そこにいる

 いつもの道を帰っている折、視線を感じて顔を上げた。

 すると道沿いの家の空いた窓から、品の良さげな老婆が顔を覗かせているのに気がついた。

 別段、彼女がこちらを凝視していたというわけではない。なんとなく外を眺めていたら突然目が合ってしまった。おおよそそんな雰囲気である。

 そのままぷいとそっぽを向くのもよくない気がして会釈したら、あちらもものやわらかく笑んで、目礼を返してきた。


 どうも、それで気に入られてしまったものらしい。

 以来ふと見上げれば、大抵どこか家の開いた窓から、あの老婆がこちらを見ている。

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