第七章

以下未修正

虚無の呪い

  

 ・・・・・・事の一部始終を見ていたルイズは、呆然とその場に立ち尽くした。

 最初は嘘だと思った。だが才人と罵りあい殴り合って、やっと本音を吐き出すほど自らを嘘で塗り固めていたジュリオは狼狽し、剥き出しの心で叫んでいた。

 その様子からは冗談や演技などという言葉は、微塵も浮かんでこなかった。

 そうだ。まずは才人に、知らせなくちゃ。

我に返り、テレポートを唱えるため立ち上がる。だが強烈な目眩が襲ってきて岩場に足を取られ、ルイズは躓き転んだ。

 竜の巣に来てからずっと、ルイズの体調はおかしかった。 

 体は自由に動くし、どこが痛いと言う話じゃない。ただ体の感覚が、希薄になった気がしたのだ。

 海に入っても冷たくない。シエスタの料理の味が普段より薄くなった。一日中泳ぎ回っても、疲れを感じなくなった。 

 そんな普段なら気付かない程度の、小さな違和感だ。

 エルフたちに処刑されようとしたときの魔法のせいかと思ったが、みんなにそんな素振りはなかった。気になってこっそりルクシャナに相談してみたりもしたが、どうにもなっていないと断言され安心し、ルイズは今までずっとほっといていたのだ。

 体調不良。そう思っていた体の異常が、虚無の毒に冒されたものだったとしたら。

 もし、虚無に目覚めて日が浅いジョゼットがそう長くないというのが本当なら。

 長い間唱え続けてきた自分は一体、どれほど生きられるのだろう?

 ルイズは頭を振って、弱気になる考えを追い出した。

 こんなのだいたい、嘘に決まってる。単なる気のせいだ。そんなわけがない。

 才人から聞いたが、ヴィットーリオたちは聖地の準備とかいって勝手に単独行動をとったそうではないか。説明すればいいものを、わざわざアンリエッタを欺いて。

 そんな嘘つきたちの言葉を信じるわけにはいかない。海母をこんな遠いところに呼び出して話し合い、駄目なら実力行使という時点で、ルイズはすでに不信感を覚えていた。 

 ルイズは再び立ち上がり、才人の元へ行くためテレポートを唱えようとする。 だが握っている杖が小刻みに震え、うまくいかない。ルイズの心は、不安で一杯だった。

「・・・・・・知ってしまった、ようですね」

 そしてそんなルイズの背後に、いつのまにかロマリアの教皇はたたずんでいた。

 ルイズが咄嗟に杖を構えるとヴィットーリオは両手を上げ、害意がないことを示した。

「まずは驚かせたことと、いままで告げずにいたことを謝らせていただきたい」

 言葉と共に、頭を下げる。そしてルイズの返事も聞かず、すぐさま話し始めた。

「始祖は自分の子供たちに虚無を託した際、弟子のフォルサテに“虚無”の制御をお願いしました。幼い三人の担い手が強大な力を持つが故に、人の道を踏み外さぬように。・・・・・・以後ずっと、フォルサテの“虚無”を継いだ者はその責務を全うしてきました」

 ルイズはじりじりとヴィットーリオから距離を取りながら、気付かれないようテレポートを唱え始めた。

 先程のジュリオとジョゼットのやりとりだって、自分を踊らせるためだけの茶番なのかもしれなかった。これ以上ここにいたら、何を吹き込まれるかわかったものではない。 

 詠唱は終わらせた。あとは杖を振り下ろすだけだ。

 しかし、ヴィットーリオの言葉がルイズをその場に縫いつけた。

「これから話すことは、すべて歴代の教皇から受け継がれてきた紛れもない真実です。始祖の名に懸け、誓いましょう」

 ルイズは再び驚愕した。これはもう自らに一種の“制約”をかけたのと同義だ。只のブリミル教徒が言うのとは訳が違う。ロマリアの教皇がそのようなことを口にしたならば、たとえ一字一句違おうとも始祖に背いたことになる。

