9話 エンブレム
モーマットから荷台いっぱいに野菜をいただき食堂へと戻ってきた俺は、それらを食糧庫へ運んで……あり得ないものを目撃した。
「嘘……だろ」
食糧庫には、隙間がないほどぎっしりとクズ野菜が詰め込まれていた。
……どんだけ買い込んでんだよ?
「使い切れんのか?」
「あの……いえ……寄付の分もありますし…………その……」
「使い切ってるのか?」
「…………すみません、この前は大量に残っちゃって堆肥にしました」
はぁー………………
罰として乳を揉ませろ。
……とは、言えないが、それくらいの気分だ。
「で、でも、有効活用は、されていますし……その…………決して無駄には……」
「過度の堆肥は作物をダメにするし、腐った野菜を畑にばら撒けば肥料になるわけでもない」
「……です、よね」
こいつはきっと、これまでもずっとこうだったのだろう。
断り切れずに大量に購入した食材を、可能な限り使い、それでも大量に残し、罪悪感から有効活用しようとするもその方法も思いつかない。
それでも断ることが出来ずにまた大量に買い込んでしまうのだ。
「次からは俺が調整して購入するとして……今回の分はなんとか使い切りたいな」
「料理の量を増やすとか、どうでしょうか?」
「それをすると、次回以降量を減らすのが難しくなる。同じ料金で『減った』と思われるのはマイナスイメージだ」
増量されたものを期待して来る客がつくと致命的だ。
サービスというのは、無暗に提供していいものじゃない。でなければ、商売など成り立たなくなる。
大量の在庫を捌くには……客を増やすしかないか。
「とりあえず、今日一日は普段通りの営業を見学させてもらう。悪いところがあればその都度是正していくからな」
「はい! よろしくお願いします!」
まぁ、どうしても捌けなければカッサカサに乾燥させてふりかけにでもしてみるか。……出来るかどうかは知らんけど。
が、ふりかけよりも前に作りたいものがある。
こいつは急務だ。
「大工道具はあるか?」
「はい。お爺さんが使っていたものが物置にあるはずです」
「あと、余ってる木材はないか?」
「薪でしたら」
薪かぁ……
まぁ、なんとかなるか。
「じゃあ、椅子と机を補修するぞ」
「それは助かりますね!」
ジネットの表情がパァッと明るくなる。
「わたし、日曜大工は苦手で……一応、壊れた椅子は修理していたんですが、どうしてかいつもガタガタしてしまって……」
お前のせいだったのか、あのガタガタする椅子は!?
長さを揃えて切って釘で打ちつけるだけのことがなぜ出来ないのか……
「お前は開店準備をしててくれ。椅子は俺がやるから」
「はい。では、道具を持ってきますね」
そうしてジネットが持ってきた道具は、意外にも充実していた。金ヤスリまである。まぁ、さすがに紙ヤスリはないようだが。獣の皮なのか、ざらざらとした肌触りの柔らかいヤスリがある。これは使えそうだ。
そして、店の裏手、トイレの更に奥に薪置き場があった。
「……デカッ!?」
薪と言われて、30センチ程度にカットされた木片を想像していたのだが……
そこにあったのは長さ3メートルはあろうかという丸太だった。
どうも、これを適当な長さに切り出し、更に斧で割って、その後で乾燥させる必要があるようだ。
だが、力のないジネットではその作業が進まず、なかなかストックが作れていない状況らしい。……薪割りも、俺の仕事かな。
しかし、この長い丸太があれば椅子や机の補修は出来るだろう。
長い間放置されていたようで、そこそこ乾燥もされているし。補修した後で木が反ってくるということもなさそうだ。
「では、お願いしますね」
ジネットは頭を下げ、店へと戻っていく。
木が置かれているこの場所で作業を始めるのが楽でいいのだが……客が来たら分かるように店の前で作業を行うことにする。
客の入りや客層も調べておきたいからな。
あと、食い逃げも防止したいしな。
そんなわけで、俺は店先でガタガタの椅子の補修を始めた。
足の長さを揃え、座面を水平にして、背もたれや足など、肌に触れそうな部分にはザラザラの皮を使ってヤスリ掛けもした。
これで、肌触りもよくなり、座り心地も多少は改善されるだろう。
そんな作業に没頭しているうちに、太陽は頂点を過ぎ傾き始めていた。
……客が来ねぇ。
教会から帰ってきたのが九時頃で、開店が十時。これは、俺の腕時計で調べた時間なのだが……この世界も一日二十四時間で回っているようだ。
で、現在が……十六時。その間、客は一人も来なかった。
由々しき事態だ。
というか、一体どんな層がこの店に来るというのだろうか?
