2-(9) 「たまたまここに埋めといてラッキーだったっす」
9
「今日は〔
宮直先輩がそんなことを言って〔
俺も「ええ、そうでしたね」などと言って後ろに続く。宮直先輩は俺に対してだけは近寄れるようになっていた。とはいえ、俺がなにげなく手を動かしたり、頭をかこうと手をあげたりすると、ビクッと身体を震わせたりする。
俺たちが〔
〔
〔
〔
〔
もっともそれは昔の話。今は俺の祖父、面舵大全が世界を停滞期にした代償として〔
その〔
「なんなんすか、これ?」
「俺にわかるはずがありませんよ」
宮直先輩の戸惑いに俺も同意する。
実習から戻ってきたら既にこの状態だったのだ。
今見やボンクラ、トドビーバーはグランドにあふれる〔
蘆永の姿は見えない。実習に出てないセンパイの姿も。
「なにが……起きてますの?」
俺の手に引かれて戻ってきた音乗が、グランドの状況を見て震えた声を出す。続く八咲や大山もこの光景に絶句していた。
犬のような顔に猪の牙を持ち、狼のような四肢を持つ二足歩行の〔
そしてにぎり拳ぐらいの大きさの〔
「行くっす!」
宮直先輩のかけ声とともに走り出した俺たちだったが、とたん、後野さんが倒れた。
「祭っち、大丈夫っすか?」
宮直先輩が急いで近寄ると、後野さんから〔
そこから噴き出た〔
「この状況はお前の仕業なのか?」
「いやはやそれは大いなる勘違いである」
「どういうことだ?」
「なぜなら我がこのような状況にする意味がないのである」
「確かにな」
後野さんに惚れきっている
「じゃ、なにしに現れたんだよ」
「我は警告しにきたのである」
「警告っすか? そりゃご苦労っすね。でもこいつら程度なら戦い慣れてるやつらも多いっす」
宮直先輩がそう言うと、
「違うのである。この世界でマツリ嬢が死ねば、我が生き返らせることができないという警告である」
それを聞いて八咲が思いついたことをそのまま言葉に出した。
「もしかして、あんたは〔
「その通りである。とはいえ〔
「お前ら、〔
「当たり前である」
そう言った
「ふむ。時間である。これ以上〔
くれぐれもマツリ嬢を殺さぬように頼むのである。
そう警告した
「好きな女を守るために人に頭をさげにきたってことっすかね?」
宮直先輩が俺に尋ねる。
「案外、いいやつかもしれません」
「あたしはそうは思わない」
「どう思うかは人それぞれだ」
センパイと同時に大山の復讐心も、どうにかしないといけない。そうは思いつつも、今は言い争っているひまはない。
「それじゃ、行くっすか!」
「期待してますよ、宮直先輩!」
「そっちこそっす。祭っちと音っちは任せたっす」
「任せてください」
「こっちだ、おらっ!」
八咲が吼えると、複数の
八咲は
「そんなに気負っちゃダメっすよ」
宮直先輩も同じように感じたらしく、八咲に注意をうながし、そして地面を蹴った。
そこから出てきたのは赤い〔
「
宮直先輩が叫ぶと〔
宮直先輩はそのままそいつを
「いやあ、たまたまこっちに落ちてた〔
一方の大山は
その
大山もその腹へと
目の前の敵にあるだけ全部の憎悪をぶつけていた大山は、
不意を打たれた大山は
そのとき、
「どっせい!」
気合と怒りが混じりあった言葉を叫びながら、重戦車のような体躯のトドビーバーが大山をかばうように立ちはだかり、
「余計なお世話よ」
「じゃかしい。あたいは余計なことが大好きなんじゃい!」
図太い声でトドビーバーが言うと大山はくすっと笑って、
そこまではチームメイトたちを見る余裕があった俺だったが、空から
俺は
だからちっとも数が減らない。
脱いだ制服を広げ、後野さんと音乗の上に被せたことが功を奏したのか、
必死に
「なに、やってんだよ!」
「どうにもこうにも武器の相性が悪すぎてな、一匹も落とせない」
助けに来てくれた八咲も
「ちょこまかと、うっとうしい!」
イラついた八咲は吼え、でたらめに
俺は
ふと今見の姿に目が止まる。今見は武器をどこかに落としたのか、それとも捨てたのか、どちらにしろなにも持たずに逃げ回っている。
今見は必死に逃げ回りながら、スマホを取り出し、なにかをしようとしていたが、〔
しかも
スマホを壊した
やられる! と思ったとき、何人かの上級生が助けに入り、かろうじて今見を救い出した。
「大丈夫か? 武器がないならさがってろ!」
今見を救った上級生のひとりが叫ぶも、今見は腰を抜かしたのか、その場に座り込んでいた。
俺はさらに周囲を見回し、そして見つけた。
「八咲、少しだけここを離れる!」
どこ行く気だよ、という八咲の声を無視して俺は
構わず俺は走り、今見が落とした
この剣よりもはるかに重い
両手で
回転切りによって空気とそのなかをただよう〔
その結果、空気中の〔
そしてまたその
「待たせたな」
そう言ってようやく薬袋先生が〔
実習の終わりはばらばらなため教師たちが最後に〔
薬袋先生ほか教師らが各々の武器を取り出し、慣れた手つきで〔
俺は先生たちの手さばきに少しだけ嫉妬した。
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