 自分一人に吐くには、あまりに大き過ぎるリスクを孕んだ嘘だ。あり得ない。

 そしてここまで言うのならば、重要な情報だろう。単なる偶然か仕組まれた必然かは知らないが、この場に才人もいなかった。

 神の心臓と呼ばれるリーヴスラシルの役割。サーシャがブリミルを殺したという、六千年前の真実。自分の身体の異常のことも、何かがわかるかもしれない。

 戸惑うルイズの様子を見て、ヴィットーリオは会話を再び開いた。

「始祖の祈祷書の一節を、覚えていますか?」  

 突然そう問われ、ルイズは曖昧に頷いた。

 実のところ、あまり記憶にない。ブリミルの名前が綴られたあの前書きが読めたのは、タルブ上空で虚無に目覚めたときの一度きりだ。それからは何度読み返そうとも、最初のページに文字が浮かび上がってくることは一向になかったのだ。

「“『虚無』は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。時として『虚無』は、その強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ” ・・・・・・始祖の祈祷書には、こうあります」

 ヴィットーリオは、続ける。

「四の系統や先住魔法を扱う場合その消耗は微々たるもので、生涯唱え続けようとも問題はありません。しかし、虚無の消耗量は莫大です。いくら担い手が十数年精神力を蓄え続けようとも、一回の詠唱であっという間に使い果たしてしまう。・・・・・・ならばその後の精神力は、どうやって蓄えるのでしょう?」

 ルイズは気付いた。いつのまにかヴィットーリオの手には、古ぼけた鏡があった。

「これは始祖の円鏡というものです。始祖の人生と彼の残した最後の虚無、聖フォルサテが後の担い手に送った言葉を写し出すことができます」

 ヴィットーリオが何事か呟くと、円鏡がひとりでに光り出した。眩しい。だが当のヴィットーリオはルイズが目も開けてられないほど光る鏡を直視しながら、書いてあるであろう何かを読み上げる。光と共に、朗々と賛美歌のようなルーンが洞窟の中を駆け巡る。 

 詠唱が終わりロマリア教皇は円鏡から顔を上げると、ルイズに円鏡を手渡した。

「貴方に必要なものだけ、知りたいと思えば読めるように解放しておきました。疑問などがありましたらどうぞ。お答えします」 

 声はもうルイズの耳に入らない。目の前の鏡の中では古代のルーンが踊っている。

 “我が名はフォルサテ、始祖である師の右腕と頭脳を司った者なり。我は師の言葉に違わず従い、師亡き後の三人の担い手を見守った。彼等は“虚無”を使いて人を率い、王国を築き始めた。一人は皆を幸せにするため。一人は師を殺めたエルフに対する復讐のため。一人は大切な者を守るためと言いて使った。

 幸い、師から直接虚無を託された彼等は無事に生涯を終えられた。だが継承が続くにつれ、この“毒”はより強力なものとなるであろう。

ここで我は、懺悔と謝罪を述べよう。

我は過ちを犯した。虚無は我に適合しなかった。よって我が虚無を継ぐ担い手は常時精神力を対価として払う。覚悟をしておいてくれ。

 ここから先は我自ら“虚無”を酷使し、進行の段階による症状を明記したものである。

 これでもまだ、我が罪を贖うには足りないことは承知している。許してくれ。 

 決して担い手を呼び覚ますことなかれ。この文読ませること、なかれ・・・・・・”

 そこでルイズは、鏡から目を逸らした。そこから先を読むことがルイズにはできなかった。自分の身に起こっている何かを知るのが、怖かったのだ。

「彼は罪な男でした。平民であるにもかかわらず“マギ族”を名乗り、始祖の恩恵を授かりました。彼が自らの愚を悟ったのは、彼の身体を襲う異変と、虚無が担い手に及ぼす負担のことを祈祷書より知ったからです」

