第16話 饒舌な艦隊
颯太は不自然な回転を感知して追っていた。路地裏へと入っていく。
少し開けたところに出たとき、回転はいきなり5つに増えた。完全に囲まれた。
包囲は幅を狭め、回転の主たちが姿を現した。
彼らは海軍将校のような服を着て、顔の前にでかい扇風機を捧げ持っていた。回転の正体はこれか。
「敵艦包囲成功」
取り囲んでいる奴らの1人が言った。
「まずは、軽く挨拶だ。戦艦スティーブ・ジョブズ、奴の右舷に一発お見舞いしろ!」
何をされるのかと思ったら、5人のうちの1人が無防備にトコトコと近づいてくるので、颯太はそいつの足
をひっかけると、あっさり転んだ。
「や、やられました。私はもうだめです。提督に栄光あれ」
「ばかな! スティーブがやられるなんて!」
「提督! 敵にこちらの動きが読まれています!」
「さては、スパイがいるな? 貴様か?」
「ち、違います! ぐわ――――!」
あろうことか、提督と呼ばれた男は当てずっぽうで味方を攻撃して沈めてしまった。
「ふっふっふっ、この時を待っていた! クーデターだ! 駆逐艦カーネル・サンダース! 提督を攻撃しろ!」
しかし、カーネル・サンダースが攻撃したのは、クーデターを宣言した男だった。
「貴様! 二重スパイだったのか!」
「よくやった」
「しかし、貴様も道ずれだ!」
「提督に栄光あれ!」
なんだかよく分からないが、敵4人はほぼ勝手に倒れた。あとは提督を残すのみ。
「ふっ、君は私をみくびっているかもしれないが、それは考え直した方がいいぞ。私の家は由緒正しい血筋で……」
颯太は何の気なしに提督が捧げ持つ扇風機のスイッチを切ってみた。扇風機は止まった。
「す、スクリューがぁぁぁ」
と言って、提督は崩れ落ちた。
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