3-(10) 「今は湯加減の調整に使っているわ」
10
それから三日が経った。
世界は〔
世界にただよう〔
ちなみにIMAMIは軍事兵器開発が露見し、それに加担していた社長や社員は全員解雇され、加担していた環境省、防衛省の役人も一新された。解雇された役人の天下り云々も問題視されているが、それは政治家が解決する問題だろう。
今見はの問題で少しだけ気まずそうにしていたが、本人が妾の子だったこともあったりして「あの親父はクソだぞ」と相変わらずの皮肉を飛ばしていた。
当然、俺たちにも変化があった。
〔
俺たち五班は全員が編入を希望し、前日まで手続きに忙殺されていた。
全員が一年生になるということもあり、センパイとは同級生になる。なんだか複雑な気分だ。
それとボンクラとトドビーバーがつき合い始めた。昨日、俺たちの知らぬ存ぜぬところでなにかあったらしい。俺はふたりの恋路を生暖かく見守ろうと、そう決めている。
俺個人としてはなにも変わってない。
俺の左胸には〔
受け入れると決めたのだから後悔はまったくない。
ワイシャツに袖を通し、ボタンをとめる。
新しく変わった黄土色のブレザーを着る。濃紺色のスラックスは既にはいている。ネクタイは赤いままだ。
「行くか」
誰に言うこともなく俺はひとり呟いて外に出る。
「遅いわよ」
センパイの――いや躑躅……さんの声が響く。俺と同じ黄土色のブレザーに紺と白のチェックのスカート、赤の帯リボンをつけたその姿は新鮮だった。
今日、新しい高校へと初登校となるわけだが、チームメイト全員(今見を除く)から一緒に行こう、とお声がかかっていた。
だからまあ、全員で待ち合わせをしていたわけだが、躑躅さんが迎えに来てくれるとは思いもよらず、なんだか嬉しい。
ちなみにセンパイではなく躑躅さんと呼んでいるのは本人から「これからは同級生だからセンパイなのはおかしい」とご指摘があったからだ。ごもっとも。
けれど年上なので呼び捨てにするわけにもいかず、俺は躑躅さんと呼ぶことにした。躑躅さんはそれを聞いて少し頬をふくらませていたが、俺にどうしろと。
ちなみに躑躅さんは湯かき棒を背負っていなかった。もう持ち歩く必要はないからだ。
歩きがてら、今、湯かき棒をどうしているのか尋ねると躑躅さんは言った。
「今は湯加減の調整に使っているわ」
俺はそれを聞いて微笑んだ。
今でも、躑躅さんは――
彼女は湯かき棒を振るっている。
彼女は湯かき棒を振るう 大友 鎬 @sinogi_ohtomo
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