73話 貴族の食べ物
早朝。
おそらく、ネフェリーですらまだ眠っているであろう時間、俺はベッドを抜け出し厨房へと下りていった。会わなきゃいけないヤツがいるのだ。
「あれ、ヤシロさん。おはようございます。今日は早いですね」
厨房には、いつものように早起きなジネットがいた。ちゃんと睡眠をとっているのかと心配になる。
そしてジネットの前には、一人の鳥が。
「へぇ、ヤシロって絶対お寝坊さんだと思ってた。見直しちゃった」
昭和の香り漂う、ネフェリーだ。
……やっぱ、ニワトリには勝てないか、早起き。
「見てください、ヤシロさん。今日の卵はこんなに大きいんですよ」
「凄いでしょう?」
カゴいっぱいに詰まった採れたての卵を俺へと見せてくるジネットとネフェリー。
卵と屠畜したニワトリの肉は、行商ギルドを通さず、ゴミ回収ギルド経由で陽だまり亭へと納品される。これは、最初の契約に基づくもので、ウチには優先的に必要量の卵が納品されるのだ。
このあたりはアッスントと話し合い、融通してもらっている。
モーマットやデリアからも、ゴミ回収ギルドに食料が卸されている。でなきゃ、寄付とかやってられないからな。
当然、アッスントからも食材を購入している。
お互いに損益を出さないよう、何度も話し合い妥協点を見つけて現在の形で落ち着いたのだ。
もっとも、気候の変化や災害による不作豊作の際は、臨機応変に対応するけどな。
で、俺が会いたいヤツってのが、そのアッスントだ。
「アッスントはもう来たか?」
「いえ、まだです。もうそろそろ来られるかと……」
「ごめんくださいませ」
「あ、噂をすれば、ですね」
ニコッと笑って、ジネットが中庭へと出て行く。
これまで、表の庭で食料のやり取りをしていたのだが、食糧庫が中庭にあるのだからと、中庭でやり取りが出来るように勝手口を作ったのだ。……ウーマロが。
なので、基本的に業者とは中庭と厨房でやり取りを行う。
「おや、珍しいですね。ヤシロさんにお会い出来るとは」
人のよさそうな笑みを浮かべて、ブタ顔がこちらを見る。
こいつは、アノ一件以来随分と丸くなった。……体もだが、性格がだ。
人を騙すようなこともしなくなったし、むしろ他人の悩みを積極的に聞いて解決へ向けたアドバイスなんかもしているらしい。
なんでも、「ヤシロさんのマネをすれば、商売は上手くいくと学習したもので」だそうだが……俺は他人にアドバイスなんぞしてないがな。
「アッスント、砂糖ってあるか?」
「はい、ございますよ。上質な黒砂糖が入りましてね……」
「あ、いや。上白糖だ。もしくはグラニュー糖」
「…………じょ、う…………はくとう……」
アッスントの顔から血の気が引いていく。
「…………もしかして、私は巻き上げられるのでしょうか? 上白糖なんて高級品をヤシロさんに根こそぎ貢ぐことになったら…………私、破産します」
「人聞きが悪いな、お前は!」
誰が巻き上げるなんつったか。
「あるなら売ってほしくてな。その前に相場を聞きたいんだ」
「相場ですか。そうですか。相場ですか」
とてもホッとしたのだろう。ちょっと壊れたテープレコーダーみたいになっていた。
「上白糖でしたら、10グラムで80Rbです」
「ふざけんなコノヤロウ!」
「これでも、最大限値引きした価格なんですよ!?」
アッスントの怯え方がマジだ。きっとその言葉に嘘はないのだろう。
なんだよそれ……調味料の値段じゃねぇじゃねぇか。
ケーキ作るのに100グラムぐらい使うとして……ワンホールで800Rb、そこからクリームとかフルーツとか盛りつけて、税金と利益分を加味すれば…………ざっと3000Rbってとこか……豪華クルーザーでディナー食うわけじゃねぇんだからよ……
「高過ぎるな……」
「貴族の食べ物と言われておりますからね」
額の汗を拭き、アッスントが答える。
貴族の食べ物、ね……
「あの、ヤシロさん。甘味でしたら、黒砂糖やハチミツがあるので、十分ではないですか?」
「まぁ、不自由はしていないんだが……」
俺の思うケーキが作れないんだよなぁ、それじゃあ……
ケーキといえばイチゴのショートケーキだろう!?
