驚いたろう?

 俺がお前に会いたいなんて言いだしたのもそうだが、このご面相にだよ。

 いやいや。取り繕わなくたっていい。大学出たての人間が今日明日にも死にそうに弱ってて、おまけにこのハゲ頭だ。そりゃあ驚きもするさ。

 実はな、この髪、馬に抜かれたんだよ。


 はは、何を言ってるんだって顔だな。大丈夫。大丈夫。別段頭はおかしくなってない。もうじき死にはするけどな。

 だから馬の事は妄想でも何でもない現実だよ。

 あれは毎晩俺の枕元にやってきて、臼みたいなぶっとい歯で髪を引き抜いていくんだ。

 ぶちぶち。

 ぶちぶち、ぶちぶち、ぶちぶちぶちぶち。

 そうして囁くんだ。


「次は、誰にする?」

 

 なんでこんな話をしたか、もう分かったな。

 ああ、その時に浮かんだのがお前の顔だった。いやいや。自分の胸に手を当てて考えてみろよ。俺が、お前を恨まないわけがないだろう?

 俺が死んだら次はお前だ。

 それまでに精々考えておけよ。

 助かる方法をじゃない。

 次は誰にするかを、さ。

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