
「ねぇ、ヤシロ」
エステラは、ハム摩呂に背中から抱きすくめるように覆い被さり、首筋にバターナイフを突きつけた…………っておい!?
「話を聞いてくれないと、この子の顔に傷が付くことになるよ?」
「お前バカだろ!?」
「ほちょぉおお、絶体の、絶命やー!」
何を考えてんだ、こいつは!?
教会でガキを人質に取るとか、脳みそどっかに落としてきたんじゃないのか!?
「バターナイフだから危険はないよ。……ただ、凄くベタベタするけどね……」
「にょほぉぉおお、人質の、パン扱いやー!」
「分かった、分かったからハム摩呂を解放してやれ……」
ベルティーナが怒りに来るぞ。あいつはあれで、意外と教育ママさんなんだから。
「エステラさん」
「あ、シスターベルティーナっ!? や、これはちょっとしたおふざけで……」
ほら見ろ。
冗談でも人質ごっこなど、ベルティーナが許すはず無……
「バターナイフは人に向けるものではありません。ペロペロ舐めるものですよ」
「ペロペロ舐めるものでもねぇよ!?」
「うふふ。冗談ですよ」
今のは嘘じゃなくて冗談とカウントされるのか?
まぁ、ベルティーナをカエルにするつもりなんかないけどさ……
「でも、冗談でも子供に悪い影響を与える行為はやめてくださいね。真似すると危険ですから」
「はい。すみませんでした」
「いいえ。エステラさんも色々おありなのでしょう? 何かあったら、いつでも相談してくださいね」
「はい。ありがとうございます」
「どんなことでも、力になりますよ……ヤシロさんが」
「おいコラ、そこの食いしん坊」
お前が話を聞いてやれっつの。
「お食事は、お静かに願いますね」
と、なんの説得力も無い注意を残し、ベルティーナは去っていく。
「怒られたじゃないかっ」
「それでなぜ俺に文句を言うんだ? 自業自得だろう」
「あ~ぁ、ホントまいっちゃったなぁ~、まさかあんなことになるなんてなぁ~」
「あぁ、もう。分かったって! 聞くから、そのわざとらしい聞いてほしいアピールやめろ、鬱陶しい」
嬉しそうな顔を見せ、エステラが姿勢を正して座り直す。
「……でね、凄く悪い話なんだけど……」
にこにこ顔は一瞬で消え去り、またズドーンと暗い表情になる。
コロコロと表情の変わるヤツだな、ホント。
「街門の工事が一時中断されることになった」
「はぁっ!?」
なんだそれ!?
何はなくとも最優先するべき事柄だろう、今の四十二区において!
「実は、外壁の外に強力な魔獣が発見されたんだ」
「そんなもん、前からだろうが」
「……そうでもない」
俺とエステラの会話に、マグダが割り込んでくる。
「……一頭のメスを複数のオスが守るように群れを作っている。これまでにはない形態」
「ボクたちはそれを、仮に『スワーム』と呼ぶことにした」
蜂や蟻なんかはそんな感じなんだろうが、魔獣では珍しいらしい。
なるほど、スワーム……『群れ』ね。
「一週間前に変なゴロツキが陽だまり亭を占領した時に、マグダがボナコンを捕ってきたじゃないか」
「あぁ、アレは美味かったな」
かなりの大物でみんなで寄ってたかってむさぼり食った。
ゴロツキどもを追い払う手助けをしてもらったからな。その礼も兼ねて盛大にボナコンパーティーをしたのだ。
「あの時、マグダは森に異変を感じたんだそうだ」
「……魔獣の動きに偏りがあった。また、森を破壊するレベルの激しい縄張り争いの跡が散見された。これは珍しいこと」
「それで、自警団を調査に向かわせたところ……」
スワームを発見したってわけか。
相当ビビっただろうな。ここの自警団、ゴロツキにも遅れ取りまくる連中だし。
「で、どうすんだよ。そんなのがいたら街門はずっと作れねぇじゃねぇか」
「……平気。メスを倒せばスワームは自然と解体される」
「だから……それを誰がやるんだっつう話だよ」
「狩猟ギルドに依頼したよ」
マグダの髪を撫でながらエステラが言う。
最近エステラは、マグダの頭をよく撫でている。耳はマグダの許可がないからか触れたりしないが……本当はもふもふしたいんだろうなぁ……エステラ、前に可愛いのが好きだとか言ってたしな。
「狩猟ギルドの代表、ミスター・ダマレは乗り気だったよ。部隊を編成して早急に対応してくれるって」
「ほぅ。そりゃ随分な張り切りようで」
「……マグダがボナコンを狩ったから」
冷やかな目でマグダが言う。
あぁ……つまり、ここ最近マグダにいいところを持っていかれっぱなしで悔しいとかメンツが立たないとか、そういうことを思っているわけか……小さい男だな、ウッセ・ダマレ。
「……だから、支部長止まり」
「はは。辛辣だな、マグダは」
耳の付け根ギリギリを攻めるような撫で方で機を窺うエステラ。