まずは基本を踏まなければ、この先の展開などあり得ない!
小麦の量で税が決まるらしいので、ゆくゆくはレアチーズケーキとかモンブランとかを主力に据えるつもりだけどな。あとは、米粉を使って小麦の使用量を減らす。
だが、まずはイチゴのショートケーキを作らなければいけないのだ!
なぜなら、イチゴのショートケーキこそが、最も喜ばれるケーキの中のケーキだからだっ!
まず、見た目で幸せな気持ちになれなければいけない。
そして、『ケーキ』という単語で幸せになれなければいけない。
そのためには、イチゴのショートケーキは外せない。
そのためには、上白糖が必要なのだ。
「こうなったら……サトウキビ農家に押しかけて、ゴミ回収ギルドの腕前を……」
「あ、それは無理だと思いますよ」
行動を起こす前に、アッスントが俺を制止する。
「あれは貴族の食べ物です。貴族が管理する農地で栽培され、貴族が行商ギルドを経由して流通させている物です。他者が割り込む余地はありません」
「そうなのか?」
「えぇ。仮に、サトウキビをなんとか手に入れたとしても、砂糖を精製出来るのは、砂糖職人たちだけですからね。そして、そんな彼らは、貴族からサトウキビを卸してもらわなければ生活が立ち行かない身……我々は、貴族の気の向くままに砂糖をお裾分けしてもらう以外に道はないんですよ」
甘い汁を独占して啜りやがって……砂糖だけに。
「私も、お砂糖なんて食べたことないなぁ」
ネフェリーがくちばしをへの字に曲げる。…………器用だな、おい。
「ジネットはある? 食べたこと」
「お爺さんがいた頃に何度か……ここ最近は全然です」
「だよねぇ。高過ぎるのよぉ……」
「そういう事情なら、仕方のないことかもしれませんね。……あれ、でも。でしたら、黒砂糖が流通しているのはなぜなんでしょうか?」
「それは、砂糖職人を育成する過程で大量に精製されるからですよ」
ジネットの問いに、アッスントが答える。
上白糖を精製する職人を育てる中で、黒砂糖を大量に精製させているのだろう。
黒砂糖は、決して安くはないが安定して流通している。手が出せないような値段ではない。
「超一流が作る上白糖に対し、一流が作る黒砂糖、といったところでしょうか。二流以下の物はさすがに流通いたしません」
見習い以上、師匠未満の砂糖職人が作っているようだ。
「まぁ、砂糖職人たちも、生活を守るので手一杯でしょうから、協力してくれるかは微妙ですね」
アッスントの話によれば、砂糖職人はいくつものグループに分かれており、それぞれが独自の工場を持ち、独自で砂糖を精製しているらしい。
販売価格は各工場で決めていいらしく、自社の製造量により利益の出やすい価格で行商ギルドに卸すのだそうだ。工場での店頭販売も認められているらしい。
で、何が問題かというと……
「サトウキビが入ってこないんですよ。値を釣り上げるために、貴族はサトウキビをごく少量しか工場に与えないのです」
そうすることで、砂糖の流通量が制限され値が上がる。値が上がればサトウキビの価格も上がり、貴族は利益を得ることが出来る。また、砂糖を庶民の手から遠ざけ貴族たちで独占することも可能となる。
貴族の食べ物と言われているのは、貴族が価格を操り、貴族が楽しむための食べ物にしているからだ。
「どこかの工場が庶民のために値下げをするとですね……次からその工場にはサトウキビが入ってこなくなるのです。そうまでしてでも、貴族は砂糖を独占したい。利益はもちろん、消費においても」
「どうして、そんなことをしてまで……」
「サトウキビが枯渇すると思っているのかもしれませんね。広い農地が必要なのですよ、サトウキビの栽培には。故に、もし、その土地がなんらかの影響で壊滅的ダメージを受けてしまったら……次にサトウキビ畑を復活させることは困難になる」