どうせ、ジネットの知り合いが気を利かせてたま~に顔を出すくらいが関の山だろう。
宣伝とかもしてないだろうし、知名度が絶対的に足りていないのだ。
店の前まで来ればいい匂いが漂っているので入ってくれる可能性はあるにはあるが……こんな辺鄙なところまで足を運ぶヤツなんかいるのか?
この食堂の前を通ったヤツすらいない。人通りが絶望的に少ないのだ。
……立地条件が最悪だ。
あまりに人が来なさ過ぎて、俺は椅子と机以外にもうひとつ工作をしてしまった。
エステラからもらった許可証に押されていた領主のエンブレム。双頭の鷲と蛇が描かれたその文様を、キレーに模写して、反転させて、余った木片に刻み込んだ。工具箱の中にミノや彫刻刀まで入っていたので活用させてもらった。
そんなわけで……
「ジネット、使っていい紙はないか?」
「はい、ありますよ」
ジネットにもらった品質の悪い紙に、以前服屋で購入したインクを使って判を押していく。
うん。大きさも見た目もそっくりだ。
っていうか、服屋がインクを売ってくれたんだから、使いさしを売るのはギルド的にOKなはずだ。
大通りに店を構えている商人がギルドの規約に違反するとも思えないしな。
使用済みは中古として販売可能……と。それを活用すれば、食堂で何かしら売れるかもしれない。もちろん、行商ギルドを介さずにだ。
「あの、ヤシロさん。これは……?」
ジネットが、紙に押された判を見て俺に尋ねてくる。
「よく出来ているだろう?」
手先の器用さには自信がある。
親方に教わった技術をベースに、実務経験が活かされている。……いや、ほら、『バッタモン』とか『海賊版』とか、結構ボロい商売だし? ちなみに、縫製も超得意だ。カバンだろうが毛皮だろうが……『そっくり』に作る自信がある。
「あの……領主様のエンブレムを悪用するのは、重罪で……」
「領主のエンブレムを悪用なんかしねぇよ」
「なら、いいのですが……」
思いっきり疑いの眼差しで見られている。
うすうす勘付かれ始めたかな、俺の本性に。…………ないな。このノーテンキ天然娘に限って。『勘付く』って言葉すら知らないんじゃないかと疑うレベルだ。
そうして、出来上がったエンブレム入りの紙を胸ポケットにしまい…………胸ポケットがねぇ。
「ジネット、布と針と糸ないか?」
「ありますよ」
なんつうか、物はあるんだな、ここ。
俺は暇を持て余し、服に胸ポケットを取り付けた。
胸ポケットは非常に重要で役立つものなのだ。
ペンも入るし紙も入る。ハンケチーフを差せばエレガントに見えるしな。
そんなわけで、エンブレム入りの紙を、エンブレムが上手い具合に見えるように胸ポケットへとしまっておく。
……にしても、暇だ。
空が赤く染まる頃、ようやく最初のお客が訪れた。
人のよさそうな婆さんで、ジネットを見るとにっこりと相好を崩す。ジネットはジネットで、婆さんを見るや、カウンターから飛び出し抱きつきに行っていたし、まぁ顔見知りなのだろう。
その婆さんも経済的余裕があるわけではないようで、一杯1Rbのお茶を飲んで帰っていった。
ジネットの応援と、世間話をしに来たようだ。
……利益にならねぇ。
次に訪れたのは、不精髭のひょろ長い男だ。身長が2メートルくらいはありそうだった。ただ、体重は俺と同じか、下手したら俺より軽いかもしれないと思えるほど、ひょろひょろだった。
……で、こいつが怪しい。非常に怪しい。
ニヤニヤとした笑みを浮かべて来店したひょろ男(仮名)は、カウンター奥に座る俺を見るなり、一瞬表情を強張らせた。普段は誰もいない食堂に先客がいたことに驚いたのだろうか。……いいや、あれは「マズいな」という目だ。
俺が興味なさげにそっぽを向いていると、ひょろ男は気を持ち直したのか入口近くの席に腰を下ろした。
それを見て、ジネットがとてとてと近寄っていく。
「いらっしゃいませ。ようこそ、陽だまり亭へ」
「椅子、直したの?」
「はい。ヤシ…………あ、いえ。直しました」
ジネットには、椅子を直したのが俺であることは言わないように言いつけてある。
今日一日は、俺は店の関係者ではないという前提で食堂にいるのだ。
理由は……まぁ、このひょろ男で分かるだろう。
「ご注文はお決まりですか?」
「じゃあ、クズ野菜の炒め物をもらおうか」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
ジネットがお辞儀をして、厨房へと消える。
それを視線で追っていたひょろ男は、もう一度俺へ視線を向ける。