 ただ固まるルイズに、ヴィットーリオは独白を続ける。

「“大隆起”のように、根拠もなしに疑わしいものを信じるなど無理な話です。ですが真実とは、時として残酷なものです。わたしの口から伝えられないほどに・・・・・・。31代の担っていない教皇の足元に始祖を敬愛した担い手達の屍があることも、六千年間そのことに誰もが疑問を抱かなかったことも、今から考えてみれば悲しきことです」

 くるりと踵を返すと、彼はルイズに背中を向けた。

「それでは用事があるので、わたしはここで失礼させていただきます。鏡を返すのはいつでも結構です。ああ、無くすことがないようにしてください。わたしとジュリオにとって探し出すことは造作もないことですが、貴方のためにも急がねばならないので」

 テレポートを唱え、ヴィットーリオは虚空へと消えた。

 ただ一人その場に残されたルイズは、再び才人を探しに走りだした。


 夕焼けに照らされ海底が柔らかい朱に染まり、見る者に幻想的な印象を与える。

 ティファニアはイルカに乗り、そんな珊瑚礁を突き進んでいた。

 珊瑚礁は次第に途切れ白い砂浜になり、巨石を境にその砂浜もぷつんと途切れた。辺りにいた色とりどりの魚たちも巨石の周りに集まり、その境界から先にはいない。

 巨石から先は、切り立った崖になっていた。下を見やると、浮遊感を感じさせるような深い闇があった。

 “この辺りはね、巨大な火山島が沈んだ辺りなの。で、私たちがいるこの巨大な噴火口の上に珊瑚礁ができたってわけ”

 ルクシャナからそう説明されていたので、ティファニアは驚かなかった。

 日はもうほぼ沈み、海を染める朱には次第に黒が混ざっていく。振り返るが、もう自分がどこにいるかすらも分からないほど遠くへきた。誰かが追いかけてくることは、あり得ないだろう。

 イルカは最初はティファニアを楽しげに運んでいたが、次第に不審がるようになり、スピードも徐々に遅くなっていった。今では人が泳ぐスピードとそう変わらない。

 そしてついに、イルカは止まった。淡い光を透過した海水のスクリーンに、影が浮かび上がったからだった。ここからかなり離れているが、影は不自然なほどに大きい。どうやらここが、目的地のようだ。

「ここまでつれてきてくれて、ありがとね」

 ティファニアは礼を言い、イルカから降りる。そしてそのまま影のよぎる方へ泳ぎだす。

だが、イルカはティファニアの前に回り込み、その鼻先で彼女を押し返した。

「だいじょうぶ、すぐ戻るから」

 ルクシャナには息ができる魔法しかかけてもらっていないので、実際には水中でゴボゴボ言っているだけだ。しかしイルカは首をイヤイヤと横に振り、とおせんぼをやめない。

「・・・・・・ごめんね」

 ティファニアはそう言うと水面に顔を出し、小さくルーンを唱えたあと再び潜り、イルカの頭に向けて杖に溜め込んだ呪文を解き放った。イルカは辺りを見回したのち、首を傾げ、ふらふらとティファニアの元から離れていった。

