常連客

 バイト先のコンビニに、おかしな客が来るようになった。

 おかしいと言っても、見た目はごく普通のおばさんだ。奇声を上げたり、奇行に走ったりという事は全くない。

 けれど毎日毎日、必ず御霊前の香典袋を買っていく。他の商品は手にも取らずに、香典袋だけを買っていく。

 果たしてそんなに不幸が続くものだろうかと、不審を覚えても仕方のないところだろう。

 そうした内心が態度に出ていたのかもしれない。

 おばさんは釣り銭を渡した直後ににたあっと笑い、


「気になる?」


 と訊いてきた。

 咄嗟に「いいえ」と返して微笑んで、そのバイトはそれきり辞めた。

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