俺はそれに気付かないフリをして無視をする。
やがて料理が運ばれてくると、ひょろ男は俺を気にしながらも飯を食い始めた。
チラチラと俺を窺うひょろ男。日本なら、この時点で通報されてもおかしくないほどの挙動不審さだ。
それじゃあ、そろそろかな。
ひょろ男の皿がほとんど空になった頃合いを見計らって、俺は席を立つ。
ジネットに「それじゃあ」とだけ言って食堂の外に出る。その時のひょろ男の嬉しそうな顔といったら……これでもう間違いないな。
ひょろ男は、食い逃げをするつもりだ。
外で待つこと十数分。
食堂の中は静まり返っている。……ジネットのヤツ、また厨房に引っ込みやがったな。人の気配がしない。
まぁ、ひょろ男はそれを待っているのだろうが。
案の定、中が静まり返ってしばらくすると、食堂のドアが静かに開いた。
出てきたのは、ひょろ男だ。
「おや、どうされました?」
「ひっ!?」
外に出た途端俺がいたので驚いたのだろう、ひょろ男が悲鳴を上げる。
「お支払いはお済みで?」
笑顔で尋ねると、ひょろ男は額に汗を浮かべて視線をさまよわせた。
「見たところ、店主は奥に引っ込んだまま出てきてないようですけど?」
さらに問い詰める。と、ひょろ男は眉を吊り上げ、厳つい表情でこちらを威嚇してくる。
「お、お前には関係ないだろう」
背は高いが、ひょろひょろなので怖くない。
まぁ、暴れられると厄介ではあるが。
「関係ですか……」
言いながら、俺は胸ポケットをそっと押さえる。
ひょろ男の視線がそちらへ向かい、そしてギョッと見開かれる。
俺の胸ポケットには、エンブレムの判を押した紙が顔を出していた。
「実は、関係者なんだよな、俺」
口調を変え、俺が優位な立場であると暗に知らせてやる。
ひょろ男の額に浮かんだ汗は、ダラダラと滝のように流れ始めていた。
「い、いや。そ、そう! トイレだ! トイレに行こうと思っただけなんだ」
「じゃあ、案内してやるよ」
「い、いいよ、トイレくらい! ガキじゃあるまいし!」
「お前のために言ってんじゃないことくらい分かるよな?」
一分の隙もない笑顔で言ってやる。と、さすがのひょろ男も観念したのか、がくりと肩を落とした。
言い逃れは無理だと悟ったのだろう。素直でよろしい。
まぁ、もっとも。言い逃れをすればするほど自分の首を絞めることになっていたけどな。
この段階で認めたのだから、代金の支払いで勘弁してやろう。
観念したひょろ男を連れ、再度食堂へと戻る。
食堂の一番奥、壁際の席に壁に向かって座らせ、俺はその隣に腰掛ける。
視界を遮られ、自分のパーソナルスペースを侵されると、人は弱気になるものなのだ。今のひょろ男のように、悪事がバレた直後なら尚のことこたえるだろう。
悪徳商法の連中がこの手をよく使う。一番奥の席で壁に向かって座らせられたら要注意だ。
その上、紹介者以外の『権威のある大物』などというヤツが現れるのがセオリーとなっている。紹介者や知り合いがその『自称大物』の話を「うんうん」と共感するように聞き始めると、カモは「この『大物』の言うことは正しいに違いない」と錯覚を起こし、視界の遮断、パーソナルスペースの侵略と併せてあっさりと陥落してしまうのだ。
このように、『圧迫』や『権威』を利用してカモを『委縮』させるのは詐欺の常套手段で、どれだけ時代が変わっても一定の成功率を収めている。
それの応用とでも言えばいいのかな。
俺が真正面の席に座らなかったのは、視線が横に逃げるのを防ぐためだ。
ひょろ男にとっては四面楚歌に追い込まれた気分だろう。
「食った分の代金はきっちり払ってくれるな?」
「は、はい。それはもちろん……だけど、今は、その……」
「持ち合わせがない、と?」
「ま、まぁ……平たく言えば……へへ」
最初から食い逃げするつもりで来ていたと、白状しやがった。
俺は胸ポケットに忍ばせたエンブレム入りの紙を出し、ひょろ男の前に置く。
これで、ひょろ男の視線の逃げ場がもう一つ減った。俯けばエンブレムが目に入る。それは相当な恐怖だろう。
「じゃあ、支払いは後日でいいから、一筆書いてくれ」
「い、一筆って……?」
「住所と名前、それと『陽だまり亭で飲食した分の代金を支払います』とな」
「そんな、わざわざ書かなくっても……」
「お前の家や職場に取りに行った時、お前が留守でも請求出来るように保証が欲しいんだよ」
「い、家や、職場に…………来る、ん……ですか?」
「きちんと払ってくれれば、その手間が省けるんだけどな」
「い、今から帰って持ってきます! だから……職場だけは……」
