第二十七話 午後四時 アルバート

 その頃、アルバート王子はカール国王の病室にいた。


 立体画像の父は、入院する数年前のように背筋を伸ばして、微笑んでいるいる。その姿を真っ直ぐに見つめながら、アルバートはこう言った。

「私は……今、どうしたらいいのか、どうすべきなのか、まったく分からないのです」

「ほう」

 カール国王が眼を細める。

 アルバートは少し項垂うなだれて、言った。

「父さんが統治している時であれば、このような治安維持軍の介入を許すことはなかったはずです。私が国王を代行しているのを見計らって、手薄になっていることを狙って、このタイミングでやってきたのではないかと思います」

 これが、他の誰にも決して口にすることのない、アルバートの本音である。

 国王は笑みを絶やさず、その言葉に答えた。

「いや、本当にそうだとしたら、それは治安維持軍の明かなミスだよ」

「どうしてですか?」

 驚いて顔を上げた王子に、国王は相変わらず春風のような穏やかさで、こう告げた。

「なぜならば、私が統治している時だったら、星の住民達もまずは私の危機管理能力に依存した行動をとっただろう」

 何か言いたげな王子を右手を挙げて制すると、カール国王は話を続けた。

「しかし、王子が統治していることで、彼らは王子を守るために自主的に行動することになる。実はこれが一番怖い。この星は最終的には住民達の総力戦で動く」

「私には何ができるのでしょうか」

「彼らを信じることだね。そして、彼らが信じる自分を信じることだ」

 カール国王は王子に向かって、いたわるように右腕を伸ばす。そしてこう言い切った。


「その点において、王子は私を軽く凌駕りょうがする。まったく、治安維持軍が可哀想になるよ」

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