6.1

「おはようございます」

 職員室の扉を開けて、元気よく挨拶をする。

「しばらくの間、先生方にはご迷惑をおかけしました。今日から復帰いたしますので、またあらためて、よろしくお願いします」

 入口で頭を下がる。

 だが誰も話しかけてこない。ひたすら事務作業を進める音だけが、頭上を通りすぎる。面をあげてみると、やはり誰も私のほうを見てはいなかった。

 先生方を怒らせるようなことをしただろうか。それとも忙しさに気をとられ、私に気づかないのだろうか。不安を抱えながら職員室に入り、自分のデスクに向かった。すぐ隣には、出席簿に視線を落とす花本先生がいる。

「花本先生、いろいろとご迷惑をおかけしました」

 彼女なら応えてくれるだろう。そう思って声をかける。

 ちらり、と横目で見るだけで、彼女はしゃべらない。

「あの、先生、どうかされましたか? さきほどから様子が」

「いえ、特には」

「ですが……」

「すみません、HRの準備があるので」

 そう言って、私との会話を打ち切ってくる。やはりおかしい。花本先生だけのことではない。先生方全体が私を避けているというか、無視しようとしている。

「国立先生、よろしいでしょうか」

 すると多崎教頭が、真面目な口調で話しかけてきた。

「多崎先生、その、これは……」

「校長室でお話しましょう。ここでは人目があります」

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