「いつか来るかもしれない不作のために、恒常的に流通量を渋ってやがるのか?」
「そうですね。砂糖は、人を虜にする魅惑的な調味料ですので」
バカだ。
バカがいる。
バカがのさばっている。
「行商ギルドで締め上げて、サトウキビを没収してこいよ」
「おや、ご存じないのですか? 行商ギルドのトップは、貴族なのですよ?」
「なに、それ? 行商ギルドは庶民のためには動きません宣言?」
「全体がそうだとは申しません。我々下っ端は利益第一主義ですので。あ、もとい、信頼第一主義ですので」
嘘くせぇ。
イカサマ野郎の顔つきだ。
「ですが、行商ギルドが貴族に圧力をかけるということは、まずないでしょうね」
「領主には圧力をかけんじゃねぇかよ」
「それはそうですよ。領主になれない貴族がどれだけいると思っているのですか? 領主が住民の信頼を損ね、領主の席から追放されれば、他の貴族たちにチャンスが巡ってくるではないですか」
「領主は他貴族たちから突き上げを喰らい続けてるわけか」
「権力者の宿命ですよ」
この街は、教会があって、王族がいて、領主がその次に続いて、それ以外の貴族がその座を狙いつつ、庶民の血税を貪って成り立っているってわけか。
けっ、どいつもこいつもろくでもねぇ。
「でもさぁ、この区は凄く住みやすいよね。街の人がいい人ばっかりだっていうのもあるけど……なんて言うのかな……」
ネフェリーが頭を掻いて言葉を探している。
なかなか言葉が出てこないのか、右へフラフラ左へフラフラと行ったり来たりしている。
……三歩歩いて何考えてたか忘れてんじゃないだろうな?
「仕事に専念出来るというのは、この区の特色でもありますね。多くの区では重税で苦しんでいたり、徴兵などの義務が領民に課せられたりしておりますし」
「そうそう! それよ、それ。自分たちの仕事だけしていられるから、時間が有効に使えるし、それに税金も随分安いんだよね、この区って?」
「破格、と申し上げていいでしょう。まぁただし……」
アッスントが意味ありげな目で俺を見て、そこで言葉を区切る。
言いたいことは分かる。
四十二区は最底辺の区だ。それだけで他区から差別的な視線を向けられる。
他の区のヤツらからすれば「安くて当然。あそこは人の住む場所じゃないのだから」ってなもんだろう。
そう思ってないのは、四十二区の人間と、四十区の一部の人間。そして、アッスントのように仕事で四十二区に関わっている者たちだけだろう。
「ここの領主は随分と頑張ってるってわけか」
「私も、そうだと思う。私、あんまり税金のこととか考えたことないけど、それ自体が、領主様の頑張りのおかげなんだよね」
気にしないでいられるってことは、そのことで苦しんでいないということだ。
普通が当たり前であるということは、認識しにくいが相当幸せなことなのだ。
……少し前まで、こいつらは生きることに必死だった。とても普通の状態ではなかった。
だからこそ、現在の『普通』がいかにありがたいかが分かるのだろう。
ネフェリーなどは、感受性が強いから特にそう思うんだろうな。
「四十二区の領主様は特異な存在ですよ。何よりも領民のことを考え、優先し、己の身を切ってでも領内を裕福にしようとしている。あぁ、四十区の領主様もなかなか素晴らしい方ですが……しかし、四十二区の領主様には敵わないでしょうね」
「それって、褒めてるのか? バカにしてるのか?」
「『バカだなぁ』という褒め言葉です。実際愚かしいことですよ。自分の身銭を切って他人の飢えを救うだなんて」
「え? あの……」
アッスントの言葉に、ジネットが表情を歪める。
少し戸惑ったような雰囲気で口を開く。
「人のために何かをするというのは、愚かなことなのでしょうか? 素晴らしいお考えだと思いますが……」
敬虔なアルヴィスタンたるジネットには、アッスントの言うことが理解出来ないのだろう。