もう素直に頼めよ、「もふもふさせてくれ」って。そしたら「……『ぺたぺた』と引き換えなら」って言い返されて「そんな交換条件はのめないよっ!」ってエステラが自分から断る。いつもの流れじゃないか。
って、ちょっと待てよ。
「四十二区にある狩猟ギルドは支部なのか?」
「……本部は四十一区にある」
「街門があるからね。活動しやすい場所に本拠地を置くのは当然だろ?」
確かに。木こりギルドもあえて四十区に本部を置いてるんだっけな。イメルダが言うには、木こりギルドに所属する多くの者が、二十区以上の高級地区に住んでいてもおかしくないレベルなんだそうだ。
だが、四十区の街門を主に使用するために四十区にいるのだ。
狩猟ギルドも同じなんだな。
「で、なんで四十二区に支部なんかあるんだ?」
「四十二区の森には魔獣が住んでいるからね」
「あぁ……いたなぁ、確か」
食虫植物に捕食された後、全力でじゃれついてきたバカデカいネコみたいな魔獣が……思い出したくもない過去だがな。
「……極たまに、外壁を越えて魔獣が侵入することもある。四十二区の外の森には、それくらいのことが出来る危険な魔獣が生息している」
「それから街を守るために支部を置いてもらっているのか」
ってことは、かなりの優遇がされているのだろう。
どうりで偉そうにしているわけだ。
「……っていう話は、以前したと思うけどね」
「そうだっけ?」
「四十二区に関する事柄は、一応一通り君に話したはずだよ」
「すまんが、俺は物忘れがすこぶるいい方でな。興味のあることしか覚えていたくないタイプの人間なんだ」
「……まぁ、その都度説明してあげるけどさ…………」
凄く面倒くさそうな目で見られている。
よせよ。そんなに見つめんなって。照れんじゃねぇか。
「まぁ、そんなわけで、一週間程度作業は止まることになるんだ」
「一週間で終わるんだろうな?」
「曲がりなりにも、プロの狩人たちだよ? 期待には応えてくれるさ」
「……ウッセ・ダマレは、性格は悪いが腕はいい」
まぁ、マグダがそう言うなら信じてやるか。他に手立てもないしな。
「マグダは参加しないのか?」
「……来るなと言われた」
「これ以上マグダに手柄を立てられたくないってことか? 小せぇなぁ」
「……それもある。けど、『赤いモヤモヤしたなんか光るヤツ』は、群れを狩る際には足を引っ張る可能性がある」
相手が一体の場合、無敵の強さを誇る『赤モヤ』だが、使用後は激しい空腹のためしばらくの間理性が働かない、バーサーカーモードに突入する。
確かに、多数対多数では少し扱いにくいかもしれん。まぁそれも、指揮官次第でコントロール出来なくもないはずだが……命がけの狩りをする者たちにとっては、少々脅威かもしれんな。
「まぁ、アレだ。適材適所ってヤツだ。マグダは一人でボナコンを狩れる。今回はちょっと向いてないだけだ」
どことなく、マグダが気落ちしているように見えて……俺はそんな言葉を口にした。
エステラに代わり、マグダの頭に手を載せる。
耳をもふもふとすると、マグダが腰に抱きついてきた。
「……別に、落ち込んでない」
「そうかい。んじゃあまぁ、ヤツらに華を持たせてやるとしようぜ」
「……高みの見物」
「だな」
耳をもふもふする度に、マグダがギューと抱きついてくる。
結構気にしていたらしい。
こいつはなんだかんだで、狩猟ギルドの一員であることに誇りを持っているからなぁ。
「……いいなぁ、もふもふ」
エステラが羨ましそうに見つめている。
そんなにもふりたいのかよ……
「なぁ、マグダ。エステラがもふりたいってよ」
「…………」
のそりと顔を上げ、エステラの方へと視線を向ける。
するとエステラは、ここぞとばかりに満面の笑みで精いっぱいの友好アピールをしてみせる。
……だが、やはりマグダはそう甘くはなかった。
「……『こりこり』と引き換えなら」
「どこを摘まんでこねくり回すつもりだい!?」
……俺の想像を大きく超えてくるとは……マグダ、底が見えない娘である。
と、いうかだ……
「街門も問題ではあるんだが……」
俺はチラリとジネットを見る。
「あぁ、困ったです! とってもとっても困ったです! あぁ~、誰かあたしの悩みを聞いてくれる人はいないですかねぇ~チラッチラッ」
「おい、ロレッタ……邪魔だ」
「邪魔は酷いです!?」
俺がジネットを見ているのに、その視界の中に割り込んであからさまな構ってちゃんオーラを発散し続けるロレッタ。……何がしたいんだよ。
「ロレッタさん。何かお困りなんですか?」
騒がしいロレッタに、ジネットが話しかける。
ジネット、いい加減学習しろよ。こういう時のロレッタは、しょうもないことしか言わないんだぜ?