「その言葉を信じるために、一筆書いといてくれよ。でないと、帰すわけにはいかないからよ」
「…………………………分かりました」
ひょろ男は色々と考えを巡らせたようだが、結局了承し、俺の言う通りの文言を紙に書いた。
「名前や住所に虚偽があった場合、どうなるか……分かってるよな?」
「わ、分かってるよ! ……大丈夫ですよ、嘘なんか書いてませんって」
ひょろ男の名前は、グーズーヤというらしい。変な名前。
「じゃ、じゃあ、取ってきますんで! そしたらその紙、処分してくださいよ!」
「支払いが済めばな」
「絶対ですからね!」
そう言って、グーズーヤは食堂を飛び出していった。
それと入れ替わるように、ジネットが厨房から顔を出す。
「ヤシロさん。今のお客さんは?」
「金を忘れたから取りに帰るって」
「そうですか。ふふ……おっちょこちょいさんですね」
おっちょこちょいはお前だ。
まんまと食い逃げされかけやがって。
「ジネット。お前はいつも厨房で何をやっているんだ?」
「クズ野菜の下ごしらえです」
「ずっとか?」
「えへへ……食べられる状態にするのが大変なものが多くて……」
無駄だ。
実に無駄な労力だ。
「今後は普通の野菜を使うようにして、なるべく厨房へは戻らないようにしておけ」
「そうですね。普通の野菜でしたら下ごしらえも簡単ですし。お客さんと楽しくお話出来ますね」
論点がずれているが……まぁ、いいか。
話していれば食い逃げも出来ないだろう。
「で、ジネット。今日はまだ客が二人しか来ていないんだが?」
「ムムお婆さんは毎日お茶を飲みに来てくださるんですよ。ありがたいですねぇ」
「日に五人は来るんじゃなかったっけ?」
「そ、それは……日によります」
こいつ……
これは、来客数ゼロって日もあるな、こりゃ。
「きっと、今日だってもう一人くらいは来てくださいますよ」
そんな根拠のない希望的観測を述べるジネット。
バッサリと否定してやろうかと思った矢先、食堂のドアが開かれ一人の客が顔を見せた。
「やぁ、諸君! ご馳走になりに来たよ!」
エステラだった。
「お前かよ……」
「そんなあからさまに嫌な顔しなくてもいいじゃないか、失礼なヤツだな!」
エステラは足音を荒げて俺の向かいへと座る。
なんで向かいだ? 他にも席はいくらでもあいているだろうに。
「お昼ご飯をご馳走してくれる約束だろ? だから食べに来たんだよ」
「残念だな。今はもう夜だ」
「君に頼まれた申請をしていて、お昼を食べ損なったんだよ」
「それは残念だな。だが、これから食う飯が夕飯であることに変わりはない」
「君ねぇ! あんなに頑張ったボクからお金を取ろうって言うのかい!?」
「どんなに頑張ったのか、俺、見てねぇもん」
エステラが眉間にシワを寄せる。
だがな、エステラよ。努力を褒めてほしがるのはダメだ。
努力とは自分のためにやるべきもので、対価を求めるものではない。
対価を求めていいものは結果を出した時だけだ。
努力とは、して当たり前のものなんだよ。
でなきゃ、歌手にアイドルに野球選手にと、夢破れた無数の努力者たちが報われないじゃないか。
「エステラ。努力を誇るようになったら、人間終わりだぜ?」
「きちんと結果も出してきたよ。申請が通った。今日からゴミ回収ギルドは活動が出来る」
「えらい! 褒めて遣わす」
「じゃあ、ご馳走を……」
「それとこれとは話が別だ」
「なんでだよぉ!」
契約は、『昼飯をご馳走する』なのだ。
夕飯をご馳走したら、それは契約違反になってしまう。
「あの、ヤシロさん。いいじゃないですか、夕飯を食べていただくくらいは……」
「それに、お前が金を払わないとジネットが嘘吐きになってしまう」
「えっ!?」
ジネットが驚いた声を上げ、エステラはそんなジネットの顔を見つめる。
先ほどジネットは言ったのだ。
「きっと、今日だってもう一人くらいは来てくださいますよ」と。
しかし、もう間もなく閉店時間だ。これから客がもう一人来る可能性は極めて低い。
「『精霊の審判』発動しちゃおっかなぁ~」
「き、君ね! そんな脅しは卑怯だぞ!」
「あぅ、あの……ヤシロさん、わたしは、その……」
まぁ、本気で言っているわけではないが……
ちらりとエステラを見ると、物凄いしかめっ面で睨まれた。
「分かったよ。『夕飯』にはお金を払おう。ただし、今後多少の時間の誤差で渋るのは無しにしてくれよ!? 『午前中だからまだ朝食だ』とか、『三時だからおやつだ』とか!」
おぉ、さすがエステラ。俺がやろうとしていたことを先読みしやがった。
