出会ってはいけなかったふたり、けれども、出会って欲しかったふたり

ハイファンタジーは、その世界観に読者を引き込めるかどうかが、鍵となると思う。
この作品は短いプロローグでグッとその世界に引き込まれる。
ミステリアスでつかめない青年と、弱虫で単純な獣の女の子。真逆なふたりの物語が交互に丁寧に織り込まれる。そんなふたりが出会ってしまったらどうなるのだろうか?
ふたりの世界が交わり、ひとつになってもなお、青年イリヤはミステリアスなまま。対して、獣の女の子エーリャは単純で健気。
むしろ、ふたりの違いが、出会って以降、より一層引き立つ。
エーリャがとにかく可愛らしい。そんなエーリャの純粋な思いが、複雑なイリヤの心を解してくれたらいいのに。そんな風に願いながら、じっくりと浸れる物語。