 果てしなく広い海。一人取り残されたハーフエルフは、再び前へと泳ぎ始める。

 手で水をかくたびに、あの光景が鮮明に蘇る。

 ルイズと才人が言い争っていた理由。自分の使い魔に、才人がなってしまったから。

 才人は嘘を吐かなかった。懸命に自分との約束を、守ろうとした。

 遠目に見ても分かるほど顔を歪ませながら。震える声を、必死に抑えこみながら。

 あのときやっと、ティファニアは自分が才人にどれだけ辛い思いをさせたのかを知った。

  ボロボロになりながらも、必死に自分のことを考えてくれた才人。

 対して自分はどうだ。使い魔になった才人は少しでも、自分のことを見てくれるだろうか。わたしの想いに応えてくれるだろうか。そんなことばかり、考えていた。

 才人とルイズの絆に、消えない傷をつけたのは自分だ。償うには、これしかない。

 才人との思い出は消せても、“忘却”は想いを消すことはできない。

 アクイレイアでルイズが失った記憶を取り戻したように、もし“忘却”で自分の記憶を消しても、才人はきっと自分の想いを揺さぶり、記憶を呼び覚ますだろう。

 それでは意味がない。ならば、この世から主人である自分が去ればいい。

 そうすれば才人は自分の使い魔じゃなくなって、ルイズと仲直りできる。

 近付くにつれ大きくなっていく黒い影は、次第に形を取り始めた。幸か不幸か現れたその姿は、才人と戦った海竜だった。傾げた下顎に深い傷があったので、すぐにわかった。

 海竜はティファニアのことを覚えているらしく、水中にもかかわらず怒りを表すように盛大に吼えた。海水が震え、鼓膜が叩かれる。

 これでいいの。わたしさえいなくなれば、才人もルイズも、幸せになれるから・・・・・・

 顎を大きく開き、海竜が迫ってくる。時間をゆっくりに感じながら、ティファニアは使い魔のことを思い出した。

カスバの牢屋で弱気になった自分を励ましてくれたこと。自分の使い魔になってくれたこと。自分に銃を向けたファーティマの間に割り込み、身を挺して盾になってくれたこと・・・・・・。

 母の故郷へ来て、辛いことはたくさんあった。でも振り返ると、才人と一緒に過ごした時間はかけがえのないものとなって自分の寂しさを埋めてくれていた。 

 もう海竜は目の前だ。鋭利な牙を剥き出しにして、食らいつこうとしてくる。体は震えた。怖かった。死ぬのがではなく、才人に二度と会えなくなってしまうことがだ。  

“さよなら、サイト・・・・・・”

 ここにはいない使い魔に、ティファニアは別れを告げた。届かない言葉は虚しく泡となり、海面へと浮かんでいく。頬を伝った一筋の涙は海水と混ざり、溶けて消えた。

 だがその時、何かが海竜の頭上辺りから降ってきた。

 次の瞬間、海竜は激しくのたうちまわり始めた。水泡が立ちのぼる。

 水煙で白く染まった視界から、自分に向かって振りかぶられた海竜の巨大な尾が見えた。ティファニアは思わず目をつぶったが、いつまで経っても何も起きない。

おそるおそる目を開けてみると、才人の背中が見えた。

 ルクシャナから海の魔法はかけてもらってないらしく、息を止めたまま肩を上下させている。それでも自分に再び襲いかかろうとする海竜を、才人は鋭い眼で睨みつけている。

海竜の鱗は、ほぼ剥がされていた。殺してしまわないよう、才人は手加減したのだろう。

 結局、剥き身の海竜は忌々しそうに唸ると全速力で逃げ去った。

 ティファニアが駆け寄るが、気づいた。なにやら才人の様子がおかしい。

 そんな疑問が浮かんだのと同時だった。急に口から息と共に大量の血を吐き出すと、才人は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。胸のルーンからも血が滲み、辺りが朱に染まる。