まぁ、こいつの働きも認めないわけではない。いいだろう。今回だけで勘弁してやる。
「ジネット。今日仕込んだもので凄く残ってるものはなんだ? 明日には持ちこせないようなもので」
「それでしたら……川魚でしょうか」
「エステラ。この店の川魚の煮込みは凄く美味しいぞ、おすすめだ」
「……君、ホンットにいい性格してるよね」
呆れ返った目で俺を見て、エステラはため息を漏らす。
「じゃ、川魚の煮込みと黒パンを」
「かしこまりました! 少々お待ちください!」
ジネットが跳ねるような足取りで厨房へと駆けていく。
厨房に入る間際、ジネットは振り返りエステラに向かって頭を下げる。
「わたしのせいで、ごめんなさい」
「え?」
一瞬、なんのことか分からなかったらしいエステラは目を丸くする。が、すぐにジネットの言わんとしていることを理解して、手を振って応える。
「さっきのはジネットちゃんのせいじゃないよ。この男の性根が腐りきっているのが悪いんだ」
「なんだ、エステラ。知らないのか? なんだって、腐りかけが一番美味いんだぞ」
「何を言っているんだい? 君の性根は完全に腐りきっているからもう手遅れじゃないか」
この女……ああ言えばこう言う。
そんな俺たちのやり取りを見て、ジネットはくすりと笑う。
「すぐに準備しますね」
そう言って、厨房へと入っていった。
「まったく。君にはがっかりだよ」
二人きりになるや、エステラは机に肘をつき、ジト目で俺を見上げてきた。
「盛大に褒められると期待していたのにな」
「頭でも撫でてほしいのか?」
「なっ!?」
エステラは頭を押さえ、突っ伏していた体を起こす。
俺から距離を取るように体を仰け反らせ、ほのかに染まる顔で牙を剥く。
「ボクを子供扱いするな!」
「じゃあ、尻でも撫でてやろうか?」
「……それは、何扱いのつもりかな?」
「女扱いだが?」
「君はいつか裁かれるよ、絶対に」
バカめ。尻を触るのは『嘘』ではない。であるならば、精霊神には裁けまい!
人間相手なら、いくらでも言い逃れは出来る。
俺を裁くなど、何人たりとも出来はしないのだ。
「君ってさ、相当腹が黒いだろう?」
「インドアを絵に描いたようなこの俺の腹が?」
「肌の色じゃなくて、腹黒だって言ってるの!」
「乳首は綺麗なピンク色なんだがな」
「聞いてないし、聞きたくもないよ、そんな情報!」
エステラは耳を赤く染め、そっぽを向く。
いかんな。ジネットと違ってこいつにはいくらセクハラしてもいいような気がしてしまう。
というか、反応が面白くて、「むしろもっとやってください」と言われているようにしか思えない。
が、まぁ……真面目な話、こいつの鋭さは危険だな。
俺が腹黒だと気が付けるのは、それはきっとこいつも同類だからだ。
それに。エステラは、常に何かを隠している。
こいつの目は、そういう目だ。俺も同類だからな、分かるんだよ。
俺が腹黒だって言うんなら……
「お前はどうなんだよ?」
挑発するように言ってやる。
と、エステラは俺をキッと睨み、拳骨を俺の顔にめり込ませた。
「……んごっ!?」
「な、なんでボクが、き、君に乳首の色を教えなくちゃいけないのかな!?」
ち、違う……そうじゃないんだ、エステラよ……
誤解を解きたいのだが、……痛くてしゃべれない…………
あぁ、セクハラもほどほどにしないとこういう目に遭うってことだな……気を付けよう。
「お待たせいたしまし……ふぇえっ!? ヤ、ヤシロさん、どうされたんですか!?」
「気にしなくていいよ、ジネットちゃん。自業自得だから」
「そ、そうなんですか……?」
自業自得というか、エステラの勘違いなんだが……まぁ、自業自得か。
「ジネットちゃん。もしこいつに変なことされたら、すぐボクに言うんだよ」
「え、あ、は、はい」
「それから、これ護身用に持っているといい」
「あの、これは?」
「いいから。使い方は簡単だから。残念ながら殺傷能力はないんだけれど、変態の撃退くらいは出来るから」
「え、げ、撃退……ですか?」
エステラがジネットに何かを渡しているようだが、涙で前が見えない。
くそ。鼻の痛みってなかなか引かないんだぞ。
俺が顔面の痛みをこらえている間、ジネットは食事をするエステラの隣に腰掛けて楽しそうにおしゃべりをしていた。
こいつらは本当に仲がいいんだな。
そんなことを思いつつ、鼻の痛みが引いてきた頃……あいつが戻ってきた。
グーズーヤだ。
息を切らせて食堂へと駆け込んでくる。
結構遠くに住んでいるのかもしれないな。
