第三話 狙われた北多学園! 大きくしたい乙女ゴコロ!
ACT.3-1 悪巧みは会議室で(その2)
「な、何なんデスか? あのペタバイトのでたらめな力は!」
株式会社ドッピア会議室。
実質的なTKB団本部にプレジデントKの悲痛な叫びが響く。
「全くだ。普通に走っている程度ならいざ知らず、暴走バスを正面から受け止めるなど正気の沙汰ではない! それを成功させてしまうとは……静真め、やってくれおるわ!」
プロフェッサーπも、苦々しげに吐き捨てる。
「申し訳ございません。またしても醜態を晒してしまいました」
「そんなことないよ! 姉さ……レディ・Fだからこそあの運転ができたんだ!」
「セバスチャンの言う通りだ。君はよくやってくれている。今回も敗北は喫したが、単純な力ではなく『持てる技術を最大限向上させる』という形で新たなBOINの力を知ることができたのは、一つの大きな成果と言える」
「いいえ! それでも、またしてもあっさりBOINを破壊されたのは、力を十分に引き出せないわたくしの責任ですわ。もう、この不始末の責任を取って、愛しい愛しいプロフェッサーに嫁入りして肉奴隷にでもなんでもしていただくしかございませんわ!」
「そ、そんな責任の取り方は要らん! そもそもそれは君の望みだから結果的に責任を取ったことにならんだろうが!」
「ああ、わたくしの浅はかな作戦など、即座に看破してみせる……素晴らしいですわ、素敵ですわ、愛しい愛しいプロフェッサー!」
「そ、それに、力が不十分なのは我輩の責任だろう。君のサイズに対する理論上の『
プロフェッサーπはまたしても求婚してくるレディ・Fに辟易としながらも、とりあえず無視してどうにか話を収める方向に持っていく。
「そ、それは……お、お気遣いありがとうございます」
その言葉に、少し微妙な表情でレディ・F。
「ああもう、ペタバイトなんているから上手くいかないんでしょう? だから撃っちゃいましょうって!」
姉の邪魔をするペタバイトの存在が面白くないセバスチャンは、また銃刀法違反な代物を懐から出して振り回す。
「その玩具はしまいナサい! それ、撃っちゃダメデスからね? 見付かるだけでアウトなんデスから、細心の注意をお願いしマスよ、本当……」
「そんなヘマはしませんって」
「ならいいんデスが……」
そう言って、プレジデントKは居住まいを正す。
「銃を持ち出すのは問題外としても、何とかしてペタバイトを倒さないことには、北多学園への嫌がらせが上手くいかないのは事実。
「忸怩たるものがあるが、ここはまだまだこんなものではない巨乳のポテンシャルを引き出すため、BOINの更なる調整を進めるよりあるまい。静真にできて我輩にできないはずもなし。まだ、性能アップの余地はあるはずだ」
プロフェッサーπは自らの研究にはとことん謙虚だった。
だが、だからこそ、常に向上心を絶やさない。
「そうデスね。焦ってまたやられるぐらいなら、一度時間をかけるのも手かもしれマセん」
プレジデントKも現実的な判断のできる人間であった。
と、そこで意外なところから声が上がる。
「僭越ながら、一つ案がございます。聞いていただいてよろしいでしょうか?」
「ほほう、レディ・F。君から意見とは珍しいデスね。言ってみたまえなのデス!」
「発想を変えて相手を弱体化させれば宜しいのでは?」
「弱体化?」
「はい。相手は、もう文倉先輩で間違いないでしょう。ならば、あのペタバイトの想像の埒外の力の根源は『小さければ小さいほど効果が高くなる』という彼がPETAと名付けた『
「まさか、ペタバイトの中の人の貧乳を巨乳に変えるとデモ?」
試すように、プレジデントKは問うと、レディ・Fは珍しくニヤリ、と口の端を上げる。
「そのまさかですわ。想像を絶する貧乳があれほどの力を生み出しているのは間違いありません。巨乳とまでいかなくとも、少しでもサイズアップすれば出力に大きな差が出るのではないでしょうか?」
最後は、プロフェッサーπへの問いかけだった。
「そうだな、BOINとは根本的に考え方が異なるが、あんな馬鹿げた性能、この世のものとも思えないほどの貧乳と、奴の技術の奇跡的な適合がなければ生まれまい。静真があの貧乳のサイズをターゲットに最適化している可能性は高いな。ならば少しのサイズアップで出力に大きな影響を与えることは、十分に期待できる」
プロフェッサーπも、その可能性に思い当たる。
