第15話 悪夢

 真夜中、天は目を覚ました。

 びっしょりと寝汗をかき、呼吸も乱れている。無理もない。それはそれは、恐ろしい悪夢を見たのだ。

 天は上半身を起こした。その時、天の頭上に鋼鉄の迷惑が浮かんで停止しした。

 すると、天の顔から一切の表情が消えた。手にはいつの間にか一振りの包丁が握られていた。

 天は隣で寝ている地の枕元にひざまずくと、包丁を両手で持って振りかぶった。

 そのとき、何かを感じた地が目を覚ました。しかし、身体が動かない。

「やめてください! 天先生!」

 全力で叫ぶが、無情に振り下ろされる包丁。


 そこで、地は目を覚ました。

 びっしょりと寝汗をかき、呼吸も乱れている。無理もない。それはそれは、恐ろしい悪夢を見たのだ。

 地は上半身を起こした。その時、地の頭上に鋼鉄の迷惑が浮かんで停止しした。

 すると、地の顔から一切の表情が消えた。手にはいつの間にか一振りの包丁が握られていた。

 地は隣で寝ている人の枕元にひざまずくと、包丁を両手で持って振りかぶった。

 そのとき、何かを感じた人が目を覚ました。しかし、身体が動かない。

「やめろ――――! 地――!」

 全力で叫ぶが、無情に振り下ろされる包丁。


 そこで、人は目を覚ました。

 びっしょりと寝汗をかき、呼吸も乱れている。無理もない。それはそれは、恐ろしい悪夢を見たのだ。

 人は上半身を起こした。その時、人の頭上に鋼鉄の迷惑が浮かんで停止しした。

 すると、人の顔から一切の表情が消えた。手にはいつの間にか一枚のザルが握られていた。

 鼻の穴にはマッチ棒がかまされ、頭には水玉模様のねじり鉢巻き。

 人は完全に無表情のままドジョウ掬いを完璧に踊り切った。

 そこで、人は我に返った。

「なんで俺だけこうなるんだよ?」

 頭上の鋼鉄の迷惑に問うても、ただクルクルと回るだけだった。

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