3-(6) 「それで大丈夫です。センパイは俺がなんとか足止めしますので」

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「――なるほど。つまり蘆永くんの正体が悪王豚蠅ベルゼブーブという〔異界生物シャドー〕だったわけだ」

「ええ、そしてこの湯かき棒が〔反魔金属オハロフ〕で、紫苑さんが宿ってます」

 俺はことのあらましを旋律さんにざっくりと説明した。

「で、ボクはなにをすればいいのかな? キミはボクになにかやってほしくて悪王豚蠅ベルゼブーブの顔を持ってきんだよね?」

「旋律さんの部屋にある資料は旋律さんが調べたものですよね?」

「正確に言えばボクの研究チームのものも含んでいるけどね。それがどうかしたのかい?」

「つまりそれって旋律さんが監視員である前に優秀な研究員であるってことですよね?」

「そういうことになるね」

「だったら俺がこれを持ってきたことも無駄足にならないわけだ」

 俺がそう言うと、旋律さんは察したのか納得した顔で「なるほど。キミは悪王豚蠅ベルゼブーブの顔を調べてほしいんだね。キミのその選択は正しいと思うよ」

 なぜならボクの専門分野は〔異界生物シャドー〕の生態だからね、任せてくれと旋律さんはつけ加える。

 俺は頭をさげ、お礼を言った。

「とはいえ、そんな短時間で解析できるものではないんだ。躑躅さんが〔異界シェオール〕に行く可能性があるからできるだけ早く解析したいと思うんだけど最低でも一日かかるね」

「それで大丈夫です。センパイは俺がなんとか足止めしますので」

 悪王豚蠅ベルゼブーブの解析を旋律さんに任せた俺は自宅へと帰った。

 冷蔵庫のなかにある豚肉を調理して食べようと思ったが、悪王豚蠅ベルゼブーブの顔が過ぎり一気に食欲をなくす。

 うなだれるように少しだけ目を閉じると眠気が襲ってきた。そのままベッドに寝転がる。

 寝てはいけないと思いつつも今日はいろいろありすぎて疲れが溜まっていた。

 蓄積された疲労は俺に襲いかかる睡魔に味方し、一瞬にして俺を夢の世界へと誘った。

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