「そんなに急がなくてもよかったのに」
「き、今日中に払っておかなきゃ、明日の仕事が不安で出来ないんだよ……」
一度自分のホームへ戻り、気分が多少は落ち着いたのか、グーズーヤから敬語が消えていた。表情も、先ほどよりかはしっかりしている。
「ちなみに、仕事は何を?」
「か、関係ないだろ!?」
「世間話だよ。常連さんと楽しむ他愛もない世間話さ」
「……大工だよ! 悪いか!?」
随分と嫌われたものだな。
グーズーヤの剣幕に、ジネットが不安そうな表情で俺を見てくる。状況が分からず戸惑っているのだろう。
エステラは、何かを察したように目を細めている。が、口を挟むつもりはないようで、黙々と川魚の煮込みと固い黒パンを口に運んでいる。
「ほらよ、20Rb! これで文句ないだろう!? その紙を破り捨ててくれ!」
俺は、突き出された20Rbを受け取り、憤るグーズーヤに視線を向ける。
そして、落ち着いた声でこう言う。
「足りないけど?」
「はぁ!?」
グーズーヤが大声を張り上げる。
首と額にはち切れそうなほどくっきりと血管が浮かび上がっている。
「俺が食ったのはクズ野菜の炒め物だ! 20Rbって書いてあるだろうが!? ぼったくろうってのか!?」
そばにあったテーブルを力任せに殴るグーズーヤ。
壊したら弁償させてやる。
「確かに、さっきお前が食ったクズ野菜の炒め物は20Rbだ。間違っちゃいない」
「じゃあなんで……!?」
俺が胸ポケットから紙を取り出すと、グーズーヤが言葉を詰まらせた。
グーズーヤは先ほど、自分が書いた文章を目で追う。
「ここには、なんと書いてある?」
グーズーヤの顔に突きつけていた紙を、近場のテーブルに載せる。
と、ジネットとエステラがその紙を覗き込んだ。
「……これは」
エステラが紙を見て小さく言葉を漏らす。
そして、とっても冷たい目で俺を睨んできた。
口を開きかけるが、今は何も言わず、スッと自分の席へと戻っていく。
去り際の顔は「あとで話がある」と言いたげだった。
俺とエステラが視線を交わしている間、グーズーヤは自分の書いた文章を読み直していたようで、読み終わるや鼻息荒く声を上げる。
「ここには『陽だまり亭で飲食した分の代金を支払います』って書いてあるだけじゃねぇか! だから、クズ野菜の炒め物の20Rbで合ってるだろうが!」
己の正当性を確信し、グーズーヤは勢いに乗る。
だから、俺はあえてゆっくりとした口調で、はっきりと言ってやる。
「お前が初犯だと、誰が信じるんだよ?」
ジネットが厨房にこもることを知り、慣れた様子で食い逃げに及んだこいつが、今日初めて食い逃げをしたなんてわけがない。
「ひ、人聞きの悪いこと言うなよな……しょ、証拠もないくせに……」
嘘吐くの下手だなぁ。
まぁ、『精霊の審判』を嫌って明確な嘘は避けているようだが……
「お前、席に座った後ジネットに『椅子を直したのか?』って聞いたよな?」
「……そ、それがなんだよ」
「ってことは、椅子がガタガタだった時に、お前この店来てるよな?」
「う…………そ、れは……」
「その時、ちゃんと支払ったのか?」
「…………」
「トイレの場所も知ってたよな? 俺は最初どこにあるのかジネットに聞いたけど、お前は、知ってたよな? 前に来た時、ちゃんと支払いはしたか?」
「…………で、でも、今回の件と、それは……」
「もう一度、そこに書かれている文章を読んでみろよ」
机の上に広げられた紙を指さして言う。
そこには『陽だまり亭で飲食した分の代金を支払います』と書かれている。
「お前が、これまで陽だまり亭で飲食していまだ支払っていない代金をすべて払うと、そこには書かれているんだよ」
「待てよ、俺はそんなつもりで書いたんじゃ……っ!?」
「じゃあ、精霊神に判断してもらうか?」
「うっ!?」
俺はゆっくりとグーズーヤを指さす。
「審判を受ける勇気は、あるか?」
真っ直ぐにグーズーヤを見つめそう言うと、グーズーヤは床にへたりこみ、肩を落として己の敗北を認めた。
「……分かった。全額支払う。悪かった……もうしないから、『精霊の審判』だけは、勘弁して……ください……」
こいつが何回食い逃げをしたのかは分からん。自白してもらうほかないだろう。
そこで嘘を吐く可能性は極めて低いと思われる。
怪しければ『何回食い逃げをしたのか』と聞いて、『精霊の審判』にかければいいのだから。
そうして問い詰めたところ、食い逃げした回数は十八回に及び、被害総額は実に640Rbにのぼった。
あいつ、パンとか食ってやがったのか。