「実はですね、店長さん!」
「はい、なんでしょう」
ジネットは労わるような笑みを浮かべてはいるのだが……その表情にはどこか疲れが見える。
「店長さんがなんだか元気がないので、なんとか元気にしてあげよう大作戦をしたいです!」
「えっ!? わたし、元気ないですか?」
「あっ!? これ、店長さんに直接言っちゃいけないヤツでしたです!?」
……おいおい。
「あ、あの……わたし、そんなに元気がないように見えますか?」
ジネットは不安そうに俺たちを見つめる。
正直、元気がないように見える。
実はここ最近、陽だまり亭に妙な客が来るようになってしまったのだ。
なんというか……悪意の見え隠れする、なんとも気持ちの悪い客『たち』だ。
ゴロツキどものような直接的な悪意ではないのだが……
ゴロツキどもを追い返した後、陽だまり亭には一応の平穏が戻った。
いつものお得意さんが顔を出し、バカ騒ぎして、飯を食って帰る。それはいい。
問題は、そこに紛れ込んだ『外からのお客様』だ。
一日に二組から、五組程度の見慣れない客。だいたい二人か三人のグループで来店してケーキを注文していく。
そして、ケーキが来るや否や……鼻で笑うのだ。
「見てくださいな、コレ……」「ホント……センスというか、品というか……そういうものが……ねぇ?」「お皿のチョイスもちょっと……ねぇ?」――という具合だ。
しかし、それ以上のことは何もしない。
支払いを渋ったり、難癖をつけたりはしない。
ただ、『満足出来なかった』というアピールをこれでもかとして、そして帰っていくのだ。
「……まだいるのかい、例の……」
エステラが俺に耳打ちをしてくる。
エステラも一度だけ遭遇したことがあるので気にはしていたのだろう。
ジネットはいつも、客の立場に立ち、客が何を考え、何を望み、何をすれば喜んでくれるのかということを考え続けている。そういう部分に敏感なのだ。
だからこそ、ここ最近紛れ込んでくる『お客様』の行動に戸惑ってしまうのだ。
とても嫌っているにもかかわらず、わざわざ嫌な顔をして、文句を言うために店までやって来る……その理由が理解出来ないのだろう。
理解など出来るはずがない。
そうしている連中こそ、自分たちがなぜそんなことをしているのか明確な理由を理解していないのだから。
ただ『なんとなく気にいらない』のだ。
そして、『文句の一つも言ってやらなければ気が済まない』のだ。
要するに、鼻についてしまったということなのだろう。
『私たちの好きなラグジュアリーには程遠いクオリティーのくせに、ちょっと騒がれている陽だまり亭のケーキがなんとなく気に入らない』と、そういうわけだ。
この『なんとなく』が、手強いんだよなぁ……
誰もが発するべき言葉を見つけられずに黙り込んでしまう。
俺たちの周りに重い空気が立ち込める。
ジネットは「お客様の好みも、色々ですからね」と、気にしない素振りを見せていたが……周りから見ればはっきりと落ち込んでいるのが分かった。
「ロレッタ」
「はぃ……」
「なんでお前まで落ち込んでんだよ?」
「だって……本当は、店長さんをビックリさせて元気になってもらおうと……なのに、つい、テンションが上がってしまって…………失敗です」
ロレッタも、他人の感情の機微には敏感に反応を示す方だ。
なんとかしたいという思いから空回ってしまったのだろう。
「アホ」
「うぅ……反省するです」
「そうじゃねぇよ」
ロレッタの頭をグリグリと撫で回し、俯いた顔を強引に前に向かせる。
「ジネットのヤツ、ちょっと元気になったろうが」
「へ……?」
ロレッタが見つめる先で、ジネットは弱々しいながらも、先ほどよりも柔らかい笑みを浮かべていた。
「お前がそうやって思ってくれてるってだけで嬉しいんだよ、あいつは。な?」
「はい。ロレッタさん。ありがとうございます」
「て…………店長さぁ~ん!」
ジネットの胸に飛び込み、超高級羽毛布団も真っ青なふっかふかのおっぱいに顔を埋めるロレッタ。
うっわ!? いいなぁ!?
