針の筵

 かん、かん、という小さな音で目が覚めた。それは金槌を使う音のようだった。

 寝床の中で首を傾げる。

 音はひどく近くから聞こえる気がした。けれどこの住まいは一人暮らし用の狭いワンルームだ。他人がこの部屋に入り込んで工作などはありえないし、首だけ巡らせて薄暗い部屋を眺めても、当然ながら見慣れた物影以上のものはない。

 すると近隣の誰が、急ぎの大工でもしているのだろうか。

 続くようなら文句を言おうと思いつつ、布団を被り直してそのまま眠った。


 翌朝。

 目に入った光景に、思わず唸った。

 床一面に、鋭い釘の切っ先が煌めいている。それは床の下から部屋側へ向けて、丹念に打ち込まれたものだった。

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