またしても持ち合わせがないということで、新たな念書を書かせてグーズーヤには帰ってもらった。
食い逃げ犯がこいつ一人だとは到底思えないが……この噂が広がれば食い逃げ犯はもうやって来ないだろう。
過去分の取り立ては出来なくなるが、それよりも今後の損失を防ぐことが重要だ。
もっとも、食い逃げ犯を見つけ次第容赦なくむしり取ってやるつもりではいるけどな。
グーズーヤが帰った後も、ジネットは深く沈んだ表情をしていた。
「……あのお客さん、また来てくださいますでしょうか?」
「食い逃げなんぞ、来ない方がいいだろう」
「でも……あのお客さん『美味しいよ』って、言ってくださったんです……」
「ジネット」
このお人好しには、はっきりと言ってやる必要があるようだ
「お前が今抱いている感情は優しさなんかじゃない。愚かさだ」
「愚か……ですか?」
「そうだ。そして、それはとても非道なことだ」
「わたしが、非道……」
ジネットを椅子に座らせ、机を挟まずに向かいに座る。
膝が触れ合うほどの距離で向かい合って座り、目を見つめて語りかける。
「お前が自己犠牲精神で、グーズーヤの食い逃げを見過ごしたとしよう。そうしたら、きちんとお金を払って毎日お茶を飲みに来てくれるムム婆さんの立場はどうなる?」
「あ……っ」
そのことに初めて思い至った。
そんな顔をして、ジネットは俺を見つめてくる。
すがるように、教えを請うように、不安をさらけ出すように……
「ムム婆さんは特別裕福というわけではないだろう? 生活をやりくりして、少しでもお前のためになればと、ささやかながら売り上げに貢献してくれているんじゃないのか?」
「……はい。ムムお婆さんは、洗濯屋さんで……良心的なお値段で、いつもたくさんの仕事をされていて……」
「そうやって苦労して得たお金を、お前のために使ってくれるムム婆さんの善意を、お前は無碍に踏みにじってるんだぞ」
「わたしが、ですか?」
「そうだ」
生活を切り詰めてお茶代を出しているムム婆さん。
それよりも値の張る飯をタダで食っているグーズーヤ。
それをどちらも大切な客だと言うことは、ルールに則っているムム婆さんに失礼だ。
まして、食い逃げと知りながらそれを見過ごすなど……
「他の客は無料でも構わないが、ムム婆さん『だけ』は金を払わないとお茶が飲めないのか?」
「そんなことは!?」
「じゃあ、ムム婆さんも無料にするか?」
「…………」
「もし、そうしたいのなら、ここはもう食堂じゃない。お前の爺さんの食堂は、閉店だ」
「……そんな…………」
ジネットは俯き、膝に置いた手をぎゅっと握る。
スカートの裾がシワを作り、小刻みに震える。
「何が大切で、何を大事にするべきか、もう一度よく考えろ」
「…………はい」
「それからな、食い逃げは犯罪だ。許しちゃいけない」
「……でも」
「ほんの出来心で、本当は悪い人じゃないかもしれない。……って、言いたいんだろ?」
「……はい」
「だったら尚のこと、間違ってるって教えてやれよ」
少し、声音を軟らかくして言ってやると、ジネットがゆっくりと顔を上げた。
「……教えて……?」
「あぁ。『そんな悪いことをして、自分の価値を下げるな』って、そう教えてやれよ。お前よく言ってるだろ? 『懺悔しろ』って。それと一緒だよ」
「……懺悔」
ジネットの手が、膝の上から胸の前へと移動し、祈るように組まれる。
「そうすれば、その方は救われるのでしょうか?」
「少なくとも、罪はなくなるんじゃないか。金さえもらえれば、俺はそれ以上追及するつもりもないからな」
「……そう、ですね」
ギュッと手を握り、ジネットは強張っていた頬を緩め、柔らかい笑みを浮かべる。
「でしたら、わたし、頑張ってみます」
誰かを糾弾することのなかったジネットが、今、変わろうとしている。
これで、この食堂の経営も多少はよくなるだろう。
……と、まぁ、そんな講釈を垂れた俺こそが、食い逃げを犯し、その代金もいまだ支払っていないということに気付かないところがやはりジネットだ。
ここで「お前が言うな」と返せれば大したもんなのだが。
「素晴らしい講義だったね」
ジネットに笑顔が戻ると同時に、エステラが手を叩いて俺の前へと歩いてきた。
目が、笑っていない。
「じゃあ、ボクも一つ、罪を糾弾してあげよう……君のためにね!」
言いながら、エステラは机に広げられた紙をバンと叩く。
グーズーヤに新たに書かせた念書だ。
「ボクは言ったよね!? 『領主のエンブレムを悪用することは重罪だ』と!」
「あぁ、言ってたな、確か」
