61話 出店を出店
「いいじゃない、それ! 面白そう!」
エステラと共に、四十二区内の古株、土地持ち、生き字引なんかの家を回り、精霊神の祭りへの支持を得た後、俺たちは手分けをして飲食店を回っていた。
企画の趣旨を説明し、
飲食店は日中大忙しなので、交渉は開店前の早朝か、閉店後の夜に行うことにしている。
今は開店前の早朝だ。
陽だまり亭では今頃ジネットが朝の仕込みを行っているところだろう。
そしてここはカンタルチカ。
普段は人で溢れている店内に客の姿はなく、やけに広く見える。
カウンターの向こうで黙々と開店準備を進めるこの店のマスターを尻目に、交渉の全権を握るイヌ耳店員のパウラが、俺の話を聞いてテンションを上げている。
「稼げる! それ絶対ボロ儲けだよ!」
最近、ここカンタルチカは食材の仕入れ値が安定した影響でかなりの利益を上げているらしく、パウラは若干イケイケモードに突入しているらしい。要するに「稼げるだけ稼いで、飲食店王に、あたしはなるっ!」みたいな状況だ。
店先で蹲って泣いていたヤツとは思えない変貌ぶりだ。
「それもこれも、み~んなあんたのおかげだよ」
店の好調ぶりに話が及ぶと、パウラは朗らかな笑みを俺に向けてきた。
そして、少しだけ照れくさそうに顔を俯けて、俺にこんなことを言う。
「ありがとね、…………ヤ、ヤシロ」
名を呼ぶのがそんなに恥ずかしいか。
言った後で、頭から垂れさがっている大きな耳を掴んで顔を隠し「きゃー!」とかしましく吠える。……あぁ、女子だな。
「パウラさん、なんか女子みたいですね」
「女子だよ! てか、うっさい! なんであんたまでいんのよ!?」
「にゃあ! なんであたしにはそんなに厳しいですか!? もう、あたしここのバイトじゃないですのに、なんか自然な感じで怒られてるです!」
ロレッタが余計な一言を口にしてパウラに怒鳴られている。
こいつらはきっと、元々の相性が悪いのだろう。
努力が顔に出てしまう努力家のパウラと、苦労を欠片も感じさせない苦労人のロレッタ。
同じ状況下で、同じ目的地を目指していても、そこに至るまでの方法が違い過ぎるためにお互いを理解出来ないのだ。根っこは似ていると思うのだが、なまじ似ているからこそ相容れない部分があるのだろう。
特に、パウラにとってロレッタは、「努力もしないで成功を手にしている」ように見えるだろうから、尚のこと気に入らないのだろう。
まぁ、だからパウラが狭量だとか、ロレッタが秘密主義的だとか言うつもりはない。
各々が各々の道を進む時、どうしても相容れないものは出てくるもので、そこに労力を割く必要などない。
ほら、アレだ。嫌なら関わらなければいいのだ。必要最小限だけに留めてな。
「あたしはですね、ニュータウンの代表者として、今回実行委員に選出されたです。お兄ちゃんの推薦でです! なので、パウラさんよりちょこっと地位が上なのです。えへんです!」
「えっと……実行委員を殴れるのは一人何回まで?」
「にょへっ!?」
「すまんが、そういうシステムは導入していないんだ」
……もしかしたら、ロレッタがウザいくらいにパウラに絡むから嫌われているだけなのかもしれないな……悪意はないんだろうけどなぁ……
「ん~、でも、出店で何を売ればいいんだろう?」
「この店の名物はなんだ?」
「そりゃやっぱり、魔獣のビッグソーセージだよ!」
あぁ、そういえば、この店で酒を飲んでいるヤツらの傍らには、いつも赤銅色のでっかいソーセージが置かれていたっけなぁ。あれ、魔獣のソーセージだったんだな。
「ボリューム満点、味も最高! 一度食べたら病みつきの美味さだよ!」
「そうなんですよ、お兄ちゃん! ここのソーセージって、脂身が美味しくて、一齧りしたら二齧りせずにはいられないんです! あたしがここで働いていた時も、マスターがこっそりくれる魔獣ソーセージが一番の楽しみだったと言っても過言ではないくらいでですね、こんな大きなソーセージなんですが、一本なんてぺろりで、二本目もさらりで、多い時なんかマスターから五本もソーセージをいただいたことがあるですよ! 仕事中に食べるソーセージがまた格別で……」
「うるさぁい!」
話をかっさらっていくロレッタに、パウラが牙を剥く。
こいつら、ずっとこんな感じで仕事してたのか? そりゃパウラも疲れるだろう。
でも、なんというか……ロレッタの絡み方は姉に甘える妹のような感じだな。
「あんたはそこに座ってお口チャック! いいわね!?」
「ぷぷっ、お口チャックって……パウラさん、可愛い表現使うですねぇ」
「うっさぁい! お口、まつり縫いにするよ!?」
「はぅっ!? 黙ってますですっ!」
まつり縫いにされたらもう開かないだろうな。
……で、チャックってあるのか、この街に?