でもな、お前の信じているその教会も、主食を独占して利益を得ているんだぞ。
「極端な話になるが、みんなが餓死寸前の中、パンが一つだけあったとして、領主はそのパンを誰に与えるべきだと思う?」
「それは……みなさんで均等に分ける……とか」
「そうすれば、全員の寿命がちょっとだけ延びて、その後全滅だな」
「…………」
以前、トウモロコシ農家のヤップロックにも似たようなことを言ったのだが……
「まずはリーダーが生き残るべきだ。でなければ、四十二区は滅びる。領主がいれば、少なくとも四十二区は存続する。今飢えている者を救えなくても、この後飢える者を出さないために行動を起こすことが出来る。歴史を長い目で見れば、そういう行動を取れる者こそが正しい」
目先の情に流されて全滅……なんてのはお話にならない。
「だから、四十二区の領主は、『領主としては』バカで愚かなんだよ」
「…………ですが」
「だが、『人間としては』最高だ」
「――っ!?」
おそらく、ジネットが言いたく、そして俺の口から聞きたかったのであろう言葉を言ってやる。
理屈ではなく、信条として、そう思いたい時だってあるのだ。
「自分を犠牲にしてでも領民を守ろうとする領主。それは生半可な苦労ではない。命を落とすかもしれないし、他の貴族に蹴落とされるかもしれない。それでも、領民を豊かにしたいと駆けずり回る領主を、俺はカッコいいと思う」
「は、はい! わたしも、そう思います!」
「だからアッスントは言ってるんだよ。『バカだなぁ』という『褒め言葉』だって」
「……なるほど。そういうこと、だったんですね」
しかし、そのやり方は領民を守っているようで、実際は危険にさらしているとも言える。
エステラの家が領主の座から蹴落とされ、引き摺りおろされ、新しい領主が四十二区を支配するようになったとして、そいつがいきなり「税金を十倍にする」とか言い出せば、この区の領民は一斉に破綻する。
そういう危険を孕んでいることは忘れてはいけない。
そうさせないためにも、領民の方で領主を守ってやる必要がある。
ま、俺も、出来る限りは力を貸してやるつもりだけどな。
「でも、領主様にも、ご無理はしてほしくはないですね」
「もし領主が無茶をするようなら、俺が動くさ」
四十二区が滅茶苦茶になるのは、俺の望むところではないからな。
「あいつは、俺が守ってやる」
その時――
ガンゴロガッシャンッ!
――と、食堂の方で盛大な物音がした。
「えっ、なになに、今の音!?」
ネフェリーが首を伸ばしてきょろきょろと辺りを見渡す。
……あぁ、小学校で飼ってたニワトリがよくこんな動きをしたなぁ…………
などとノスタルジックな気分に浸っている場合ではない。
「食堂から、ですね」
「あぁ。見に行くぞ」
全員で顔を見合わせ、揃って食堂へと向かう。
そこには……
「……いたた…………」
周りのテーブルを巻き込んで、派手に転倒しているエステラがいた。
「何やってんだ、お前?」
「ぅひゃあっ!?」
倒したテーブルを飛び越えて、エステラが食堂の隅まで後退っていく。
やめろやめろ! またテーブルが倒れる!
「やっ! あのっ、ち、ちち、違うんだ! ボ、ボクは、ひさし、久しぶりにみんなと一緒に朝食をとろうと……いや、寄付のお手伝いをしようと思ってだね……仕事を昨日のうちに片付けて、朝一でここに来たんだけれども、食堂に入っても誰も出て来ないし、そしたら厨房で何か話し声が聞こえるから、何かなぁ……って。べ、別に盗み聞きするつもりはなかなかなかなかっちゃよっ!」
なかった割には盛大に噛んだな、コノヤロウ。
「……お前、いつから聞いてた?」
微かに、俺の頬が温度を上げていく。
「え…………っと…………『ここの領主は、人間としては最高だ』……あたりから」
聞いてやがったな…………っ!?
