第四話 ネオ巨乳《ボイン》獣の脅威! 貧乳VS巨乳史上最大の決戦!
ACT.4-1 悪巧みは会議室で(その3)
株式会社ドッピア大会議室、兼、TKB団本部。
「申し訳ございません。一度ならず、二度ならず、三度まで作戦に失敗しようとは。この身、不甲斐ないばかりですわ……」
レディ・Fは、テーブルに頭が付く勢いで深々と頭を下げる。
「頭を上げてくだサイ、レディ・F。作戦そのものは悪くありませんデシた。ただ、愛ちゃ……学園長がこちらの想像を凌駕するぐらい大人げなかったのが問題なのデーーーーーーース!」
「そうだよ、姉さ……レディ・F! あれは完全に不測の事態だよ!」
落ち込むレディ・Fを、プレジデントKとセバスチャンがフォローする。
だが、その二人よりも、
「その通りだ。あの学園長が用量を守らずにかぶれて医者に診せたのが原因で、ジェルの欠点がバレたのだろう? 用量さえ守っていれば自覚症状もなく医者に診せようなどとは思わんものを……しかも、向こうには知香君がいる。彼女なら一晩もあれば治療してしまうのもどうしようもない」
プロフェッサーπの言葉こそが、最もレディ・Fに効果的なのは最早自然の摂理。ガバッと顔を上げると、詰め寄る勢いで言葉を紡ぎ始める。
「ああ、プロフェッサー! 失敗したわたくしへのお優しくも勿体なきお言葉! そんな貴方をわたくしは深く愛しています! ですから、わたくしをお嫁さんにしてください!」
「い、いつもいつも、何故最後は求婚してくるのだ! レディ・F」
「それは、プロフェッサーを愛しているからですわ! 愛しています愛しています……」
「既に会議の風物詩デスが、もう少し相手にしてあげてはどうデスか?」
「そうですよ! 姉さんは至高で究極で極上の女性です! そんな姉さんの想いを蔑ろにするんですか?」
「……もういい年のおっさんには、勿体ないのだよ」
そんなプレジデントKとセバスチャンの言葉に、プロフェッサーπは視線を逸らせて言葉を濁す。
「愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています……」
一方で、レディ・Fは若干ヤンデレ気味に延々愛の言葉を紡ぎ続けていた。
「とはいえ、これは由々しき事態なのデーーーーーーース!」
レディ・Fが落ち着くのを待って、プレジデントKが仕切り直す。
「そうだな。非常に不本意であるが、現在の我輩のBOINの出力ではペタバイトのPETAの出力を上回ることができん。奇しくも、一度弱体化させて徐々に力が戻るのを目の当たりにしたことで、その稜線が浮き彫りになったぐらいだ……」
そこで、少し間を置き、決定的な言葉を口にする。
「認めざるを得ん。レディ・FがBOINを使って生み出せる『
「そ、そんな……」
レディ・Fが顔を青くする。
「いや、これは君のせいではない。飽くまで我輩のBOINの出力が上がらんのが問題なのだ。君のサイズならもっと出力が上がるはずが上げられないのは、BOINの調整不足、我輩の未熟さだ」
「あ、そ、そんなことは……」
レディ・Fは何か言いたげな様子だったが、
「気休めなどいらぬ。ここが今の我輩の限界。ゆえに、更にBOINを調整して最大限の効果を引き出すのが、我輩の研究者としての矜持を保つには最善手」
プロフェッサーπはその言葉を遮り、力強く言い切った。
「ただ、一方で静真のPETAとかいうふざけた技術が絶対的に優れているという訳でもない。奴は、PETAの力を最大限以上に引き出す適合者を見出した。その一点のみの差だ。今回の作戦で、サイズが小さくなるにつれて上がる出力の、最後の伸びが異常だった。あそこまでの貧乳を見付け出した、奴の運が大きい。だから、我輩は、現時点でもっとも効率的な次善の策を提案したい」
そこで、レディ・Fに気遣わしげな視線を一瞬送る。
だが、すぐに真剣な面持ちへと戻すと、
「レディ・F以上のBOINの適合者を探す。さすれば、ペタバイトにも太刀打ちできよう」
渋く深い声で重々しく宣言した。
「そ、それは、レディ・F以上の、つまりF以上を探すということデスか!」
「その通りだ。最低、Gを目指す」
「G!」
「そうだ。PETAがカップ一つの差で莫大な『
それが、プロフェッサーπの非情なる決断。
「我輩が不甲斐ないばかりに、君を降ろすような結果になったこと、許してくれ」
「そんな! なんで、なんで姉さんを降ろすんだよ!」
プロフェッサーπの言葉に食い付いたのは、当のレディ・Fではなく、シスコンのセバスチャンだった。
「あんなに尽くしていたじゃないか!
言いながら、銃を抜くセバスチャン。
「しまいなさい! セバスチャン!」
シスコンをこじらせてプロフェッサーπへの憎しみをぶちまける弟を、レディ・Fは一喝する。
「それがプロフェッサーの研究のためであれば、わたくしは何も異論はございませんわ!」
「で、でも、姉さん……」
「レディ・Fと呼びなさい」
「レディ・F……」
姉の真剣な面持ちに相応の覚悟を感じたのか、セバスチャンは大人しくなる。
レディ・Fは窘めるように、そして、どこか自分にも言い聞かせるように、弟へ向けて言葉を紡ぐ。
「いい、セバスチャン、わたくしの喜びはプロフェッサーのお役に立つことですわ。今は、わたくしが『
「で、でも……」
「それに、憎む相手が違うでしょう? わたくし達の敵は、ペタバイトよ! 憎むならペタバイトを憎みなさい!」
「うん、解った。嫌なことは全部ペタバイトのせいにするよ!」
「そうよ! あんな衆人環視の中でポロリを強要して人に恥ずかしい思いをさせるようなペタバイトこそが、怒りをぶつけるべき相手よ!」
そう、TKB団の立ち向かうべき敵は、ペタバイト。そこを間違えてはならない。
「そ、そんなにも恥ずかしかったのだな……」
ついつい本音が出たのか、語気を荒らげてペタバイトへの怒りを露わにしたレディ・Fに、申し訳なさそうにプロフェッサーπが口にする。
当然、レディ・Fは食い付かずにはいない。
「勿論ですわ! 愛しいプロフェッサーのためだからこそ、耐えられたのです! でも、それも
「解った……今まで恥ずかしい想いをさせて済まなかったな」
「いいえ。その責任はプロフェッサーがいずれ取ってくれると信じて甘んじておりましたの。ですから、これを機に婚約など……」
「だから、お前はなんで我輩なんぞをそこまで溺愛するのだ!」
「愛に理由などございません。そこに貴方がいるから愛するのです! プロフェッサー! 愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています……」
「ダメだ、こいつなんとかしないと!」
最後はいつものノリでグダグダになりながらも、何とか場は収まった。
「それで、プロフェッサーπ? 新しいBOINの適合者、心当たりはあるのデスか?」
「勿論だ。我輩が先日の作戦のために用意したダミーメールアドレスの後始末をしようとしたときに見付けたのだが、削除直前に一通のメールが届いていた」
言って、デスクに備え付けのモニタに件のメールを表示させる。
「こ、これは、なんと好都合なのデスか!」
「
「ああ、プロフェッサーの研究の素晴らしさを理解する人は、やはりいるのですね!」
そのメールの差出人の名前は、
「『
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