「でもさ、この『食べ歩きが出来るもの』って、どういうこと?」
俺が提示した企画書を指さしながらパウラが尋ねてくる。
出店をするにあたり、トラブルを避けるために気を付けるべき点と、売り上げを上げるためのコツ、あと少しの紳士協定について書かれている企画書だ。
スペースからはみ出して営業しないことや、値段を20Rbから80Rbの間(出来れば50Rbが最適)に設定することなどが書かれている。祭りの食い物は500円くらいがいい感じだからな。
そんな中にある一つの項目。
『出店で提供するのは食べ歩きが出来るものが好ましい』という点についての質問だ。
こいつの理由は言うまでもないと思ったのだが……まぁ、お祭り初体験なら気になるか。
「出店のスペースは限られているんだ。店の前で食われると回転率が悪くなって売り上げが落ちる上、通行の妨げになる。買ったらすぐに歩き出し、流れを止めないことが祭りにとっては重要なんだ」
そのためにも、食べ歩き出来るものが好まれるというわけだ。
ドンブリいっぱいのラーメンは美味いが、祭りには向かない、そういうことだ。
「食べ歩きかぁ……ソーセージを出したかったんだけどなぁ」
パウラが残念そうに唇を尖らせる。
「出せばいいじゃねぇか」
「え? だって、食べ歩きなんか出来ないよ? お皿も返してもらわなきゃいけないし、ナイフとフォークを持ったらお皿持てないし」
ここの魔獣ソーセージは細長い皿にソーセージとマスタードを載せ、ナイフとフォークと共に提供されている。
まぁ、その状態じゃ確かに食べ歩きは無理だが……
「棒に刺せばいいんだよ」
「棒に刺す?」
「おぉ! それは食べやすいかもですね!」
突如口を開いたロレッタを、パウラがキッと睨む。
しかしロレッタは怯むことなくカウンターにいるマスターに声をかける。
「マスター! 試してみたいので、ソーセージをお願いします!」
「あんた、食べたいだけでしょう!? お金払いなさいよ!」
「いえいえ。実行委員の調査ですので、ご協力願うです」
「…………とりあえず、一発目使っていい?」
「だから、そういうシステムないから」
拳を固く握るパウラを落ち着かせる。
そうこうするうち、ロレッタには甘めのマスターがソーセージを三つ持ってやって来る。
お、俺の分もあんのか。話が分かるじゃねぇか、イヌ耳オヤジのくせに。
「あとは綺麗な棒があればいいんだが……今日のところは箸で代用しとくか。マスター、箸を持ってきてくれるか?」
「自分で取りに来い」
……ロレッタとの扱いの差に若干イラッと来るな。
「……ロレッタ」
「マスター、持ってきてほしいです」
「…………ちょっと待ってろ」
行くんかいっ!?
お前、ロレッタ甘やかし過ぎだろう!?