「だったら、これはどういうつもりなんだい!?」
「領主のエンブレムを悪用なんてしてないだろう?」
「まさか、『良い行いに使用したから悪用じゃない』なんて言うつもりかい? 甘いよ! 私的に無許可で利用すること自体が『悪用』とみなされるんだよ!」
「そりゃあ、なあ。無許可で使ったら、どんな理由があってもダメだろう」
「それが分かっていて、どうして……っ!?」
エステラが俺に掴みかかってくる。
襟を締め上げられ、少し息が詰まる。
「ま、まぁ、ちょっと落ち着けよ」
「これが、落ち着いていられると思うかい?」
「いいから、これをよく見ろ」
そう言って、俺は胸ポケットにしまってある紙をエステラの目の前に差し出す。
そこには、双頭の鷲と蛇が描かれたエンブレムの判が押されている。
エステラは俺の襟を離し、その紙を受け取る。まじまじと見つめ、深いため息を漏らす。
「こんなものを作ったなんて……エンブレムの密造は斬首刑だよ?」
「だぁから、よく見ろって!」
俺は、エステラに奪われた紙のエンブレムを指さす。
特に、鷲の顔付近を。
そこに描かれた鷲の頭は、二つともウィンクをしている。
「…………なんだい、これ?」
「可愛いだろ?」
「可愛いだろじゃないよ! なんなのさ、この悪ふざけみたいなエンブレムは!?」
「俺のエンブレムだ」
「はぁ!?」
俺はエンブレムを持っていない。
そして、持っていないなら作ってしまおうと思い立った。
その際、何かお手本になるものはないかなぁと探していたところ、たまたまもらった領主の許可証があったのだ。
「――で、そのエンブレムを『参考』に、俺のオリジナルエンブレムを作成したってわけだ」
「パクリじゃないか!」
「まぁ、パクリであることは認めるが、決して『領主のエンブレム』を偽造したわけでも悪用したわけでもないぞ」
「そんな言い訳が通用するとでも……」
「しないか?」
「…………」
エステラが腕を組んで考え込む。
とてもグレーゾーンだ。だが、決してアウトではないはずだ。
「それに、はっきりと書いてあるんだぞ。ほらここ」
双頭の鷲の胴体に絡みつく二匹の蛇を指さすと、エステラとジネットがそこを食い入るように見つめる。
その蛇の胴体には、まだら模様にも見える書き方で『OBA』『YASHIRO』と書かれている。
「な? 俺のエンブレムだろ?」
「……正直、呆れたよ」
「ヤシロさん、凄いです。よくこんな細かい文字を彫れましたね」
それは、つまようじの先ほどの細かい文字だ。
この細かさで、しかも反転させた文字を書くのは相当な技術がいる。
それをやってのけた俺、えらい!
親方の教えが、こんなところで生きているんだなぁ。『細かいところにこそこだわりを持つ。それが美学だ』と、親方はよく言っていたっけ。
「分かった。今回の件は見なかったことにする」
エステラは疲れきったというような表情で、手をパタパタと振った。
「しかし、こんなことを続ければいつかは領主の目に留まり警護兵が動き出すよ」
各区の領主は、自分の治める区の安全を守るために各自で自警団を持っているのだそうだ。
領主と住民と治安を警護する警護兵が、四十二区にもいるらしい。
日本で言うところの警察みたいな役割だろう。
「そうなれば、似て非なるものなんて言い訳は通用しない。貴族の発言は瑣末な真実くらいならねじ曲げられるからね」
「そいつらこそ、精霊神に裁かれろよ」
「そういう発言を続けているとここにいられなくなるよと、忠告しているつもりなんだけど?」
「……分かった。以後気を付ける」
どうも、『俺のエンブレム作戦』は封印した方がいいようだ。
折角頑張って彫ったのになぁ。
「とにかく、君は行動が突飛過ぎる。もう少し自重することだね」
判を押した紙を俺の胸ポケットへと差し込み、エステラは続ける。
「君がいなくなると、ジネットちゃんが悲しむからね」
言われて、ジネットを見ると……
こくり――
――と、柔らかい笑みを浮かべたまま頷かれた。
……まだ出会って三日目だってのに。
こいつは誰にだってそう言うに違いない。
少しでも会話をした者であれば、いなくなれば寂しいと感じるのだ。
だから、別に、俺がそのことをどうこう思う必要はない。
……けどまぁ、もうしばらくはここにいてやるけどな。
行く当てもないし。
まだ、この街のことも全然知らないしな。
「……分かったよ」
だから、今はとりあえず、そう答えておいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます