第14話 喪失感
颯太は鋼鉄の迷惑をまいて家に帰った……はずだった。
やがて鋼鉄の迷惑も帰ってくる……はずだった。
しかし、アイロン騒動で夜の街に飛び出して以来、鋼鉄の迷惑は帰ってこない。
「良かったじゃないか」
なんて言われたりもした。
そりゃ、「迷惑」なんて呼んでたんだから当然だろう。
でも、颯太は激しい喪失感に襲われていた。
鋼鉄の迷惑の居る暮らしを激しく求めていた。
颯太は翔太と悠太に相談した。すると、翔太が、
「まず、アイツ実在したのか?」
と言い出した。
「そこから疑うか?」
と颯太。
「だって、いろいろ物理法則とか無視してなかったか? やっぱりおかしいところ満載だったろ?」
翔太がそういうので颯太もムキになって、
「だって、翔太も見ただろう?」
と大きな声で言ってしまう。
「なぁ、それって、そんなに大事なことか?」
突如、悠太が沈黙を破る。
「大事なことは颯太の中にあるんじゃないか?」
颯太の目をまっすぐに見つめて言う。
「そうだった! 例えアイツが夢や幻でもいい! 俺はアイツに居て欲しい」
颯太の言葉に、もはや迷いはなかった。
「でも、手掛かりもなしに探せるのか?」
翔太が言う。
「意地悪で言ってるわけじゃないぜ」
「それが、ないわけじゃないんだ」
「ええっ?」
これには、翔太も悠太もちょっと驚いたようだった。
「アイツと暮らしていたセイかは分からないんだけど、回転を感じる能力が身に付いたみたいなんだ」
「『回転を感じる』ってどういうことだ?」
「この前、コインランドリーの近くを通ったら、回転の位置や向きや大きさや数を感じたんだ」
「はぃ?」
「で、知ってるコインランドリーだったから、乾燥機や洗濯機の配置を思い出して当てはめてみたんだ」
「それで?」
「コインランドリーの中を覗いたら、予想通りの台が稼働中だったんだよ」
「だからって」
「アイツの回転はヘンテコだから、ある程度近くでアイツが回転すれば絶対感じ取れるはずだ!」
「じゃあ、結局、あてもなく街を探し回るのか?」
翔太が言った。
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