「あんた、ウチの父ちゃんをパシらせてんじゃないわよ!?」
「マスターはレディには優しいジェントルマンなのです」
「よせ、……照れる」
野太い声でぼそっと呟く。
……照れんな、気持ち悪い。
ロレッタに骨抜きなマスターが箸を持ってきたところで、俺はそれを一本ソーセージに突き刺した。ソーセージの端から四分の三ほどに達するようにズブブと差し込んでいく。
それだけで食べ歩きが可能なフランクフルトになった。
「おぉ、これは食べやすそうです!」
「ホント。こんな単純な解決策があったのね」
「あと、マスタードだけじゃなくて、ケチャップを用意しておくといいぞ」
「ウチのソーセージはマスタードで食べるのが一番美味しいのよ」
「祭りには子供も来るんだ。万人受けする方が売り上げが伸びるぞ」
「あ、そうか。ウチいつもお酒飲む人しか来ないから」
パウラがぽんと手を打つ。
客層の違いという点も、教えて回る必要がありそうだ。
祭りの主役は子供と言ってもいい。子供が「アレ買ってー!」とねだるものこそが売れるのだ。
「……ケチャップだ」
「わぉっ! マスター気が利くです! では早速……」
手渡されたケチャップをたっぷりとつけ、ロレッタがフランクフルトに齧りつく。
「お…………美味しいですぅ~! 幸せの味です。肉汁のラッシュアワーですぅ」
ハム摩呂の原点を見た気がした。
……って、あるのか、ラッシュアワー? ないよな? また『強制翻訳魔法』のお茶目か?
「あ、これ美味しいかも」
ケチャップをつけたソーセージを初めて食べたらしいパウラも、その味に目を丸くする。
「それに凄く食べやすい。お店でもこうやって出そうかな?」
「棒は客の口に付くから使い捨てになるぞ」
「あ、それは経済的じゃないわね」
まぁ、回収して洗えば再利用は可能かもしれんが……なんか嫌な気分になるよな、使い回しだと。
やっぱり使い捨ての方がいいだろう。祭りでは食後は捨てられる木の棒がベストだしな。
「なんか、今から楽しみになってきた。メニューは何種類くらい出せるの?」
「一店舗一品が基本だな」
「一品だけ?」
「それも行列対策だよ」
遠くからでも何を売っているのかが分かる看板を掲げ「あ、アレ食べよう」と思わせつつ、店先に来たら即注文というのが理想だ。数あるメニューから選んでいては流れが悪い。
「だから、絶対的な自信のあるもので勝負するんだよ」
「じゃあ、ウチは魔獣のビッグソーセージ一択ね!」
相当自信があるのだろう。パウラは既に売り上げナンバーワンを取ったような顔をしている。
「マスター! おかわりお願いするです!」
「あんた、何本食べるつもりよ!?」
「つもりで言うなれば…………四本!」
「ヤシロ、三発目までまとめて使っていい?」
「だから、ないから、実行委員を殴ってもいいシステム」
固く握りしめた拳をプルプル震わせてパウラが言う。
「……ほら、四本だ」
「わぁ~!」
ソーセージが四本並んだ皿をロレッタの前に置くマスター。
……こいつ、追加が来ることを分かって準備してやがったな。ロレッタがここにいた時は、相当甘やかしていたに違いない。奴隷根性が染みついてやがる。
そして、喜ぶロレッタを見てこの満更でもなさそうな表情である。
親バカか? 他所の娘なのに。
「も~ぅっ! これだからマスター大好きですっ!」
「だっ…………大好…………っ」
朴訥な雰囲気のマスターが言葉に詰まり、顔を背ける。
おぉ、おぉ、照れとりますなぁ。
「…………パウラ。父さん、大事な話があるんだ」
「なに家庭を投げ打って新しい人生に踏み出そうとしてんのよ!?」
親バカじゃない……こいつ、ただのバカだ!?
「ロレッタの言ってる『好き』は、そういう『好き』じゃないわよ! 動物がエサをくれる人に懐くような感じの『好き』よ!」
言い得て妙だ。
これはただの餌付けだ。
「パウラさんも、お兄ちゃんに色々よくしてもらったから好きなんですよね~?」
「なっ!? は、はぁ!? あ、あた、あたた、あたしが、ヤ、ヤシ、ヤシロをす、すす、好きぃ? ベ、別に、そ、そんなこと、ななななな、ない、って、いや、嫌いではないわよ? でも、それとこれとは違うっていうか……!」
パウラ。
ロレッタの軽口を真に受けて盛大に自爆してるところ悪いんだが…………お宅の父親がものすげぇ怖い目で俺のこと睨んでるから、そういうのやめてくんない?
「パウラさんも、お兄ちゃんに餌付けされたです」
「餌付けはされてないわよ!」
エサをやった覚えはないからな…………あ、タコス食わせてやったか。言われてみれば、あれから妙に懐かれている気がする。
女子って、餌付けに弱いもんなの?
「とにかく、出店は朝から夜までやるから、相当な数のソーセージが必要になるぞ。四十二区の住民全員に食わせるつもりで用意しておいてくれよ」
「夜かぁ……」
ここまでずっと乗り気だったパウラが、初めて表情を曇らせた。
「夜は何かマズいのか?」
むしろ、夜こそが出店の本番なのだが。
「マズいってほどのことじゃないんだけど……」
曇った表情で、次のセリフを躊躇う。
なんだよ、気持ち悪いな。
言いたいことがあるならはっきり言えよ。
「この街って、幽霊出るじゃない? ちょっと怖いよね」
なんでそんな話するのっ!?
なんでもかんでも口にすればいいってもんじゃねぇんだぞ!?
「さて、用も済んだし、帰るぞロレッタ!」
「パウラさん、そのお話詳しくです!」
……くぅ! こういう話に首を突っ込まずにはいられないロレッタが、案の定食いついてしまった。
そうならないようにさっさと切り上げたかったのに!
「あんた、聞いたことないの? 女の幽霊の話」
「ないです。子供の頃は、夜中になると苦しそうな女の声が聞こえてきて、幽霊か何かかと思っていたのですが……それから間もなく家族が増えるので、『あ、違うんだな』と思ったことはあるですけど」
お前、なんの話してんの? こんな朝っぱらから。
あと、お前んとこの両親、少しは自重しろよ。
「ヤシロは? 聞いたことない?」
「幽霊などいない。あんなものは、寝ぼけた人が見間違えただけだ!」
『幽霊の正体見たり枯れ尾花』ってありがた~い言葉もあるしな。
幽霊なんぞこの世に存在するはずがないのだ。
「でもね、目撃者が後を絶たないのよ。この前も……」
なに、この娘? これから怪談話するつもりなの? 帰るよ? 今すぐ帰っちゃうよ?
「目撃者いるですか!? どんな感じだったです!?」
ロレッタが見事に食いついてしまった。
俺だけ先に帰るわけには…………いかないのかなぁ?
「あたしの友達が、夜中にトイレに行ったんだって……そうしたら、何か『ぼぅ……』っと光るものを見かけたらしいのよ……」
「ほうほう! 光っていたですか!?」
「禿げ頭に月光が反射してたんじゃねぇの」
「それでね……『あれ、何かなぁ?』って気になって、その後を付けていったらしいの……」
くそ……俺の茶々が完全にスルーされてしまった。
話したいモードのパウラと聞きたいモードのロレッタが揃えば、この話は止まらない。
かくなる上は…………「あーあー、聞ーこーえーなーいー!」大作戦だ!
俺は両耳に指を突っ込んで背を丸め、視線を外して蹲った。
……俺は、貝になりたい。
「それで、付けていって……どうなったです?」
「その娘の家のトイレって路地裏に面しているんだけど、その路地裏をさまようように歩くその光は、なんだか人目を避けてるように見えたんだって」
「さまよう幽霊ですね!? それで、それで? どうなったです?」
「何度か角を曲がるうち、その娘は怪しい光を見失っちゃったの……そこは、ここから四つ向こうの細い路地で、朽ち果てた民家が並ぶ、誰も住んでいない区画だったの」
「誰もいない場所で消えた幽霊ですか!? そこで無念の最期を遂げた人の怨念かもですね! 人気がなければ、事件も起こりやすいですし!」
「光を見失ったその娘は、『あれ~、おかしいなぁ~、どこ行ったのかなぁ~』…………って、辺りを探して歩いたの」
「……おぉ…………な、なんかドキドキしてきたです」
「…………でね。見つからないからもう帰ろうって振り返ったら……目の前にそいつが立ってたんだって!」
「ぎゃー! 突然の登場は心臓に悪いですっ!?」
「その娘ははっきり見たの……全身真っ黒で、影みたいな女がぼや~っと光りながらこっちをジッと見つめているのを…………とても悲しそうな目をした、やつれた女だったって……」
「ほぉぉぉぉぉう………………なんか、鳥肌立ってきたです」
「そんな目撃情報がいっぱいあるのよ。ほら、ウチ酒場じゃない? 聞きたくなくてもそういう情報は集まってきちゃうのよね」
「なるほどです。酒場ならではの困ったあるあるですね」
二人を包む雰囲気が変わる。
どうやら怪談は終わったらしい。
「それで、ソーセージにかけるケチャップとマスタードなんだが、先の細い入れ物に入れて線状にしてつけると食べやすいし、味のバランスも取れておすすめだぞ」
「なんで今ソーセージの話してんのよ?」
「はは、何言ってんだよ。俺たちはソーセージの話しかしてないじゃないか。はは、変なヤツだな、ははは」
「怪しい光に浮かび上がる黒い女の影が……」
「やめろー! マグダが寝不足になったらお前のせいだからな!」
「……お兄ちゃん、夜中のトイレにマグダっちょ連れて行く気ですね……」
室内になっても夜中のトイレは怖いもんだろうが!
お化けなんか嘘だけどな!
寝ぼけた俺の見間違いだけどな!
もし何か見たとしても、そんなもんは枯れ尾花だ!
枯れ尾花って、枯れたススキのことだよな…………なぜ陽だまり亭のトイレにススキが!? それはそれで怖いわ!
むゎぁああっ! どうしてくれるコンチキショウ!
「ヤシロって、怖がりなのね」
「バッカ! お前、バカ、違ぇよ! 全然怖がってないから!」
「どう見ても怖がってるじゃない」
「どう見ても付き合ってるのに『俺たち、そういうんじゃないから』とか抜かしてるリア充カップルだっているだろうが! だったら人前でイチャイチャすんじゃねぇよ! 気ぃ遣うだろうが!」
「……何に対して怒ってるのよ?」
何に対して?
世の不条理にだ!
「お兄ちゃん、これは由々しき事態ですよ!」
ロレッタが、なんだか嫌な感じで瞳をキラキラさせている。
えぇ~…………何その張り切り顔…………いやな予感しかしない。
「幽霊の正体を突き止めない限り、夜店に難色を示す人が大勢いるかもしれないです! だから、あたしたちで幽霊の正体を突き止めるです!」
と、100%混じりっ気無しの好奇心を顔中に滲ませて、ロレッタが鼻息を「ふんすっ!」と吐き出す。
ふざけるな。誰が幽霊騒動になど首を突っ込むか……
「そうね。あんたたちが幽霊の正体を突き止めてくれるなら、あたしたちも安心して夜店が出来るわね」
………………
「お兄ちゃん!」
「ヤシロ!」
…………いや、無理だよ?
「じゃ、よろしく頼むわね」
「よろしく頼まれたです!」
何勝手に決めてんの!?
俺は嫌だからな!? 幽霊騒動になど、絶対首を突っ込まんからな!
絶対関わらないからな!
絶対なんだからねっ!
そんなツンデレ口調が、まさかフラグになるとは……この時の俺は知る由もなかった。
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