 ティファニアが動揺している間にも、才人はみるみる海の底へ沈んでいく。慌てて追いかけ手を掴み、海面へと浮かび上がる。 

 才人は呼吸をしていなかった。胸に耳を当てるが鼓動も聞こえない。出血も止まらない。 ティファニアはパニックになってしまっていた。

 どうしよう、このままじゃサイトが死んじゃう。でもどうすれば・・・・・・

 そんなとき、才人が握ったままのデルフリンガーがすぐさま鞘から出てきて叫んだ。

「心臓を動かせ! そうすればルーンも収まって血も止まる!」

 いつになく真剣味を帯びた声を聞くが、どうすればいいか分からない。自分は虚無の魔法しか使えないし、辺りには誰もいない。

「肺に直接酸素を送り込むんだ、早く!」

 真っ白になった頭に声が飛び、ハッとして頷く。ティファニアは深呼吸し、唇を重ね息を吹き込んだ。

 頬を軽い朱に染まらせながら、必死に才人の呼吸を促す。

 何度かそれを繰り返すと、才人はうっすらと目を開けた。いつのまにかおびただしいほどの出血は嘘だったかのように、ピタリと止まっていた。

「げほげほッ、げほッ!」

「サイト!」

「・・・・・・よかった、無事なんだな」

 才人の瞳から、涙が溢れた。理由は、安堵だけではなかった。

 間に合わなかったあのときとは違う。今度はちゃんと助けられた。大切なものを、自分は守り通せたのだ。 

「ありがとな・・・・・・、生きててくれて、ありがとな・・・・・・」

 ティファニアがファーティマの凶弾に倒れた時から才人をずっと責め続けてきたもの。ファーティマの暴走を止めても、ルイズたちを救っても消えなかった後悔。

 だがいま、その鎖は解き放たれた。才人はやっと、自分を赦すことができたのだ。

 だが、ティファニアにはその言葉の、涙の意味がわからなかった。

「なんで? どうしてサイトはわたしを助けたの? わたしがいなくなれば、サイトはルイズの使い魔に戻れるのに。サイトがあんなに苦しんでるのも知らないで、わたしずっとサイトが自分の使い魔になってうれしい、って喜んでたのに。こんなわたし死んだ方がいいにきまってる。なのに、なのに、なんで・・・・・・」

 虚ろな瞳で肩を震わせながら自分を傷つけるティファニアを、才人は優しく抱きしめた。

「違うよ」

  才人は言う。その声はささやくように小さかったが、不思議とそこに弱々しさはない。

「生きてちゃいけない人間なんて、この世に存在しない。大丈夫。テファはきっと、誰よりも幸せになれるから。それまで俺が、テファを守ってやるから」

 その言葉を聞いた途端、ティファニアの虚ろな瞳から涙が流れた。

 サモン・サーヴァントを唱えてからは喜びを感じる自分を責め続け、こんな自分に生きる意味はあるのだろうかと考え続けていた。そして才人の元からルイズが去ったとき、自分は自らの意思でこの場所に来たのだ。

 海竜に食べられ、何一つ残さずこの世から去ればみんなは悲しまない。きっとすぐに、自分のことなんか忘れてくれるだろう。そう考えていたのだ。

 でも、それは間違いだった。

 自分には、使い魔がいた。自分のことを案じて、手を差し伸べてくれた才人がいたのだ。

「ごめんな、分かってる。約束を破った俺が悪いんだ。だけど、もうこんなことしようなんて思っちゃだめだ」

 なんでここに自分がいるのか、ここに何をしに来たか、才人は分かっているのだろう。

それでもいま、この場に才人はいた。愛する本当の主人を捨ててまで、彼は自分の元へやって来たのだ。

 才人が謝る道理は微塵もない。全部、才人に迷惑をかけた自分が悪いのだ。

 ティファニアは謝ろうとしたが、嗚咽が邪魔をして声が出ない。言葉の代わりに涙が溢れ出てきた。何度も何度も目尻を拭うが、止まらなかった。

 才人は黙って、自分の胸で泣きじゃくるティファニアの背中を優しくさすった。

 ウエストウッドでルイズのことを話して泣いたあのとき、この優しい女の子が自分にしてくれたように。

「大丈夫。俺は大丈夫だから、心配すんな」

 ティファニアに。そして自分に言い聞かせるように、才人は呟く。

 そうだ。大丈夫。もう隠さなくていいんだから、今度あったときはきっといつも通りの二人に戻れるはずだ。

 使い魔がどうした。そのくらいで、自分たちの絆は崩れない。 

 そうだろ、ルイズ・・・・・・。

沈みゆく鮮やかな夕日を眺めながら、才人心のなかで何度もそう繰り返した。

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