第六話 午後十時 アデニール及びキール

 末梢神経に髪の毛を数本引っ張られたくらいの微弱な刺激を感じ、アデニールは回線を繋いだ。

(キールです)

(アデニールだ。今どこにいる)

(近くのホテルにおります。本体は宇宙港に貨物船として停泊しており、二分あれば起動可能です)

(そうか)

(ご命令を)

(まだ勘にすぎないのだが、この惑星に関してなにか進行しているような気がする。些細な兆しでもかまわないから、収集してくれないか)

(要請ではなく、命令でお願い致します)

(――命じる)

(御意! 繰り返しで申し訳ございませんが、私へのお気遣いは無用です)

(そうは言ってもな、私にはなかなか素直には受け入れられないのだよ)

(――都市管理者に把握されないよう、情報収集にはこの秘匿回線を使います。繋がりにくくなりますので、次の連絡は私から)

(頼む。あ、いや、命じる)

 アデニールとの回線が切断された後、キールは感情表現モードが苦笑になっていることを認識した。

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