「で、その…………『あいつは、俺が…………まも……まも………………』……ぅぁあああっ! これ以上は言えないぃぃぃぃいいっ!」
「あっ! エステラさんっ!?」
顔を押さえ、エステラが全速力で食堂から飛び出していく。
脱兎の如くとは、まさにこのことだろう。
真っ赤に染まった耳が、赤い光の尾を引いていたような気すらする、そんな速度だった。
「……一体、なんだったのでしょう?」
「…………」
「さぁな」と、すら言えなかった。
くっそ……エステラめ…………タイミングが悪過ぎるわ。
あんなもん、本人が聞いてないから言えるような内容なのに……それを聞くなっつうの!
この、どうしていいか分からないもどかしい気持ちを処理しようと悪戦苦闘する俺の顔を、ネフェリーが覗き込んできた。
「あれ、ヤシロ? なんか顔、赤くない?」
「んなことねぇよ!」
「いや、でも。ちょっとおでこ貸して」
そう言ってネフェリーが俺のおでこに自分のおでこをくっつける。
鳥の顔が急接近!? ちょっと怖い!
「きゃっ!? ご、ごめんなさい、私ったら、つい………………は、恥ずかしいっ!」
顔を押さえ、ネフェリーが全速力で食堂から飛び出していく。
脱兎の如くとは、まさにこのことだろう。
真っ赤なトサカが、赤い光の尾を引いていたような気すらする、そんな速度だった。
……が、こっちは割とどうでもいい。
つか、どうでもいい。
「おやおや。ヤシロさんの周りは、賑やかで羨ましい限りですねぇ」
「うっさい、アッスント。泣かすぞ」
「んふふ……怖い怖い。ところで、もしその気があるようでしたら、一度サトウキビ畑を見に行かれますか? 十六区に大規模な農場がありますが」
十六区は、四十二区からすれば対角線上にあるような遠い区だ。
わざわざ見に行っても、貴族の管理が行き届いているのであれば無駄足だろう。
「それよりも、一番近くにいる砂糖職人に会いたいな」
「でしたら、四十区に一つ、砂糖工場がございますよ。紹介状でも書きましょうか?」
「おぉ、是非頼む」
「では…………報酬は、砂糖がお安くなったら融通していただきたい、ということで」
「……ちゃっかりもん」
「商人ですので」
紹介状はもらったが、先に向こうにも話を通したいとのことで、砂糖工場を訪れるのは明日になった。
一度見ておきたい。何か突破口はないものか……何もなければサトウキビ畑にも行ってみるか……十六区だと、日帰りはきついかもしれないなぁ。
さしてなんの進展もないまま、その日はつつがなく終了した。
そして、その日の夜……またしてもあいつがやって来た。
「こんばんは、私です」
「ナタリア……なんか日課になってないか、夜中にここに来るのが」
「どうしてもお伺いしたいことがありまして」
「今度はなんだよ?」
夜中、陽だまり亭の庭に佇むメイド長。
こいつは仕事熱心なのか、暇人なのか分からんヤツだな。
「実はお嬢様が、『領民のためにこの家屋敷を壊してサトウキビ畑を作ろう! 大丈夫! どんな困難に見舞われても、きっとどこかに、守ってくれる人がいるはずだから! きゃっ☆!』などと訳の分からない戯言をのたまい始めまして……」
「おいこら。敬う心が薄れかかってるぞ」
いくら残念っ娘でもぺったん娘でも、お嬢様だから。そこは忘れるなよ。
「で、『原因は何かなぁ』と考える前にあなたの顔が浮かんだもので、説明を求めに来た次第です」
「説明すんのメンドイからさ、エステラを縛り上げて、二、三日蔵にでも閉じ込めとけよ。そのうち大人しくなるだろうよ」
……つか、エステラよ。お前、もっと前から話聞いてたんじゃねぇか。
まったく……ちょっと顔を合わせづらくなっちまったじゃねぇか。
しばらくは一人で行動しよう。そうしよう。と、俺は思った。
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