「ジネットォ~!」
「君はダメだよ、ヤシロッ!」
「ぐぇっ!?」
駆け出した俺の襟を、エステラが容赦なく掴むもんだから首が絞まってカエルみたいな声が出てしまった。
……お前、俺の首が「ころん!」って落ちたら、責任持って「新しい顔よ!」って投げて寄越せよ……
「ごほっ、ごほっ……まぁ、げふっごほっ……心配しな……ごほごほっ……くても……ごーっほごほごほっ!」
「だ、大丈夫ですかヤシロさん!?」
まずい……変なところに入った…………し、死ぬ……
「はいヤシロさん。お水ですよ」
「ベルティーごほごほ……」
「ほら、背中を伸ばして、ゆっくりお水を飲んでください……そうです、落ち着いて…………はい。よく出来ました」
そっと背中を撫でてくれるベルティーナ。その手付きが優しくて、なんとなく、胸の中が温かくなった。
「…………止まった」
「シスターは、昔からこういうのが得意なんですよ」
ジネットが嬉しそうに言う。
きっと、ジネット自身も何度もこうやってベルティーナに助けられたのだろう。
「みなさん。少しいいですか?」
いつものように、ぴんと背筋を伸ばして、静かな声でベルティーナは語り出す。
「好きと嫌いはどうしようもないものです。それを無理矢理変えてしまおうとすれば、必ず衝突が起こります。受け入れること、許容すること、……それでも無理ならば距離を置くこと。絶対的に正しいことなど存在しませんが、みなさんには、どうか最良の選択をしていただきたいと思います」
「なんでも、こっちの思い通りにさせようとしちゃダメだ、っていうことですね」
エステラの言葉に、ベルティーナは静かに微笑む。
「ジネット」
「はい」
「厳しいことを言う人もいるでしょう。ですが、あなたの周りには、あなたをよく思ってくださってる人がこんなにもいるのです」
「…………はい」
「人は、どうしても辛辣な言葉の方を気にしがちです。耳に痛いから記憶に残ってしまうのでしょう。ですが……あなたを好きと言ってくれる言葉を聞き逃してはいけませんよ。あなたを大切に思ってくれている人こそが、あなたが大切にするべき相手なのです。目先のつらさから逃れようと躍起になり、そばにいる大切な人を見失わないよう、どうか、気を付けてくださいね」
「…………」
ジネットはたっぷりと、十秒ほどの間瞼を閉じ、じっくりと思考した後、再び目を開けて……静かに頷いた。
「……はい。ありがとうございます」
その大きな瞳は、穏やかな光に満ちていた。
「ヤシロさん」
「なんだ?」
問いかけるも、ベルティーナは微笑みをこちらに向けるだけで何も言わない。
あぁそうかい。つまりはあれか。
「ジネットを、よろしくお願いしますね」――って、ことだろ。
言葉にすれば、俺も言葉で返事をしなければいけなくなる。
それをしなくてもいい状況を作るために、あえて言葉にはしない。
俺のことも見透かされているのかもしれない。
今はまだ、胸を張って「任せておけ」とは……言えないからな。
「えっと、じゃあ……どうするです? このまま放置するですか?」
おろおろと、ロレッタがジネットのおっぱいに後頭部を埋めながらこちらに視線を向けてくる。
いいなっ!? 俺と代われよ、そのポジション!
「ケーキの件は、たぶん今日でなんとか出来る」
「え?」
驚きの声を上げたのは、ジネットだった。
まぁ、陽だまり亭の状況を見て、昨日急遽ねじ込んだ企画だからな。まだちゃんと説明してないのだ。この場所で、全員集まった時にすればいいと思ってたし。
「俺、今日この後ちょっと四十区に行ってくる」
「一体何をするつもりなんだい?」
問いかけてくるエステラ。
そして、不安と期待をない交ぜにした瞳で俺を見つめるジネット。
微笑むベルティーナ。
いつものように半眼のマグダ。
おっぱいに埋もれるロレッタ。……いいなぁ。
そんな面々の顔を順番に見て、俺は宣言する。
「悪意の芽を摘んでくる」
面倒くさい状況は、割と単純な方法で打開出来る。それをちょっと試しに行くのだ。
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