「でも、どうやって大きくするんデス? そんな簡単にいくものではないデショう?」
「女とは、体を磨くことに余念がないものですわ。あのペタバイトも、BOIN
「それはそうかもしれマセんが、うちの製品を使うと簡単にバレてしまいマスからNGデスよ?」
「ええ。ですから、先日の失敗作を使えばよいのですわ。架空の会社社員を装って北多学園で試供品配布を行うという作戦はいかがでしょう?」
「とはいえ、あの学園長に試供品配布を許可させる算段はあるのデスか?」
「はい。あの学園長が株式会社ドッピアの製品の試供品を過去に取り寄せたことは調べがついていますわ」
「ああ、そんなこともありマシた。覚えてマス。買って貰えなかったのが残念ですが……」
プレジデントKも思い当たったようで、何か感慨深げに応じる。
「ですから、地元企業が営業をかける体で試供品を学園長に送り付ければ、きっと使うはず。そして効果を確認すれば、あのノリのいい性格です。試供品という名目で購買部に置くことぐらいは許可するでしょう。因みに、パンフレットには載っていませんが、あの学園の購買部がかなりフリーダムな品揃えだということは確認済みですわ」
仕事が早いレディ・Fだった。
「なるほど。確かにあの愛ちゃ……学園長ならありそうな展開デス! 中々いい作戦かも知れませんね。オッケーデーーーーーーース! レディ・F、その作戦の実行を許可しマーーーーーーース」
「はい。きっといい結果を出して見せますわ」
※
学園の裏にある日本家屋。
そこが、北多愛の住居であった。
「何かしら、これ?」
学園での業務を終えて愛が自宅に帰ると、覚えのない郵便小包が届いていた。
自分宛の荷物は大概は学園の方に届くので、自宅に届くのは珍しい。
差出人は『株式会社
住所を見るに、麓の柔浜町の企業のようだった。
いつものパンツスーツから部屋着にしている小豆色のジャージに着替えると、早速小包を開けてみる。
入っていたのは、ジェルのようなものの詰まった透明なチューブと、一通の手紙。
どうやら、あわよくば購買部で扱って貰おうという地元企業のPRらしい。
北多学園の購買部がフリーダムであることは外部に喧伝していないが、これまでにも目敏く嗅ぎ付けて営業をかけてくる地元の企業はあった。
だが、今回は特別だ。
そのチューブがなんなのか、この企業が何を扱うのかを見て、何故学園ではなく自宅に送付してきたのかも想像が付いた。
「確かに、これが学園に届いて人に見られたら、気まずいものね」
届いた試供品の製品名は『フクラーム・ジェル』。『一日一回塗れば膨らむ』となんともそのままなキャッチコピーまで付いた、要するに『豊胸ジェル』であった。
念のため、手紙に記されていたURLにアクセスすれば、きちんと企業のサイトも存在していた。見たところ、真っ当な会社に見える。聞いたことのない会社名だったが、そのサイトの沿革のページを見ると最近できたばかりの会社らしいので、そのせいなのだろう。
「こ、こういう地元企業の営業活動は、かつてこの地を護っていた神社の末裔として無碍にしちゃいけないわよね、うん」
その日の風呂上り、注意書きにしたがってジェルを使用する。
実は半年ほど前に似たような製品の試供品を使った経験があったが、そのときは効果がなくて落胆したので過度の期待はしない。
「もしも効果が出れば考えてあげなくもないわね」
だからか上から目線でそんな独り言を言いながら、自らのAにしっかりと塗りたくった。
二日後。
学園長は手紙にあった宛先へとメールにて返信した。
株式会社 胸熱 ご担当者様
お世話になっております。
北多学園学園長兼理事長の北多愛でございます。
お送り頂いた貴社製品の効果ですが、AからBとなり身をもって体験させていただきました。
まだ、正規に販売するかは決めかねておりますが、ご希望の当学園購買部での試供品配布については許可させて頂きたいと考えております。
つきましては、一度学園にお越し頂いて打ち合わせなどさせて頂きたいので、ご都合のよい日時をご連絡頂きたく思います。
以上、宜しくお願い致します。
北多学園学園長兼理事長
北多 愛 拝
追伸
学園長の立場と致しましては、正式に扱うまでに率先して更に慎重に安全性を確認する責任がございます。つきましては、一年分程度の製品を別途私宛にお送りいただけると有り難く思います。
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